劇場公開日 2014年3月8日

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パズル(2014) : インタビュー

2014年3月6日更新

夏帆、女優業への愛でつかんだ目覚ましい活躍

この日一番の確信に満ちた口調で夏帆は語る。「私、絶対に女優に向いていないんですよ(苦笑)。それは10年やってきて、私自身が一番よく分かってます」。その言葉からは謙遜ではなく、なぜか前向きな強さが感じられる。そんな夏帆が最新主演映画「パズル」では、凶器を手にした血まみれのヒロインを演じているが、血しぶきを浴びる姿は美しく、どこか楽しげだ。(取材・文・写真/黒豆直樹)

作家・山田悠介氏の原作を大胆に改変し映画化。女子高生の中村(夏帆)が校舎から飛び降り自殺を図る。その1カ月後、奇怪なマスク集団による妊娠中の教師の監禁を皮切りに、“殺人パズルゲーム”が繰り広げられる。一方、一命を取り留めた中村は、同じく心に深い傷を抱えた湯浅(野村周平)から事件の鍵を握るあるものを託される。

監督を務めるのは、実話を元にした問題作「先生を流産させる会」でセンセーショナルな長編デビューを飾った内藤瑛亮夏帆とは昨年放送されたドラマ「悪霊病棟」に続いてのタッグとなる。

「ドラマでの内藤監督の演出がすごく好きで『いつか映画にも呼んでいただけたら』と思っていたんです。だから最初に話を聞いて、とにかくやります! と。家に帰って脚本を読んでビックリしましたが(笑)、血のりを浴びる役をやってみたかったんですよ」

緊張感にあふれているのになぜかくすりと笑わせ、逆に全く緊張感のないままに凄惨なシーンが展開されるなど、狂気とユーモアを同居させ、園子温三池崇史の系譜に連なる新たな才能として注目を浴びる内藤監督の演出はどのようなものなのか。

「実は『悪霊病棟』以前に私も『先生を流産させる会』は見ていて、すごく監督に興味があったんです。お会いする前は『こういう作品を撮る人は何かヤバいんじゃないか?』とか思っていたのですが(笑)、お話するとすごく穏やかで。でも、“何か”持っているんだろうなというのも感じますが(笑)。年齢的にもそう離れていないので、近い距離感でお話しできるし、すごく丁寧に人物の心情を切り取ってくださるんです。監督というよりも演じる側の視点で見て、役者の気持ちを優先してくださるのですごくやりやすいです」

中村という役は当初、心を閉ざしており、自殺未遂についても何も話そうとしないが、湯浅という接点を得て、殺人ゲームが展開されていく中で徐々に変化していく。要所要所で見る者をゾクリとさせ、心をざわつかせるような表情を見せるが、彼女は戦慄しているのか? それとも笑っているのか? その感情を言葉で説明するのは難しい。

「私にとってもすごく難しい表現でした。監督とも細かくお話をして、感情を示すいろいろな言葉は頭の中にあるんだけど、それを『こういう顔で』とやろうとすると違ってしまうんです。いま、自分はこういう表情をしているというのではなく、中村はいまどういう思いでいるのか? と探りながら感情を高めていくという感じでしたね」

予告編でも、血を浴びた夏帆が「温かい」とポツリとつぶやくシーンが見られる。まるで牛の出産に立ち会う感動の動物ドキュメンタリーの一場面のような趣きだ。

「私も最初、『何でここにこんなセリフが?』って思いました(笑)! ちなみに血のりでの撮影は実は寒いです。すっごく寒いんですが、監督は全然カット掛けずに笑いながら見ていて、どんどん血まみれになっていくんですよ(笑)。ああいう血まみれのシーンをやってみたかったので念願がかないましたね」

現在22歳。今回のような学生役から社会人まで、役の幅はどんどん広がりを見せている。もちろん「職業」という点だけではない。ここ2~3年でWOWOWの連続ドラマ「ヒトリシズカ」では闇を抱えたダークヒロインを演じたかと思えば、昨年のドラマ「みんな!エスパーだよ!」では超能力を持つ不良ギャル、映画「箱入り息子の恋」では盲目のヒロインと作品ごとに全く違う顔を見せる。「決して意識的に異なるタイプの役柄を選んでいるわけではないんですが」と語るが、周囲がそれだけ夏帆を求めているということに他ならない。

本作の血まみれヒロインを経て、現在は3月15日初演で自身2度目の舞台挑戦となる「万獣こわい」(作・宮藤官九郎/演出・河原雅彦)に向けて、稽古の日々だが「打ちのめされています」と苦笑する。

「いろいろな役をやらせていただき、引き出しが増えたかと思いきや、意外とそうでもなかったと(苦笑)。ひと言でいうと、これまでの蓄積がすべて“壊れていく”感じ。前の作品でこうだったから、今回の現場でそれが生きるかというと、なかなかそういうものでもないんですよね。お芝居って難しいなと毎日思っています」

ここで冒頭の発言に戻るわけだが、女優という仕事に対し「向き不向きでいうと絶対に向いてない!」と男前な口調で断言するが、一方で「負けたくない!」「この役は他の人にはやらせたくない」と思う負けん気の強い一面も持つ。そして何より、向いていようがなかろうが、女優という仕事を愛している。

「2年くらい前ですかね……? 『向いてないなあ』と思いつつも『それでもいいや』って割り切っちゃったんですよ。これだけいろんなタイプの俳優さんがいるんだから、ひとりくらい役者に向いていない女優がいてもいいんじゃないかって(笑)。そう考えた途端に、急にいろんなタイプのお話をいただけるようになりまして。面白いですね」

この先の目標や理想を聞いても答えは返ってこない。「舞台が終わったら、消えてなくなっちゃうかもしれませんからね(笑)。毎回、本気でそう思って、目の前のことをやらなきゃ先のことなんか見えないって気持ちでやっています」といまにも逃げ出しそうな顔で語りながらも、「でも……」と続ける。

「この『パズル』に関しては、ここまでやって、公開した後で次にどんなお仕事が来るのか楽しみなんです(笑)」

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