妻への家路のレビュー・感想・評価
全34件中、1~20件目を表示
空白のある記憶!? 切り取られた写真の1人の思いとは?
1970年代の中国。
駅の雑踏、ひしめき合う人々
列車が通り抜けるざわめきのなか、
必死で夫に呼びかけて叫ぶ女性の姿。
振り向いた男性。
引き裂かれるように収容所に連れて行かれる
夫。
過ぎ去る年月のなかで忘れゆく夫の記憶。
何十通もの、折り重なる手紙に
夫から妻に対する一生添い遂げたい
愛情が込められていました。
自分を忘れた悲しい出来事を信じたくない
夫。
アルバムを見返す娘さんに切ない感情が
ありました。
家族でありながら、自分が夫だと妻に
言えないもどかしい気持ちが表現されていました。
記憶障害が治らないまま、ストーリーは
終わってしまったけど、家族で一緒に
いるだけで幸せだと思いたい、、
そんな古い時代の家族愛を感じる作品でした。
毎月5日
文化大革命に翻弄された家族の物語。心が壊れた妻に寄り添う夫の姿が涙を誘う。娘も夫も自分のせいと言うが、誰のせいでもなく、国家のせいだ。冷静に過去を振り返り、声高に訴えることもせず、淡々と物語ることで、より哀しさが伝わってくる。コン・リーの演技が素晴らしい。加えて、光の使い方が上品で、映像が美しい。
BS松竹東急の放送を録画で鑑賞。
【中国の文化大革命により、人生を狂わされた夫婦の余りにも哀しく切ない作品。だが、究極の確固たる夫婦愛の姿を描く作品でもある。】
■1977年、文化大革命が終結。
解放された右翼分子として囚われていた夫、陸焉識(ルー・イエンシー)(チェン・ダオミン)は20年ぶりに帰宅するが、待ちすぎた妻、馮婉玉(フォン・ワンイー)(コン・リー)は心労のあまり夫の記憶を失っていた・・。
夫は他人として向かいの家に住み、娘丹丹(ダンダン)(チャン・ホエウェン)の助けを借りながら、優しく妻に寄り添って自分を思い出してもらおうと奮闘するが…。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・妻を持つ男にとっては、切なすぎる物語である。
20年もの間、政治犯として家族と会えなかった陸焉識(ルー・イエンシー)が、文化大革命終結により、愛する妻の元に帰るも、妻は心因性記憶喪失のために自分の事が分からなかった・・。
ー この設定は、実に切ない。
だが、夫、陸焉識(ルー・イエンシー)を演じたチェン・ダオミンは、哀しみを抑えつつ、妻が自分の事を思い出してくれるために、様々な事をする。
それは、ピアノ好きの自分のためにピアノ調律を頼んだ妻の行為を見て、ピアノ調律師として、妻の前でピアノを弾いたり・・。
獄中で書いた手紙を、段ボール箱一杯に詰めて、妻に届け一つ一つ読んであげたり・・。
そして、その手紙には妻と娘を想う気持ちが詰まっている。-
■切なすぎるシーン
・妻、馮婉玉(フォン・ワンイー)が、政治犯が戻って来る駅の階段の下で、陸焉識と書いたプラカードを持って、最後の一人が階段を下りるまで待っているシーン。
彼女の脇には、陸焉識が立っているのに・・。
そして、妻は陸焉識が階段を下りてきても気が付かない・・。
・ピアノ調律師として、妻の前で思い出の曲を弾く、夫、陸焉識。妻も思い出しかけるが、最後に夫を、彼がいない間、面倒を見ていた“方”と言う男と混同し、拒絶するシーン。
・そして、陸焉識が、妻をお玉で叩いていたという“方”にお玉を持って会いに行くシーン。
“方”も又、文化大革命時の罪の為か、家には居ない・・。
肩を落として去る陸焉識の後ろ姿。
・数年が過ぎ、すっかり年老いた夫、陸焉識と妻、馮婉玉が、雪が降る中、誰も降りてこない駅の階段の下で、陸焉識を待つシーン・・。
<今作は、文化大革命により人生を狂わされた夫婦の哀切極まりない物語である。だが、この作品には確固たる夫婦愛が描かれている。
夫の記憶を失っても、いつかは帰って来ると信じる妻の姿。妻の傍に帰って来ていながらも、妻に認知されず、必死に妻の記憶を取り戻そうとする夫の姿。
今作は究極の夫婦愛を描いた作品である。>
■独裁国家で映画監督として奮闘している映画監督は多数いる。今作までのチャン・イーモウ監督や、イランのジャファール・パナヒ監督である。
チャン・イーモウ監督は今作後、マット・デイモン主演の「グレート・ウォール」や、「SHADOW 影武者」などを発表し、国際的に活躍をしている。
私は両作とも劇場で鑑賞し、満足した。
何が言いたいかというと、チャン・イーモウ監督の国政を見ながらの、映画製作姿勢を巧みに変える強かさに、驚くのである。
近年、中国の体制に迎合しているという批判は良く聞くが、私はそれを否定しない。
凄い映画監督であると、素直に思うのからである。
文化大革命は終わらない
文化大革命で、右派とされ逮捕された夫、文革が収束し、帰宅するがその長い間に妻は心因性の記憶障害となり、毎日待ち続ける夫を認識できない。
文化大革命はまさ、小説より奇なり、の、最たるもので、本当にありえないようなことがあのように広大な土地のあちこちで非常に長きに渡り起きた、そのことは知れば知るほど驚きしかない。文革収束後も、おそらく今も、このような悲劇、惨状幾多と思われる。終始物静かな展開で、コンリーが美しく凛としながらも次第に老けていく姿に、心から文革に人生を掻き乱された人々の思いを深くかんじる。夫が妻の記憶をよりもどしたい一心で自ら調律し演奏する自宅の古いピアノの音色も、か細口小さな音でとてももの悲しい。文革で逮捕収容された人々を迫害したりその時権力を振るうたものもまた終息後に取り調べを受け、右派も左派もその時の政治に翻弄されいつでもひっくり返される。コンリーが演じる妻は変わらず、バレエで主役を踊りたい娘に、当時も、今も、兵士の役もよいよ、と静かにさとす。
溢れる思い怒り悲しみをこのように静謐に表現するコンリー、チャンイーモウ渾身の作品。しかも、Unext見放題に含まれておりたくさんの方がみることができる、ということは素晴らしいこと。
2021年未だに終わらない文革の悲劇と、今もたいして変わらないまたはよりひどい世界に我々も生きていることを実感する。
余りに切ないラストは泣くよりも先に胸にズシーンと来ます。涙は後から湧いてきます。
①斬新な脚本だ。5日に帰ってくる筈の夫を待ち続ける妻。帰ってきた自分を認識してくれず親切な隣人としてしか接してくれない妻を、それでも見守り続ける夫。互いを想い合っている事は確かなのに、すぐ近くにいるのに、二人は決して夫婦に戻れない。②アメリカ映画や日本映画では最後に妻の記憶が戻ってハッピーエンドにするかも知れない。しかし、この映画の場合、そのようなハッピーエンドにしてしまうと中国国民をさんざん苦しめた文化大革命というものを時効にしてしまう。そうしてはならないという監督以下中国の映画人の想いをラストシーンに見る気がする。③コン・リーはさすが中国を代表する女優であることを再認識させる名演。
ずっと傍に
1970年代の中国。文化大革命が終結し、反分子だった夫は解放され、妻の待つ家へ急ぐ。
が、妻は夫を待ち続けた心労から記憶障害となり、夫の顔を覚えておらず…。
見てたらマーティン・ランドー&エレン・バースティンの大人のラブストーリー『やさしい嘘と贈り物』をうっすら思い出し、あちらは心温まる感動的な話だったが、こちらは何と切ない話…。
別に妻は夫の事を忘れた訳ではない。覚えていないだけ。なので、夫の名を書いたプラカードを持って船場で帰りを待つ。
それを時に傍らで、時に陰からひっそり見守る夫。この時の夫の心情足るや、同情なんて言葉で軽々しく言えやしない。
ここに居るのに、妻は自分の事を認識出来ない。
このもどかしさ、哀しさ、切なさ…。
無論夫は、自分の事を思い出して貰おうとあの手この手奮闘する。
向かいの家に住んで、親切なご近所さんとなって接する。
手紙で帰ってくる日を伝えたり、貯まった手紙を代読したり。
中でも、ピアノを弾くシーンには胸打った。やっと、思い出した…かと思いきや…。
夫婦には娘が居る。
当初娘は父を毛嫌いしていた。ずっと一緒に居た事も無く、父は居ないも同然だった。
そんな父を待ち続ける母も理解出来なかった。
ある日を境に母とはぎくしゃくした関係に。
父が戻ってきて、最初は抵抗あったものの、父のひたむきな姿に心を開いていく。
母に対して本音。
そんな娘を、父は優しく諭す。
この娘の存在も好スパイスになっていた。
コン・リーはさすがの名演だが、夫役のチェン・ダオミンが忘れ難い。哀愁と優しさ滲ませる絶品の佇まい。
娘役チャン・ホエウェンも。
『HERO』『LOVERS』など武侠アクションで人気のチャン・イーモウだが、やはり『あの子を探して』『初恋のきた道』などしみじみさせるヒューマン・ドラマにこそ手腕を振るう。
約半世紀前の異国の政治的背景など分からない。
でも、それをある夫婦の物語として訴える。
悲劇的な現実によって翻弄され、引き裂かれ、切なく哀しい。
が、それと同時に、温もりも感じた。
例え覚えていなくとも、もう二度と離れず、ずっと寄り添い、見守り続けるーーー。
眠かった
中国のリヴィングレジェンド:チャンイーモウ監督作品。チャンイーモウといえば、「初恋のきた道」。当時方々の(確かウッチャンナンチャンの)絶賛を浴びていたので観てみたが、ピンと来なかった覚えがある。そして今回、何気なくお勧めされたこちらは偶々チャンイーモウだった。お返しに「ホステル」を貸してあげたらブーイングでした、そらそーよ(岡田監督風)。
実際この作品もピンと来ませんでした。
しかし「初恋の~」とも共通してると感じたのは、登場人物は少なく、その少ない人物を掘り下げて演出してる、しかも丁寧に、という事でした。この話の中で特にそう感じたのは娘のタンタンでした。演技として素晴らしいと思います。
ラストは切なく献身的でしたが、ここまで奥さんが旦那を忘れているとなると、ほぼ認知症なのではないかとも思いましたが。記憶喪失の方が治る希望あるからいいのか。
切なすぎる
記憶障害で夫を他人だと思い込む妻と、そんな妻に寄り添い続ける夫の愛情を描いた映画。
収容所から解放された夫は妻と再会。
だけど夫を待ちわびるあまりに心労から記憶障害となっていた妻は夫だと認識することができない。
夫はいつか妻の記憶が戻ることを信じて他人として向かいの家に住み始める…
ホントに切なすぎました。
夫の妻への愛がスゴすぎです
「妻への家路」を観て・・
配偶者が認知症で苦しむドラマは多いが、文化大革命が絡んだのは無いと思う。文革は実質的には中国共産党の権力争いで、知識人の多くが粛清された。主人公は処刑こそされなかったが、長いこと服役して文革が終わって釈放された。そして帰宅すると妻は若年性認知症になっていた。ひとり娘はかつてバレエ団だったが、今は紡績工場の寮にいる。娘の丹丹が親思いで可愛くてとても良い。踊りも上手だ。認知症は進行する病気でハッピーエンドは望めないが、主人公が刑務所で書いた手紙の量が服役の期間を物語る・・中国映画も言論統制の枠の中で、民衆の生活感が出ていて独特な感じだ。泣ける映画。2014年の作品。
病気なんだ、分かってあげなさい
映画「妻への家路」(チャン・イーモウ監督)から。
久しぶりに、切ない・・という感情が込み上げてきた。
「中国映画」だからという、特別な偏見ではなく、
「ハッピーエンドではない」結末に対して、
でも、これが現実・・というリアル感が私の胸を締め付けた。
娯楽要素の強い映画なら、最後には、正義は必ず勝つし、
辛い体験をしても、最後にはホッとさせられる結末が待っている。
しかし、この作品は、そんな私の甘い望みを打ち砕くように、
記憶障害で夫を他人だと思い込む妻は、最後まで治らず、
いつか妻の記憶が戻ることを信じて寄り添い続ける夫の愛情も、
最後の最後まで、変わらない。
この物語の起承転結が、私に「切ない」という言葉を吐かせた。
そんな母親の様子に、イライラを募らせている娘に対して、
父親はこう諭す。「病気なんだ、分かってあげなさい」
自分が、愛する妻に「夫と認識されていない」にも関わらず、
いつまでも、そばにいてあげたいと思う男心が、本当に切ない。
今まで、映画は「ハッピーエンド大好き」と言い放ってきたが、
たまには「リアル感」のある、こういった作品もいいな、と思う。
ハッピーエンドじゃないんだけど、心が温まるのは、
どんな環境になって、人が人としての尊厳を守っているから、
そう思わずにはいられない作品だった。
裏切られるラスト
こういう手の話って、普通最後は記憶を取り戻してめでたしめでたし、なんだけど、この映画は違った。
記憶をなくして夫のことがわからなくった妻は、夫をただの親切な人と思い込み、いつまでも夫の帰りを待ち続ける…という切ないストーリー。
娘とのわだかまりもあり、家族が一つになるまでを描いた作品。
久しぶりに会えたのに、会えない。
夫婦は「再会」できないまま歳をとり、ラストシーンでは年老いた妻が同じく年老いた夫の横で、自分の記憶の中の「夫」を待っている。
この構図、何なんだろう。
きっとあのシーンの後も、二人は「今日も帰ってこなかったね」と言いながら自宅に帰り、妻は夫の、夫は「妻の中の自分」の帰りを待つ…
まさに、妻への家路 だ。
全34件中、1~20件目を表示