「青春ばあさん。」怪しい彼女 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
青春ばあさん。
日本でお馴染の「意地悪ばあさん」が、ある日突然若返ったら?
っていう、よくある入れ替わりモノの枠は出ていないのだが、
いやー!恐れ入った。よく出来ている。
社会派の監督がこんな往年のコメディを撮ったことにも驚くが、
とにかく主演女優のシム・ウンギョンがとてもチャーミング!!
心は70歳のまま身体は20歳という、非常に難しい役どころながら
単なるコメディ演技の枠を超え、感動させるところなどもう完璧。
最近日本で話題になった映画の「娘はバケモノでした」というサブ
タイトルは、こっちの彼女にあげてもいいくらいの称号だと思う。
役所ちゃんに並んで、バケモノ俳優がこっちでも誕生した(爆)
ちょうど中高年にさしかかった年代の観客ならば、つい目頭を
熱くしてしまうような場面が多い。若い頃の苦労などいざ知らず、
あの韓国でも老人介護に辟易している。これが素直な婆さんなら
ともかく、この毒舌極まりないクソババアをさぁどうしてくれようか、
義母のせいで息子の嫁は体調まで崩してしまっている。いよいよ
自分がこの家から追い出され施設に入れられる感が迫ったある日、
マルスン婆さんは「青春写真館」なる店で遺影を撮ってもらうが…
突如20歳に若返ってからの姿がコミカル且つリアルに描かれる。
心は婆さんのまま、姿は可愛い女の子なものだから、俄然周囲の
羨望の眼差しとおかしな返答に対する笑いが巻き起こり大人気♪
実は歌手になれる程の歌唱力で孫のバンドに加入、デビューまで
漕ぎつけてしまうという、青春堪能ぶりには大笑いできる。
しかし突然行方不明になった婆さんのことを心配する息子たちは
怪しい20歳に振り回されながらも、だんだん真相に近づいていく。
ほぼ中盤までマルスンの嫌な面ばかり見せつけられてきた観客は
後半で彼女の歌唱バックに流れる映像に感動してしまうだろう。
息子を女手ひとつで育て上げるために、彼女はどれだけの苦労を
重ねてきたか…。これはどの親でも同じことだが、子供のためなら
親はいくらだって辛抱ができる。しかし歳をとると…ああなるのか^^;
いつもの韓国映画だと思う反面、人間はいつの間にこんな気持ちを
どこかへ置いてきちゃうんだな…と気付かされる。苦労の多い人ほど
人生観が豊かになり優しくなるものだと私も思ってきた。が、違った。
減らず口を叩く人間は、一生減らず口を叩くのだ。但しそこには、何か
愛情のかけらが見え隠れもしている。あんなにいびられた嫁さんが
気付いたのは、そこなんだろうと思う。母親がもっと強くならなければ、
これから先、家族の面倒を担う人生にきっと負けてしまう。
そしてもちろん、祖母はきっとああする。孫がどれほど可愛いものか、
実際にいる方にはきっと分かるだろう。我が子以上だというもんね。
(まとわり付いてる爺さんが立役者だが、あのラストはどうなんだ^^;)