「「映像の魔術師」がそれを封印して絵では示さず,別チャネルの「ことば」で暴走しより「想像せよ」と迫る」野のなななのか ykonoさんの映画レビュー(感想・評価)
「映像の魔術師」がそれを封印して絵では示さず,別チャネルの「ことば」で暴走しより「想像せよ」と迫る
とある講演会で大林監督は『あの空の花(以降「前作」)』と併せて映画版ゲルニカのつもりで作ったと言ってた.「自分をピカソに喩えるのはエラク大胆な」とその時は思ったが,確かに前作と今作は正面顔と横顔の関係.
前作では映像,文字,音声言語の3チャネルを束ねて畳みかけるように情報を伝える手法が使われた.今作は映像と音声で別の情報を伝えるというある意味「狂った」手法で観客の入力バッファを溢れさせてる.これも発明か…
CG使えばどんな映像でも作り出せる時代に「映像の魔術師」と呼ばれた監督がそれを封印してある意味「普通の」絵で映像を作り,別チャネルの「ことば」で暴走する.なのでぱっと見舞台っぽい退屈な芝居に見える.
ところが映像にも音声にも(ある意味)独立に別の話が重なり合って観客に提示される.おまけに生者も死者もシームレスに共存している.大林監督,オカシイというか狂ってる(褒め言葉).
前作はそれでも「絵で観せる」部分があったのを『野のなななのか』は絵でも示さず,より「想像せよ」と迫る.こんな映画は大林宣彦監督にしか作れない(=代替が効かない)が,おそらくは免疫ない人にはかなりなイニシエーションになろうなぁ…
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