「駄目夫でも実は成功には必要だった」ビッグ・アイズ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
駄目夫でも実は成功には必要だった
総合:65点 ( ストーリー:70点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:60点 )
事実を基にした話ということだが、長い期間の話を手短にさらっと進めていくためにとんとん拍子で展開していき観やすい。あまり深刻にしすぎない軽い演出もそれに貢献しているが、手軽に観られる一方で作品が軽くなっていると思う部分はある。
それはバートン監督だからこうなるのだろうし、この内容ならばもう少し深刻な描き方を入れた方が自分には好みに合う。目の大きな絵の誕生の原因となったマーガレットの子供時代の苦しみも、自分の名前を記した作品を出せない苦労もあまり伝わってこなかった。
時代背景を考えれば女性が自分の身分を明かしていると男性より不利になるというのはわからないでもない。しかしすでに女性芸術家はそろそろ自分の名前で活躍しはじめた時代でもあるし、今回の女性が名前を隠した理由は主人公マーガレットとその夫ウォルターの性格の問題だと思う。生まれつきの嘘つきで人たらしのウォルターのいい加減な性格と、自分では上手く世渡りをしていけないマーガレットが、一時的とはいえお互いを補完しあい上手くやっていけた。
後に夫の駄目な部分にマーガレットに不満を募らせたのはわかるが、しかしこの夫がいなければあれほどの成功をおさめられたかどうか、いやそもそも成功できたかどうかも怪しいものだ。サルバドール・ダリの成功の陰に悪名高い妻ガレがいたように、マーガレットにはウォルターがいたのだ。その意味で2人は別離してもお互いに必要としあった時期があった。
成功した後に状況が変わり2人は争うことになった。妻の力を軽視して自分を過信し調子に乗った夫がクズで馬鹿だったが、彼がもう少し現実を理解していればこんな結果にならなくて済んだかもしれない。
だが結果として自立するだけの力がなかったマーガレットは自立出来たし自己の名声を確立出来たのだから、長い苦労の甲斐があった。でも本当は夫が身の程を知った良い人であって、夫婦円満のまま実はあれは妻の作品でしたと後に発表するのが最高の結末だったのかな。