プールサイド・デイズのレビュー・感想・評価
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決してスルーできない、思わぬ拾いもの傑作青春コメディ
米国でヒットした青春コメディ。スティーヴ・カレルとトニ・コレットという「リトル・ミス・サンシャイン」コンビが共演しつつも、意外な事に彼らはコメディリリーフではなく、主人公の近辺で巻き起こるシリアスな家族ドラマを担う。そこに笑いは少ないが、しかし彼らがきっちり下支えするからこそ、本作は中盤に思い切って逆方向のパラダイスへ舵を切ることができるのだろう。
主人公が足を踏み入れるウォーターパークはクレイジーなキャラクターの宝庫だ。サム・ロックウェルを始めとするスタッフもおかしければ、客もやりたい放題。でもだからこそ主人公はここで彼らと心と心で交流し、自らの殻を思い切り破り捨ててみせる。いわば自分が孵化する瞬間を体感するのだ。「ファミリー・ツリー」の脚本家によるこのさりげない青春コメディのタッチがなんとも絶妙だ。知名度はなくとも、このような作品に出会えた時にこそああ映画っていいなと、心から思える。
めちゃくちゃ小規模な映画だった
映画・ぼくのなつやすみ
蓋なんかしてたまるかよ
あなどることのできないホロリ
なんでいつもいつもSam Rockwellてのは、やたらいい役ばかりなんだ?という既視感の基になっているのが、これだと思う。
優しさを、粗野/乱雑/ずぼらな態度で隠している感じが、スリービルボードでも、ジョジョラビットでも、同じなのである。
それが気に入らないってわけじゃないし、Sam Rockwellはいい役者だと思うけれど、いい奴を根こそぎもっていくわけで、おいしすぎるんじゃなかろうか、などと──どうでもいいことを思うのである。
継父に反旗をひるがえす、少年のひと夏の成長譚が、軽く見やすく描かれている。
ホロリとさせられる──という形容があるけれど、じっさいには、そんな芸当ができる映画なんて、滅多ない。
どこかでスタックするか、あさっての方向へ飛んでいくか、お涙頂戴になってしまうか、ホロリとさせようとしていることが解るだけ──か、映画を観る人なら、じつは易しいように思えるホロリとさせるが、高難易度なことは知っている。
いけてない少年の寂しさがわかりやすくて、救う神がいてくれて、悪玉にも善玉にも、いやになるクセがない。まるでなんでもないようなひと夏の話だから、かまえることなく、のんきでいられる。そもそもコメディである。そのリラックスが、Little Miss Sunshineや500 Days of Summerにも通じる、いい感じのホロリへ連れて行ってくれた。
Nat FaxonとJim Rashはコンビのライターで、はじめての監督、となっていた。このコンビはAlexander Payne監督との共著だが、名作The Descendantsも書いていた。それで、コメディでホロリを狙った作家だと知った。作り込みが、軽さや見やすさに隠れているのが巧い。
が、見ていないものの、imdbやtomatoesで新作Downhillが、けたたましくスベっていた。
サムロックウェル
爽やかな後味!
ありふれた話だからこそ
開幕早々主人公の少年ダンカンは、母親の恋人から辛辣な言葉を投げ掛けられる。
「自分に点数を点けるとしたら?」と問われ、「6点」と答えると、「お前は3点だ」と。
コミュニケーションが苦手で、内向的なダンカン。
夏休み、母親とその恋人と共に、恋人の別荘で暮らす事に。しかも、あちらの前の家族も一緒に。
最近、母親との関係はぎこちなく。
その恋人はやたらとキツく当たり、苦手。
彼の娘とその友達とは住んでる世界が別。
別荘でひと夏を過ごす。
本来ならウキウキ楽しい気分になのだが、“3点”のダンカンにとっては憂鬱でしかない。
そんな時…
出会ったのが、ウォーター遊園地で働く男、オーウェン。
いい加減で自由奔放な性格だが、何故だか不思議と惹き付けられる。
オーウェンはダンカンに何の隔てもなく接してくれるからだ。
他の人たちは、母親も、腫れ物やヘンな目で見てくる。
それがイヤなのだ。だからこちらも壁を作ってしまう。
オーウェンに心開き、ウォーター遊園地でバイトを始めるダンカン。
いきなり初日、プールサイドでヘッドスピンをしてる連中に注意するなんて難題を押し付けられたが、彼は彼なりのやり方で。
“3点”の少年の中で、何かが変わり始める…。
小品ながら、周りを固めるキャストは豪華。
オーウェン役のサム・ロックウェル、母親の恋人役のスティーヴ・カレルが特に印象残る好演。
主人公ダンカンに扮したリアム・ジェームズの繊細な体現もあってこそ。
監督は多くのアレクサンダー・ペイン作品に携わったナット・ファクソンとジム・ラッシュ。
この辛口のユーモアとほろ苦さとしみじみとした感じ。
少年の成長、出会い、初恋、家族との関係、ひと夏…。
ありふれた話ながら、いやだからこその好編。
自分は“3点”かもしれないけど、このひと夏の経験は10点満点。いや、無限大!
自分とリンク
ひと夏の体験が、少年を成長させた
14歳の少年ダンカンがひと夏の経験から成長を遂げる話、と言ってしまえばありきたりですが、この「ひと夏」の描き方がとにかく秀逸だったが故に、少年の成長具合がたまらなく愛おしいと思える作品に仕上がっていましたね。
シチュエーションは被らないけど、どこか自分に重なるような部分もあったりで、思わず感情移入させられました。
思春期のもどかしさは、万国共通なんですね、忘れ欠けていたあのもどかしさ、きっと見た方はあの頃の懐かしい想いに駆られること必須でしょう。
しかしまあダンカン少年のシチュエーションなら、それは自分の殻に閉じこもってしまう少年になるのも、ある意味必然でしょうね。
私はどちらかと言うと真逆の環境で育ったので、(離婚した)母親とその恋人とその連れ子でリゾート地にて夏休み期間4人で一緒に過ごすなんてシチュエーションを体験したことはないですが、その描き方がとても秀逸だったので、ホント居心地の悪さが手に取るように伝わってきて、もどかしい気持ちで一杯になってしまいましたよ。
またその恋人を演じたスティーブ・カレルの生理的に受け付けない嫌なヤツ臭たっぷりの空気感が抜群だった為、余計にそんな気分にさせられましたね。
更には連れ子の今時ギャル臭も後押しして、少年の居場所の無さ加減が痛いほど伝わってきました。
大人のエゴに付き合わされた少年の受ける圧迫感は、夏に親戚の家に滞在しなければいけなかった際の、あのやるせない感じに似ていて、思い出したら変な汗が出てきちゃいましたよ。
一方、その対比的に描かれた、プールの運営スタッフ(リゾート地なのに海じゃなくプールなのがまたいい)、特にサム・ロックウェルが演じたオーウェンのキャラが本当に素晴らしかった!
全て適当でチャラけたオヤジなんだけど、ちゃんとダンカンを理解してあげていたまさにかけがえのない「友達」、この出会いが少年を変えていくんですよね。
最後は本当に感動しました、ダンカンのお母さんの成長具合も、ある種見応えの一つだったと言えましょうか。
ひと夏のピュアな恋もこれぞ青春って感じで良かったですね、相手役のアナソフィア・ロブの健康的な雰囲気が、爽やかさを後押しして作品をより良い物に引き上げていたと思いました。
思春期特有の抑鬱さ、そして成長する良い青春映画
内気で退屈な人生を送っている少年が一夏限りの体験をして殻を破っていく話
ある意味少年は家庭内ですら浮いていて唯一味方になってくれそうな母親も新しい男と仲良くやるために息子を第一にしない
新しい男はデリカシーが無く、連れ子娘も辛辣派。男の周りの人間もデリカシー無しなので育った環境のせいだと思われる
こんな悪い環境に長い事居たら間違いなくグレるか無気力人間になるはず
そんな彼を助けてくれるのが隣の女の子とプール場の陽気なおっちゃん
周りに潰されそうになって周りに救われる
最後を除く母親の態度にイラつく映画だが親になってこの作品を見るとどちらに感情移入するんだろうか?
実際デリカシー無し男がそこまで悪い奴かと言われると微妙で失敗は下の方ぐらいなんですよね、それが致命的だが
他の方のレビューで母親が息子を引き上げるのを止めて母親が息子の方に降りたとありますがこの表現は的確で良いですね
子供と親が一緒に見るのにお勧めの作品
ひと夏っていうのがまたいい
10点満点中3点の少年の物語。
”10点満点中3点”
母親の彼氏に、そう評される14歳のダンカンが主人公。
そんなクソ彼氏、彼氏のビ●チ娘、鈍感な母親、近所の意地悪な女子達と過ごす、八方塞がりな14歳の鬱々とした日常が、ウォーターパークのユニークな大人達との出会いで輝いていく物語です。
派手なエピソードはありませんし、泣かせる台詞もありませんが、多感な時期ならではの、自尊心と劣等感の狭間から生まれる自虐的な言葉の数々に、思わず頷いてしまいます。
でも誰にでも、自分の人生を変えてくれる魔法みたいな出会いがある。
そんな一夏のできごとです。
サム・ロックウェル目当てで観ました。
サムはウォーターパークの破天荒なマネージャー役です。
でも対等に、説教臭くなく、ただ"お前が好きだ"感で接してくる大人達に囲まれて、ダンカンが自信を取り戻していく様子が微笑ましい。清々しい。
子供を傷付けるのはいつも身近な大人で、そして救うのも大人でなくちゃならない。
と、ちょっと身が引き締まる思いがしたりして。
原題The Way Way Backの「Way Back」
は"ずっと後"という意味。車ではいつも後部座席(2列ある更に後)に乗ってるシーンとか、ダンカンの世間からの尻込み感のメタファーだと思う。
ラスト、隣に母親が座って肩を抱くシーンが感動的(ネタバレすみません)。
ママはずっと自分の位置に、ダンカンを引き上げようとしてたんです。
そう、降りて行ってあげて!とずっと思ってた。
あと、映画「転校生」的なシーンも!
丁寧につくられた、良質な青春映画です。
14歳の尻込みし過ぎて違った意味で壁ドンな子が観るもよし、でもやっぱり大人が観るべき作品ですね。
観たあと、私の周りの子供達に「大好き」と言いたくなって困りました。
でも私に好きと言われて、彼等の女性観に何かしらの影響が出たら困るので、頭ぐりぐりで我慢です。
監督・脚本のナット・ファンクとジム・ナッシュはコメディアンで、「ファミリーツリー」も書いてるんですね。
ダンカンの初恋の相手役:アナソフィア・ロブってどこかで観たことあると思ったら、「チャーリーとチョコレート工場」に出てた、ガム噛みまくってる女の子でした。綺麗になったなぁ。これから注目していきます!
本作は新宿カリテさんのみ?で限定劇場公開されただけのようです。「(500)日のサマー」「リトル・ミス・サンシャイン」のフォックス・サーチライト製作なのに?外れないでしょう?
うーん。勿体ない。
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