ビッグ・アイズのレビュー・感想・評価
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「作品」としてはそこそこ
とても刺激的、衝撃的な内容の実話でした。
絵を描く才能を持った女と、セールスの才能を持った男、二人が組めば最高のコンビになれるはずだったのに、その組んだ手は今にも離れそう・・・。
男の方は本当に浅ましく、自分への自信が溢れ出て周りが見えなくなってしまい、後半はただただ嫌ーな男。それに振り回される女、娘が可哀想。
けれど守るもののため、それに耐え続け、そして諦めをも感じ始める女の気持ちもわかるし、男も自分が持っていなかったものへの執着が人よりも強すぎて自分を見失ってしまったのだと考えると、なんとも虚しい。
今回は最近のティムバートン作品とは少し違った感じであることにも注目されていて、私もそれを期待して見に行きました。
これまでは美術は最高だけど、映画として、ストーリーや展開がちょっと・・・。というものが多かったからです。
正直「映画」としては普通だと思います。実話がすべてというか、他の人がお金をかけてもこのような感じになったのでは?と思います。展開は後半盛り上がってほしいところで失速・・・そのまま畳みかけてほしいところでちょっとしつこい足踏み・・・というような印象があり、観終わったあとに悪い気はしませんが、すごい「実話」だったなというだけで、もう少し「映画」としての魅せ方があったのではと思います。
主演二人の演技が素晴らしい
演出は控えめだけど、主演2人の演技が圧倒的!
バートンらしさをほぼ隠した作品
ウォルターは今で言うモラハラ夫ですね。
妻を恐怖で支配しているわけです。
教会の牧師も妻は夫に従えという時代だったのだとすれば、マーガレットが自分を抑えてしまったのも頷けます。
評論家に酷評されて、家で暴れて、マーガレットとジェーンにマッチを投げるあたりから、本当にムカムカしてもう…
よく逃げたよ。
ウォルターの芝居がかった言動の全てがイライラしますけど、全体的にはよかったです。
ティムバートンらしい映像、演出ってゆうのは今回は敢えて抑えたのでしょうね。ヘレナボナムカーターのコスプレがあるバートン映画が好きな方はちょっぴり寂しいかもです。私もその口です。
マーガレットが良心の呵責やらで見てしまう、リアルビックアイズな幻想はなかなか素敵でした。あのビッグアイズメイクはどうなってるの?
裁判のシーンでウォルターが、新聞社からあっさり見捨てられて、被告人と弁護人を一人二役して判事に怒られ、挙句二人にそれぞれ絵を描かせて判決を下すくだりがクライマックスなわけですが、判事グッジョブですね。
カトリックはマーガレットを突き放し、キリスト教から派生した新興宗教がマーガレットに勇気を与えたってゆう流れによく効いた皮肉を感じました。
美大生が観るといいんじゃないかな。
実在するアーティストのマーガレット・キーンに興味があり観ました。
幸か不幸か、ティム・バートン色は薄くストーリーに集中出来ました。
ウォーホルが活躍していた時代にこんな作家が居たなんて!
今でこそPOPアートの代名詞のウォーホル、彼のエディション物のシルクスクリーンにも多少の影響を与えたのかと思うと、興味深い。
そしてこの時代からアートのシステムがまるで変わらない事に落胆しました。
才能・政治・チャンス、アーティストっていつの時代もピュアに作品を創り出すだけではダメなんですね。
観方によれば芸大で勉強するより、この1本でアートビジネスがよく理解出来ますw
作品自体は実在する2人の人生を描いたにしてはティム・バートンらしくおとぎ話の様で薄っぺらい感じがしました。
ティム・バートンのインパクトのあるビジュアルを求める人には向かない作品かと思います。
一人の人間が呑み込まれ支配される過程が描かれる作品。
良かった。
60年代、実際に起きたゴーストペインター事件を基に。
芸術家の妻が、詐欺師の夫に呑み込まれ支配される過程を丁寧に描いています。
入口は「便宜上」という軽い感じで。
その後は回数と期間をかけて既成事実に。
表の評価を確立すると同時に、ゴースト側を社会から隔離し裏に追いやってしまう。
関係性が崩れそうになると、共犯関係を強調し社会の批判/弾圧をチラつかせ必要以上に恐怖を煽る。
一人の人間が呑み込まれ支配される過程が実感出来ました。
特筆すべきはウォルター・キーンを演じるクリストフ・ヴァルツ。
彼のニヤケ顔、スイッチが入った際の話術/身振り手振り。
弱者に見せる本当の顔。
根っからの詐欺師を体現しており、話全体に納得感、そしてコメディ要素を付加。
醸し出す小者感も含めて思わず笑う場面が多々ありました。
特に終盤、裁判所で見せる一連の茶番。
権力者、その場の実権を握る人物への媚びた顔。
観衆を呑み込み自身側に取り込む話術。
…からの窮地に陥った際の最終手段。
上映時間106分溜まりに溜まった気持ちが一気に解放される素晴らしい瞬間でした。
一人の人間が呑み込まれ支配される過程が描かれる本作。
作中の芸術品の扱いも感慨深く。
通して描かれるのは芸術の不確かさ。
誰もが確かなモノを持たない中で跋扈する権威主義と物語性。
専門家が評価したから、又は感動的な逸話があるから。
作品自体ではなく、作品に付随する評価や物語に惹かれ手に取る姿は印象的でした。
自ずと昨年の佐村河内事件を連想させる題材ですが。
鑑賞後「ゴースト側も詐欺の片棒を担いでいたんでしょ」とは簡単に言え難くなる。
見え難い側面を映し出した作品だと思います。
オススメです。
ティム・バートンの着眼
画像が終わりかけていたとき、僕は腑に落ちない感じが残った。
エイミー・アダムスとフルストフ・ワルツという当代きっての役者が挑んだ映画にしてはなにか割り切れない思いがあったのだ。
それは「ビッグ・アイズ」という大きな目をしたキャラクターがなぜ生まれたのか、という視点に、つまり、アートとしてどのようなことから、誕生したのかという点にほとんど触れていないことによっていると思う。そう、現象面だけを表しているような感じだったのだ。
でも、最後のタイトルバックが出ているときの音楽に目を見開かれた。いま、注目されている女性シンガーソングライター、ラナデルレイの歌が流れたときのことである。後で知るのだが「ビッグ・アイズ」と「アイ・フライ」という2曲の歌。
彼女の歌はアメリカの60年代、70年代の音と歌詞を現代風にアレンジしている。ちょっと聴いたら、耳に残る(60年、70年代の音楽を知らなくても)アメリカの全盛時のような、でもなにか満足できない時代を捉えている。それが現代の若者たちの耳にも共感を呼んでいるという。かくいう僕もその虚構の世界に片足はまっているのだが。
ティム・バートンは言っている「アートとはインパクトである」と。
ここからはかなり強引な僕の解釈だが、以下のような流れだったのではないか?
①ラナデルレイの歌を聴いた(鮮烈な印象を残す)
②この歌を生かした題材を探す(ビッグ・アイズ事件を知る)
③そのストーリーを知るそして作る。
ティム・バートンの作風はシュールというか、現実離れしたものが多いのが、この作品はそんなイメージはない。
アメリカにこんなことがあったのだという出来事をある意味淡々と描いたといえるだろう。ランデルレイの音楽に乗せることが大きな意味があったのだと思う。
普通に
絵とは何か
単なる抑圧された女性の開放を謳った話というだけではなく、多くの気づきを促している話で、面白かった。
夫、キーンは名誉欲と金銭欲に支配された邪悪な人間というだけでなく、憎めないところがある。彼は彼のようにしか生きられないのだろうな、という憐憫もあるけど、結局彼は決して自分がなれないであろう、芸術家というものに強くあこがれていた。
妻、マーガレットは純粋で真面目な芸術家というだけでなく、神秘思想や新興宗教にはまるという愚かな面も見せる。
夫と妻はそれぞれ異なる人間の弱さを持っていて、ある時期においてはお互いの強みを補完し合うよい関係だったともいえる。ほんの少し夫が妻を思いやれば、よい夫婦だったんだろう。
単なる対立ではなく、共依存的な関係が複雑に混ざる、このような対立は、現実的でリアリティがある。
絵の価値とは何か、ということについても考えさせる。妻だけでも、夫だけでも、ビッグアイズは世に出なかった。
絵の価値は、それそのものによって決まるのではない。バブルの頃の土地のような正体のないもの。だから、話題作りや、著名人の評価や、絵の背景にある物語が必要となる。それを夫はよく理解していた。
また、大衆が求めたのは、絵そのものではなく、流行りの絵を所有するという満足感だけだ、というのも面白い。
結局、絵というのはそれが生み出された文脈を切り離して評価することなど不可能ってことなんだけど、最近の日本で起きた作曲ゴーストライターの件ともつながるなあ、と思った。
真実を映す大きな瞳の物語。
ティム・バートン監督最新作観てきました。
ノンフィクションの話なので、過激すぎずな描写ですが。
それでもウォルターキーンのこすい演技には観ているこちら側も胸焼けするくらいの力強い嫌らしさがありました。笑
けれども、ウォルターは絵の才能こそないがセールスプロモーションと人を惹きつける巧みな話術があったこと。
そして、彼の才能が無ければビッグ・アイズは世に知られなかったかもしれないところも面白いポイントでした。
作者のマーガレットも絵の才能はあるが人に伝えるのが下手な人なことと男を見る目がなかったことがビッグ・アイズを有名にしたと思うと実話って面白い!
終盤の法廷シーンはコントです!
面白かった!
果たして、あれ以上の心理描写は必要なのか?
実際に起こった「ゴーストペインター」事件をもとに、ティム・バートンが映画化。まー、旦那のウォルターの詐欺師っぷり(商才含む)に呆然。エイミー・アダムス演じる奥さんの哀しさ、秘密を知りつつ沈黙を守ってきた娘ジェーンの存在…よく描かれていて楽しめました。
映画評論家の人たちが、「ティム・バートンにしては凡庸」「マーガレットが10年も我慢した理由、その心理描写をもっと入れるべき」て仰っていたけど、私はあれで十分だと思う。旦那が「本当に」一枚も描いてないという事実が発覚したり、暴力や脅迫紛いの接し方されたり、娘に秘密がばれていたとか、契機となる事柄は結構あったしね。
あれ以上、沈黙の理由を描くとクドくなっちゃうかと。
人物の心情は観客側から十分とらえられる作品。でもまぁ、確かに旦那の強烈キャラに押されて、マーガレットの内気で口下手な様子はあまり出てなかったかも。
マーガレットの心理描写は、描かれた子どもの悲しい表情からも読み取れる(暗いって批評されてもいたし)
圧巻なのは、終盤。マーガレットの鬱屈した気持ち(観る側も)が法廷で解放され、女性の自立と母娘の絆を見事に描ききった。
判事さんは名裁き!旦那の哀れさはもはやコメディ(笑)
埋もれていた真実。人間の愚かさと、それを見つめる純粋な瞳。
【賛否両論チェック】
賛:嘘や見栄といった人間の醜さが垣間見られ、改めて考えさせられる。最初は立場的に弱かった主人公が、娘を守るために自立していく様子にも勇気をもらえる。
否:実話とはいえ、終わり方には賛否両論ありそう。宗教的に意見が分かれる展開もあり。
女性の立場がまだまだ弱い時代にあって、夫に依存するしかなかったマーガレットの複雑な想いと、やがて自分をしっかりと持って自立していく様子が、とてもたくましく描かれています。そして、そんな嘘や見栄で塗り固められた大人達の世界を、間近で黙って見てきた娘のジェーンの姿もまた、人間の哀しさを訴えかけるようで、心に刺さります。後半のウォルターの変貌ぶりは目に余るものがありますが、これもまた人間の醜さを垣間見られるような気もします。
“本当の幸せとは・・・?”という問いかけを、絵画という具体的な表現方法を通して投げかける、そんな作品です。
とことんこすい詐欺男。
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