「殺戮の意味を問う」虐殺器官 ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
殺戮の意味を問う
「殺戮」は「平和」への必須事項なのだろうか。
9.11以降、自国のセキュリティを強化するために、自由を無くしたアメリカ。
平和を手に入れるために、確立した世界ははたして正しいと言えるのか…。
アメリカの平和が保たれる中、後進諸国での戦争が激化していく世界。
戦争を裏で操っている黒幕ジョンポールは、「虐殺文法」を使って、人々の言語から殺戮の力を見出そうとしていた。
全てはアメリカを守るため。
後進国で「虐殺文法」を活用して内戦を引き起こせば、アメリカに憎悪が向かないだろうと考えていたジョンポール。
しかし、犠牲者を出すことでしか平和を作り出せない世の中は、正しいと言えるのか…!
先進国は全てをうやむやにし、今ある安定の生活を維持しようとしているだけだと悟ったジョンポールは、降伏し「虐殺文法」の危険を訴えようとする…。
ハリボテの「平和」。
そのに存在するのは、身勝手な大人達が作り出した偽物の世界のみが広がっている。
自国が幸せであれば、他国どんなに犠牲となっても許されてしまうのか。
虐殺を繰り返すことで手に入れる平和には、悲しみと苦しみしか見えてこない…。
難民受け入れを拒否する、現在のトランプ政権を風刺したような作品に鳥肌が立つ。
映画が延期されたことは、偶然だったのか、必然だったのか。
それを加味するにしても、この作品は今この時期にこそ、公開されるべきものであると感じる。
伊藤計劃への追悼作品としてふさわしい、最終作だった。
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