「若返ったからって美人とは限らねえし」怪しい彼女 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
若返ったからって美人とは限らねえし
良くも悪くも、我の強い、口の悪いおばあちゃんが家で存在感を発揮し、生き生きと楽しそうにやっている。若返る必要があるのか?と思うくらいに、見た目はともかくとして、若い。
そのせいで、嫁は心労で倒れるし、老人会の友達たちも、振り回されている。
見た目が若返ったからと言って、歌が変わったわけじゃない。テクニックが身についたでもなく、もともと巧い。
しいて言えば、周りの反応も「若い娘が、妙に心に響く歌を歌う」というギャップに驚いてのものだ。みんなが振り向く美人になったわけじゃない。
この映画、残念ながら、見る前にハードルを高く上げ過ぎてしまっていたようだ。
私には響かなかった。
音楽は、演奏シーンも含めて、撮り方が稚拙で、迫力が欠けていた。歌は、本当に歌っているのか疑いたくなるほど、音が収まっていないし、歌唱シーンの映像は、カラオケの画面に出てくる映像にそっくりだった。
ストーリーも、枝葉末節を詰め込み過ぎなので、もう少しつまんですっきりとまとめて欲しかった。老人会でライバルだったおばあちゃんが脳卒中で亡くなったエピソードなんか、全カットでもよかったんじゃないか。あのばあちゃんの遺影が飾ってあるのを見た時には「若返り写真館に行かなかったんだ」って、ちょっと意地の悪い想像をしてしまった。
イケメン音楽プロデューサーとのはかない恋も、今の若さを失いたくないという願望のためのフックで、それがあるから孫に輸血するシーンが尊い犠牲に映るのだろう。
実の息子は、彼女の正体に気づき、あろうことか「息子を見殺しにしていいから自分の人生を生きて」なんて、親ならとても思い付かないようなことを口走る。それによって最後の選択、孫の命と引き換えに若さを失うという、悲しい結末が生きてくるのだろうが、これは韓流ドラマの家族ものによくある展開なのだろうか。こんなドラマがウケるのか?
侮りがたし。