「声に出して読んでみよう」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
声に出して読んでみよう
第二次大戦時に絶対解読不可能と言われたドイツ軍の暗号エニグマに挑む数学者のお話。
主演は声に出して読みたい俳優No.1のベネディクト・カンバーバッチ、もう一回言っとこ。
ベネディクト・カンバーバッチ主演
1951年のある日、天才数学者のアラン・チューリングの部屋に空き巣が入り、現場を確認に来た刑事ロバートは、アランの部屋を捜索する。雑然とした部屋の奥には大きな機械、そしてそこに落とした青酸カリの粉末を掃除するアランがいた。
同行した警官から盗品は無しとの報告を受けるが、ロバートはアランが何か重大な隠し事をしているのではないかと疑う。
時間は遡って1939年の第二次大戦勃発の頃、ドイツ軍の侵攻を受け始めたイギリスはドイツ軍の動きを把握するため、彼らが駆使する暗号を読み解き敵の布陣を把握しようとするも、ドイツ軍の使用する暗号はエニグマ暗号と呼ばれる抜群の堅牢性を誇る暗号で、その組み合わせは膨大、しかも毎日深夜12時にリセットされるため、翌日の暗号の組み合わせは一から解読しなければならない。
そんな難攻不落のエニグマ暗号を解読させるため、英国海軍はチェスの名手でもあるヒューを始めとした暗号解読のプロを招集し、デニストン中佐指揮のもと解読作業を行うことになる。アランも、この解読チームの一員となるが尊大な態度やコミュニケーションスキルの拙さからチームから孤立し、一人でクリストファーと名付けた機械による解読に挑んでいく。
この話は実際にドイツ軍が使用していた解読不能と呼ばれていたエニグマ暗号を独自の方法で解読したアラン。チューリングの半自伝で、Wikiの記載とか見る限りだと大筋は史実に忠実な流れになっているよう。アラン氏の人に知られてはいけない秘密もその顛末もほぼ史実通り。アランは物語よりも劇的で数奇な運命をたどった人物なのだと思う。
物語の本筋を引っ張る暗号解読については、他のチームメンバーが一般的な出てきた暗号の共通項を探して、当て嵌めてという手順で進めようとするが、アランは全く違ったアプローチで解読に挑んでいく。それは、我々が普段当たり前のように使っているコンピューターの始祖の始祖のような機械を生み出すアプローチ。確かに毎日のように解読しようとしたものの組み合わせが合わってしまう暗号に、今までのアプローチは無駄なのだと最初から気づいているあたりは、天才の天才たる所以なのだろう。
でも、そのシステムを完成させるためには、結局一人では太刀打ちできないことを思い知らされ、また周囲のメンバーも自分たちのアプローチではなくアランのアプローチしか道がない事を悟り、一天才の閃きにチームワークを加えていく胸熱展開になっていく。
物語の途中で、大いなる才能を持ちながら女性だからという理由で解読メンバーとしての活動ができない、キーパーソンのジョーン・クラークが現れるが、彼女も史実にちゃんと残っている解読メンバーの一人。
彼女は実際にアランの良き理解者であったようなので、チーム融和のカギは実際に彼女だったのかもしれない。
そんな紆余曲折を経て、歴史は英国を始めとする連合国軍側に傾いていくけど、歴史上彼らの偉業が知らされることになるのは、それから遥か50年後の話。こういったトップシークレットのお話の裏には、何人もの人が裏切られたり抹殺されたりというようなことがあったのだろうと想像できる。
ちなみに、俳優さんはもう偏執的に拘ってんのかと思うぐらい英国出身俳優さん。ベネディクトさんはもちろん、キーラ・ナイトレイ、ヒュー役のマシュー・グッド、外道中佐役のチャールズ・ダンス、スパイと言えばのマーク・ストロング、ちなみに刑事さんも。
どことなく英国の匂いを漂わせる愁いのある佇まいは、そこの拘りが醸し出すのかな。