劇場公開日 2014年6月28日

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「インド人男性の理想の女性像を表現?」マダム・イン・ニューヨーク ブログ「地政学への知性」さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5インド人男性の理想の女性像を表現?

2025年1月8日
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鑑賞方法:VOD

「良妻賢母で美しすぎる主人公」
家族の幸せを最優先する女性主人公シャシ。良妻賢母であり、夫に逆らうこともない。さらに、その美しさは群を抜いており、サリーをまとった姿は一層際立つ。男性観客は瞬く間にシャシに心を奪われるだろう。ただし、英語が苦手という欠点を抱えている。しかし、この欠点がなければ女性観客の嫉妬を招くだろう。そんなシャシが一人でニューヨークに行き、その苦手を克服するという設定は、やや強引さを感じさせる。姉の結婚準備を手伝うためという理由だが、家庭がある身で4週間も前から到着する必要があるとは思えない。

「サラダボウルの英語学校」
フランス人男性がシャシに一目惚れし、意欲はあるが疲れて寝てしまうヒスパニック女性、無口なアフリカ人のほか、中国人女性、そしておしゃべり好きでムードメーカーのパキスタン人男性が集う英語学校。さらに、担当教師はゲイというキャラクター設定も加わる。多様な背景を持つ彼らが同じ目標に向かい、次第に一体感を形成していく姿に観客は自然と共感し、応援したくなる。インドと対立するパキスタン人をしっかり含めたキャスティングには、平和を願う監督の思いが込められているように見える。

「お互いを尊重し合うことが平和の鍵」
家族、社会、国家間といったあらゆる関係において、違いを理解し、尊重し合うことが平和の鍵となる。主人公シャシはそれを体現する存在だ。しかし、英語習得を巡る展開は、笑えるほど無理矢理潰そうとし、はたまた大胆にその機会を創出する。インド映画の展開に馴染みがなくとも、大ヒット作『RRR』の強引さとどこか通じるものを感じる。英語を話せるようになる以前に、他者を認め尊重しようとする姿勢を持つ主人公は、すでに国際的な交流に必要な資質を備えている。彼女のような美しさと温かみを持つインド人女性が世界中を席巻すればたちまち世界中がインドの味方になってしまいそうだ。

「世界に存在感を高めるインド人にとっての新しい理想の女性像」
女性の人権問題が指摘されることの多いインドにおいて、若い人妻が一人で男性もいる英会話学校に通うという設定は、一見何気ないようで実は非常に進歩的な描写だ。保守的な価値観を守りつつ、これくらいの冒険を許容することが、女性の人権解放の第一歩になるとインド人男性に提案しているように映る。しかし、この理想像が依然として男性にとって都合の良いものであることは否めない。この矛盾に気づくのは筆者だけではないだろう。

ブログ「地政学への知性」