「驚くべき映画だ!」イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
驚くべき映画だ!
BS260で視聴。
大戦中に、天才的な数学者がドイツの暗号、エニグマを解いて英国を救ったことは、どこかで聞いたような気がする。それにしても、こんな背景があったとは。
数学者アラン・チューリングには、数学、計算機科学において比類なき業績があり「AIの父」とも呼ばれている。ただ、この映画を見る限り、少なくとも「エニグマの解読」に関しては、彼の頭脳と社会を結んでくれたジョーン・クラークという女性がいたことがポイントなのだろう。彼女を演じたキーラ・ナイトレイほど、実際の人物は魅力的ではなかったのかもしれないが。彼女は、コミュニケーションを取ることが難しかったチューリングと同僚たちの間を円滑にし、チームを作り上げることに手を貸したのだと思う。しかも、解読のための条件緩和につながった、傍受係の女性たちの会話を聞く機会を導いたのも、ジョーンのように思われた。
特に気になったのは、やはり同性愛のこと、まさかイングランドでは、1967年まで、同性愛に罰則条項があったとは。チューリングの場合、いくら名誉回復がなされたと言っても、彼が二度と戻ってくるわけではない。それで思い出されるのは、日本のジャニーズの育ての親の告発が、結局英国のBBCによってなされたこと。日本は不思議な国で、確かに同性婚が認められるまでは遥かな道筋だが、同性愛に関しては、これだけ寛容な国も少ないのではないか。英国は、罰則の時代を経て、同性婚を認めるまで様々な経緯があった。しかし、日本は寛容な国ゆえに、同性愛者による弊害について何もしてこなかったと告発しているのだろう。
もう一つは、スペインやイタリーなどのカトリックの国々は、プロテスタントの保守派までは行かないものの、同性愛には厳しいと言われてきた。ただ、もう一つのカトリック主要国であるフランスは、革命を経験していることもあり、せいぜい公衆の面前での同性愛の発露を禁じているくらいだったと思う。こうしたことが、フランスが男女を含む個人のスキャンダルに対して比較的寛容であることと繋がっているのかもしれないと思ったが、的外れだろうか。
いずれにしても、この映画を特集に取り上げ、放映してくれたBS260には、感謝したい。