サボタージュ : 特集
“アクション全開”+“予想を裏切る”、《2つのシュワ》が同時に見られる!
今度のシュワは「善か? 悪か?」
アーノルド・シュワルツェネッガーが「エンド・オブ・ウォッチ」「フューリー」の気鋭デビッド・エアー監督とのコラボレーションを熱望し、サスペンス・アクション「サボタージュ」(11月7日公開)を完成させた。徹底したリアリズムによるアクションと濃厚なサスペンスの融合作は、“アクション全開”と“予想を裏切る”というシュワルツェネッガーの2つの側面を堪能できる作品だった。
■アクション映画ファンの11月1週目は「エクスペ3」、そして2週目は「本作」!
“「シュワ主演」だけじゃない”注目要素が「サボタージュ」にはある!
アクション映画ファンにとって、またとないチャンスがやってくる。来たる11月は、最強のアクション・スター軍団総結集のシリーズ最新作「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」が第1週に公開されるかと思えば、その翌週には、すぐさま同じアーノルド・シュワルツェネッガーによる主演作「サボタージュ」が公開。まさに「アクション映画ファンのフルコース」とも言うべき、最新アクションの連続鑑賞が可能になるのだ。
さらに嬉しいのは、両作が必ずしも同じテイストではないということ。シュワルツェネッガー出演、方や傭兵軍団、方や特殊部隊というチーム・ミッションは共通しているが、「エクスペンダブルズ3」を痛快エンターテインメントとするなら、「サボタージュ」は猟奇殺人をめぐるミステリーも交えられた、見応えあるサスペンス・アクションという趣だ。“シュワルツェネッガー主演”という看板だけには頼らない、一筋縄ではいかないストーリー展開が「エクスペンダブルズ3」とはまったく違う魅力を放っている。
いくら美味しい料理でも、同じ味が続くと飽きてしまうもの。だがこの連続鑑賞コースなら、それぞれの持ち味を引き出し合うバラエティに富んだラインナップが楽しめる。アクション映画ファンを自認するなら、「エクスペンダブルズ3」に続けて「サボタージュ」を見るという“フルコース”を完成させるしかない。
アクション・スター総出演の「エクスペンダブルズ」の傭兵部隊とはひと味違うのが、本作に登場するDEA(麻薬取締局)最強の特殊部隊。シュワルツェネッガー扮する伝説的麻薬捜査官は単なるアクション・ヒーローではなく、隊員たちから父のように慕われる不屈のリーダーだ。そして8人の部下を演じるのは、「アバター」のサム・ワーシントン、「プリズナーズ」のテレンス・ハワード、「LOST」のジョシュ・ホロウェイ、「ワールド・ウォー Z」で主人公の妻を演じたミレイユ・イーノスらという個性派&実力派俳優たち。リアリティを追求したアクション・オールスターなのだ。
「エクスペ3」のパトリック・ヒューズ監督は、ハリウッド進出第1作目にしてこの大作をつかんだラッキー・ボーイだが、新たなる才能という点では「サボタージュ」の方が上を行く。本作でメガホンをとったデビッド・エアーは、「U-571」「ワイルド・スピード」「トレーニング デイ」といった傑作サスペンス・アクションの脚本を手掛けてきた人物。前監督作「エンド・オブ・ウォッチ」では、主観視点(POV)を用いた迫真の警察ドラマを描き、シュワルツェネッガーに本作の出演を熱望させたほどだ。さらにブラッド・ピット主演の戦車アクション「フューリー」も公開待機中と、映画ファンなら絶対に目が離せない才能なのだ。
麻薬カルテルとの壮絶な“麻薬戦争”を描くアクション作でありながら、歴戦のDEA特殊部隊員が連続猟奇殺人の標的となるという異色サスペンスの融合が、本作をユニークしている特徴だ。部隊が麻薬組織のアジトに突入して押収した1000万ドルがこつ然と消え、犯行はチーム内部の者によるのではないかとの嫌疑が浮上するなかで、部隊のメンバーがひとりまたひとりと無残な姿で殺されていく。殺人は組織の復しゅうなのか、それともチームの誰かが犯人なのか。全員が標的であり、同時に容疑者でもあるという疑心暗鬼な状況に観客も包まれていくスリリングな展開が出色だ。
迫力のカー・アクションと銃撃戦、そして爆破シーンと、「エクスペ」風味のダイナミックなシーンに加えて、本作のアクションはより迫真のリアリティが追求されている。メンバーそれぞれの戦闘力が高い「エクスペ」は、個人の見せ場が多い印象だが、本作ではチーム戦の妙が堪能できる。複数が一組になり、索敵、安全確認、点呼を繰り返してアジトの中を進んでいく。エアー監督が徹底的にこだわったリアルな描写が、アクション・ファン、ミリタリー・ファンの心をくすぐるのは間違いない。
■《俺たちの“アクション全開シュワ”》+《“あなたの予想を裏切るシュワ”》
2つのシュワを同時に見られるなんて──どうだ、見たくならないか?
“完全無敵のアクション・ヒーロー”という、我々の知っているシュワルツェネッガー像とともに、その先入観を覆される“ダーク”なシュワルツェネッガーが登場するのが、本作の大きな魅力だ。我々が燃えたシュワ、そして誰も見たことがなかったシュワという、2つの側面が同時に登場する「サボタージュ」は、やはり見逃せない1本だ。
圧倒的な存在感を放ち、群がる敵は強烈なパワーで一掃する──そんな“俺たちのシュワ”が本当に帰ってきた。カリフォルニア州知事の任期を終え、「エクスペンダブルズ」「ラストスタンド」「大脱出」でハリウッドへの復帰を果たしたシュワルツェネッガーだが、まだ振り切れていないのか、どこか物足りなさを感じていたファンも多かったはずだ。だが本作では、かつての激闘をほうふつとさせる、待ちに待っていた“アクション全開のシュワ”が登場する。中盤までは、チームを統率するリーダー役として貫録たっぷりの姿を見せつけるが、事件の核心が明らかになっていく終盤では、疾走するカー・アクションに身を投じ、アサルトライフルを撃ちまくって死闘を繰り広げる。まさに完全復活、「サボタージュ」こそが真の復帰作だと感じるはずだ。
全開アクションのシュワルツェネッガーを楽しめる一方で、見る者を惑わせる“予想を裏切るシュワ”も登場する。過去に大きなトラウマを持ち、善と悪の両面を持つミステリアスな人物という設定は、従来のシュワルツェネッガーのイメージを大きく覆すもの。これまでに演じたことがなかったキャラクターに扮したことが、他の主演作とは一線を画している大きなポイントだ。犯罪を憎み、チームの絆を重んじる“理想の上司”でありながらも、目的を遂行するためには法を逸脱することも厭わない姿は、非常に生々しく現実味を帯びている。「押収金の消失、連続殺人の黒幕は彼かも知れない」という疑惑を見る者に感じさせつつ進むストーリーは、まぎれもない新境地。善なのか、それとも悪なのか。それは観客が自分の目で確かめるほかない。