劇場公開日 2014年5月17日

「「さよなら人類」のたま?たまだろ?たま・・・」野のなななのか kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「さよなら人類」のたま?たまだろ?たま・・・

2019年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 生と死の49日の間に見る光景なのだろうか、野の楽師たちの演奏する光景が自然に溶け込み、彼らに導かれて死の世界に行くような・・・。さらに鈴木光男の描く絵、中原中也の詩が心に響く作品でした。

 北海道芦別市。大往生を遂げた鈴木光男医師の死。彼の親戚縁者が集まり、故人の話や親せきの話、そして戦争、震災、原発問題について語り合うストーリー。流れているレコードは敵戦闘機の音、これはグラマン、これはB29など、当時の日本で音を聞き分けるために作られたものらしい。

 鈴木家の家系図でも見せてもらえないと、最初は親戚のつながりもよくわからない。会話も敢えて“間”をなくし、時折、会話のキャッチボールさえわざと外すようなところが面白い。特にひ孫に当たるかさね(山崎紘菜)の会話は皆と噛み合わない。

 北海道の本当の終戦は9月5日。玉音放送も知らぬまま樺太に渡った話や、戦争前は樺太でも日本人とロシア人は仲良く暮らしていたなど、あまり知られてない話も知ることができる。

 親戚ではなく、看護師として働いていた常盤貴子の存在がまた興味深い。祖父さんが好きだった山中綾野(安達祐実)の生まれ変わりだとして、絵のモデルにもなっていたが、春彦(松重豊)の妻は幽霊がいるなどと主張するのだ。明らかに彼女は存在はしていたのだが、すべて幽霊だったとして観るのもまた面白いのだと思います。

 色んな話が詰め込み過ぎとも思えますが、要は反戦と反原発の思いが伝わる作品。鈴木姓を名乗っていれば、いつかは鈴木家の墓に入ってまた楽しくやれるなどという家族愛なんかも感じられるし、お盆の頃に親戚が集まって観るのもいいかもしれません。コーヒーでも飲みながら。

kossy