バンクーバーの朝日のレビュー・感想・評価
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フェアプレーの先にある光を信じて
石井裕也監督作品では「舟を編む」を鑑賞したことがある。全く映画になりそうもない題材を、実にうまく映画作品としてまとめ上げる、その手腕に確かなものを感じた。さて、本作はカナダのバンクーバーに実在した日系人野球チームのお話。このモチーフを聞いただけで、もうドラマチックではないか! それを石井監督がどのように料理するのか? 僕の関心はそこにあった。
結果として「いまいち」の感じは否めなかった。相当期待して劇場に足を運んだだけに残念でならない。
きっとこの題材なら、李相日監督を起用していれば、それこそ「フラガール」のような感動大作になった可能性がある。
石井監督独特の一見無駄に見える間延びしたようなカット。あえて、感動するツボのタイミングをちょっとだけ外すような演出。それが石井監督の持ち味でもあるのだけれど、本作のような大作の骨格を持つ作品では、逆にそれが災いしてしまった感があるのだ。
本作での唯一の救いは今、人気、赤マル急上昇中の女優「高畑充希」の存在だ。この人をスクリーンで観る価値はある。
物語の時代は第二次大戦前のカナダ、バンクーバーの日系人居住区。
高畑充希演じるエミー笠原。この人の佇まいが、本当に当時の日系人社会の時代背景と雰囲気を、そっくりそのまま現代にタイムスリップさせたようなのだ。彼女は勉強がよくでき、大学の進学を目指している。そこには、日系人でも、大学で学ぶ者がいることを示すことによって、すこしでも日系人の地位向上に貢献できるのではないか?という彼女なりの思惑がある。彼女はそうして、裕福なカナダ人家庭のメイドの仕事で学費をかせぎ、家にもお金を入れている。彼女の兄、レジー笠原(妻夫木聡)が本作の主人公。彼は製材所で働きながら野球クラブに通っている。その名も「バンクーバー朝日軍」
当時の日系人たちの間では、この野球クラブは、期待はしていたものの、どうにも不甲斐ないと思われていたようだ。成績が悪いのである。勝てない。連敗続きなのだ。
「あんなでっかい体のカナダ人に、おれたちチビの日系人が勝てる訳ないんだよ」などと、レジー笠原は諦めかけていた。
おまけに彼らの日常生活や仕事も、偏見と差別に常にさらされている。ちょっとでも雇い主に意見をしようものなら
「ジャップは出て行け!!」と罵られる。かといって真面目に、熱心に働けば、仕事仲間の白人たちから
「ジャップはがっついてやがる!」と嫌味を言われる。
賃金は安い。彼らの親たちは
「カナダで1年稼げば日本で一生安泰で暮らせる」という、うまい話に乗せられて、はるばる海を越えて異国の地で働き始めた。しかし現実は、かくも厳しかったのである。このあたりの状況は映画の冒頭20分ほどで語られるのだが、この冒頭部分だけでは、その状況や辛さが、観客である僕たちに、いまいち切実に伝わってこないのだ。映画を最後まで見終わった後で、ようやく
「ああ、そうかぁ~、たいへんだったんだね」ということが観客の腹の中に収まるようなストーリー仕立てになっている。だから、僕がもし監督なら冒頭20分は、ばっさりカットするだろう。
さて、そんな負け犬根性が染み付いていたバンクーバー朝日軍。試合中、レジー笠原は、ちょっとしたヒントを見つけた。
「そうだ、頭を使う野球をしよう、もっと考えるんだ」
そこで編み出したのが「バント作戦」と「走る野球」である。
バントで一塁へ出る。すかさず二塁へ盗塁。相手チームは焦る。その隙に3塁へ。打者がボテボテのゴロを打つ。その間にホームへ滑り込む。
一点だ!ヒットなしでも一点取れる! あのでかい図体のカナダ人相手でもこれなら勝てるぞ! この「ちょこまかした」戦法でバンクーバー朝日軍はリーグ戦を勝ち進む。やがて彼らはリーグ優勝決定戦にコマを進めることになるのだった……
と、このあたりのトントン拍子に勝ち進むあたりは、実に爽快で楽しく鑑賞できる。
バンクーバー朝日軍はフェアプレーを心がけていた。その先に必ず、朝日が差すのを信じて。国や、人種の違いを超えられると信じて。
ただ、彼らのその後に待ち受ける運命は過酷である。
日米開戦。と同時に、カナダの日系人たちも敵性外国人という烙印を押され、強制収容所送りとなる。
僕はかつて戦時中のアメリカに住む、日系人を題材としたドキュメンタリー映画「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」を観た。
劇場で観終わったとき、僕はしばらく席を立てなかった。それほど彼らの戦いは悲惨で激烈だった。自分たちの運命に立ち向かう、自分たちの「アメリカ」という国を愛する意思表示をするのに、どれだけの命を捧げなければならないのか。その苛酷な時代の波と運命を受け止めたジャパニーズ・アメリカンたちの、ひたむきな力強さに打ちのめされたのである。
「ここまで人間は強くなれるのか?」と。僕にはできないと思った。
それこそ「負け犬根性」なのかもしれないが、僕は人と争いたくもない。また、なによりどんな事柄についても「戦いたくない」ないしは「闘いたくない」人間である。
それは21世紀の今、現実世界においてだ。
あえて「ぼくたち」という言葉を使わせてもらう。
「ぼくたち」は十分すぎるぐらい、すでに戦わされている。目に見える形での偏見や差別、格差といった戦い、そして目に見えない形で生活の中に潜む「たたかい」
いつになったら「ぼくたち」は戦わずに済む日常がやって来るのだろうか?
なんとも地味な作品です
今年最初の映画鑑賞は『バンクーバーの朝日』となりました。ただ、なんとも地味な映画でしたね。映画としてのメッセージがどこにあるかも不明でした。
もともとこの時代に移民としてカナダに渡った人々の背景が描かれていないし、また野球を志す二世たちの、一世とは違う心情も伝わらない。劣悪な環境のなかで仕事をしながら野球を続けるのが、結局野球が好きだからという点に焦点を当てた方が良かったと思いますね。最後のほうで妻夫木がそれらしいことを言うのですがね。
佐藤浩市まで使いながらもったいないと思いましたね。
何が描きたかったのか…
出演者にかなり期待して見に行った。(この豪華キャストがきちんと生かされるのか、などとあまり考えもせず)
残念ながら、娯楽としても史実を元にした記録としても全く面白くなく中途半端だと思う。久々に冗長で退屈な映画に当たった。演技派が揃ってただけに残念でしかたない。特に亀梨くんはどうしても貧乏にさらされている漁師じゃないだろう!演技力がどうとかいう前にアイドル臭がプンプン!(そこが一番笑えた)
高畑充希、佐藤浩市の演技が素晴らしかったのがせめてもの救い。セットや背景もよくできてたかな。
監督は本当にこの仕上がりに納得してるんだろうか。いろいろ横やりを入れられたのでは?と邪推したり…。だってこれならDVDでも見ない。絶対寝ちゃうzzz
野球の映画は難しい。
カナダで暮らす日本からの移民たち。うまい話に乗せられて外国へ旅立つというのは、ブラジルもそうだが、そういうブローカーみたいな人がいたということか。
カナダの野球殿堂にも入っているというバンクーバー朝日軍の話。
白人に迫害されながら、またものすごい低い待遇で労働する。
そんな話と野球と並立して描かれる。
レジー笠原(妻夫木聡)は野球さえできれば、この国に生まれたこともよかったと思える、というような意味のことを言うが、そういう切実なものが画面からは伝わってこない。そこが、本作の致命的なところだ。
周りの大人たちの熱狂とはうらはらに、選手たちは変にさめている。
窮乏といっていい生活と野球をするというのが、簡単には結びつかないのだ。実話と言われても、登場人物たちに熱を感じないのでは、なかなかに難しい。
石井裕也監督は野球があまり好きではないのか。そんなことさえ思う。
石井裕也にはビッグバジェットは似合わないか。
うーん
感動ッ❗❗
進塁するごとに心涙
当時の時代背景に合わせてストーリーが展開されるため教科書では分からない一般人の心情や動きが分かったのは面白かった。
バントで初めて得点するシーンでは一塁、二塁まで妻夫木が全力で走っていて笑えた。しかし、その後三塁、そしてホームベースを踏むまでに泣いた。人の成長をうまく描いていたと思う。
ただバントのシーンまでがあっさりしすぎていて面白くなかった。「閃いた!」→「やってみた」というザックリしたものなので、そこをもっと掘り下げるべきかと思う。前もって設定を知らないと何のことか分からないかもしれない。
またキャプテンになった妻夫木がほとんどやる気を見せないのは腹が立った。最後の最後までキャプテンらしさが出ない。
あとはキャストが豪華な割にそれに見合った演技を見ることができなかったのが残念。その俳優である必要性が見当たらないことも多々あった。居るだけなら出なくていい。
妻夫木の全力疾走を見るためだけの映画。
期待してたのに
過去に学ぶ労働意識。
バンクーバーに戦前存在していた日本人野球チーム朝日軍。
2003年には殿堂入りも果たしたというその軌跡を丁寧に描く。
これまた石井監督、すごい題材を持ってきたなーと、初めは
思った。大変失礼ながら朝日軍の事をまったく知らなかった。
何しろ戦前の、しかもカナダの、野球チームの話である。
観る前に何か…と思っていたら、ちょうど深夜TVで番宣が。
滝藤賢一が一人芝居で当時の移民歴史を詳しく毎夜連続で
放送していた。これがまたよく解かる!内容で、今思えば
これを見てから本作を観たので、非常に助かったといえる。
何しろこの作品(別に悪くはないけど)、冒頭の語りで歴史が
終わってしまうのである。まぁ野球メインのお話なんだから、
この朝日軍のことさえ描けばいいのだろうが、初めてそれを
知る人間からすると、なぜ彼らが野球チームを結成したのか、
今どんな状況に於かれているのかが分からない。ほぼ唐突に、
「勝てない朝日軍」の話から入っていくのである。それまでの
日系移民の苦労や困難が(レジーの親で語られるけど)あって、
この野球に懸ける意気込みや思い入れがグーッと強まるのに。
まぁそれはいいとして。。
冒頭から毎度毎度勝てない朝日軍の話で日本人街はもちきり。
身体プレーの大きいカナダ人に対しなかなか勝てないことに
業を煮やしたレジー(妻夫木)は、ある日ふと「バント」走法を
思い立つ。身体が小さいならばそれを存分に発揮すればよい、
盗塁、ヒット&ラン、などをどんどん取り入れていき朝日軍は
連続勝利をおさめるようになる。とはいえ、ここでは白人が
主導権を握っているのもあり、彼らの生活が楽になることは
到底なかった。しかし夢や希望を持ち誠実にプレーを重ねる
日本人に、やがてカナダ人も敬意を持つようになる…という、
ものすごく感動する話なのだが、後半、真珠湾攻撃のニュース
を皮切りに、彼らの功績は一気に反日態勢へと流されていく。
苦い歴史の構図もしっかりと描かれる。
描き方がリアルでエンターテインメント性は低い。
なんで野球映画なのに、こんなに盛り上がらないんだ?という
意見が多いのも分かる気がする^^;が、鬱屈した彼らの生活が
野球の功績を残すことで少しだけ救われる。だからレジーの
妹が発する真っ直ぐな意見にも賛同できる。海を渡って…と
いうなら、日本にも海外からの外国人労働者が多く存在する。
低賃金で過酷な労働に文句を言わず、勤勉に働く外国人が多く
存在するとやがてどうなるのかを体験した身には、彼らから
学ぶことも実は多いんじゃないかと過去の歴史が教えてくれる。
(エンディングで、実際のOBがチラリ登場するシーンに感動)
泣ける
役者がすごく豪華で安心して観られました。
物語に集中できます。
何でちょい役で宮崎あおいちゃんまで?と思ったのですが、この監督は「舟を編む」の方なのですね。納得です。
皆さん各々の役の演技が良かったですが、一番は高畑充希ちゃんだと思います。
この子は本当に凄い!
野球メインで男臭い映画ですけれど、高畑充希ちゃんがいると画面が本当に明るくなるんです。
ひとつひとつの表情に目が奪われてしまう。
特に泣きの演技が素晴らしいのでこちらももらい泣きです。
ただ唯一、亀梨和也さんが現代の顔すぎました。
浮いちゃっていました。
良い役所なのに「亀梨和也」さんなんですよね。
思ってたより!
日本人唯一無二のバント打法で、
白人達を見返すというか、どや!っていう
エンタメポイントはテンションが上がった。
他のテーマとして、移民としてバンクーバーで労働する日本人の葛藤とか、戦争前後のこととかも盛り込んで進んでいったけど、いまいちよく分からなかった!
というか眠くなってしまった!
ロケ地のあの酒場の雰囲気とか、豪華なキャストとかは見てて飽きない。
宮崎あおいきたーっと思ったらめっちゃベンチに座ってるだけでした。
期待していた割には…
小説読んでさらに泣かされた!
まったく知らなかった「実際にあった話」の映画。
これは泣きます。
石井監督のシンプルな演出に好感を持ちました。
3時間以上のもっとゆったりした長尺で見てみたいとも思いました。
大勢の登場人物の、わからない部分を西山繭子さんの小説(ノベライズ)で確認したら、大当たりの感動本! すべて合点がいきました。
この小説にはさらにたっぷり泣かされました。
日本人が差別される、貴重な感覚の映画でもある。
人種差別も、そして戦争も、絶対反対です!!
国家、体制には騙されない私でいたい。私ら庶民、すぐに騙される。
なんか思った程感動が?
人種差別⁈
何を一番描きたかったのかわからない。
人種差別を描いた作品はあるけど、日本人には馴染みがないからそこを狙ってるのかと思ったけど…激しく迫害されるでもないのでチームに対する見方が変っていくところも感動はしない。
見るべきところが違ったか…
でも随所に笑えるシーンがあったのが良かった。
単純にすきなタイプ
石井祐也監督の映画の雰囲気が好きで今回もストライクでした。
中でも妻夫木聡さんと池松壮亮さん2人が話すシーンや高畑充希さんが泣きながら話すシーンは演技とは思えないほど自然で、映像とは思えないほどリアルな空気をもっていてとても引き込まれました。
予想外だったのは思わず笑ってしまうシーンがいくつもあったことです。
全103件中、61~80件目を表示












