「不気味な街の佇まいと、それを強調する音事,事故のラジオ放送、2人で1人、面白かったが謎も多い」複製された男 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
不気味な街の佇まいと、それを強調する音事,事故のラジオ放送、2人で1人、面白かったが謎も多い
ドゥニ・ビルヌーブ監督による2013年製作(90分/R15+)カナダ・スペイン合作映画。
原題:Enemy、配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2014年7月18日
3回見たが、正直良く分からなかった。
自動車事故は、ラジオ放送までされていたので、幻想やイマジネーションではなく事実と、自分には思われた。その一方で、母親は主人公のことを、教員で立派な家と言っていたので、彼女によれば、登場人物2人を合わせた存在ということになる。この2つの考えをごくごく素直に解釈すれば、1人の人格が、何故か2つに分けられたということになるのだが。
まあ、この性格が大きく異る超ソックリさん(ジェイク・ギレンホールが2役)が何故存在していたのかは置いといても、かなり面白く且つ興味深い映画だった。そして、区別がつけられない様な類似の高層住宅が立ち並ぶトロントの都市風景が執拗に映し出され、その中で区別不能なソックリさんが存在しても不思議は無い気にはさせられた。
外見はそっくりで同じ場所に同様の傷まであるらしい2人だが、性格だけでなく、仕事(大学助教授 vs 俳優)や暮らしぶり(質素なアパートvs 高級マンション)も随分と違っていた。ただ同じ大都市に居住し、好みの女性タイプは同じなのか、入れ違いを実施。共に女性側にはバレてしまった様だが、反応が対照的だったのが興味深い。俳優の方は、助教授の恋人(メラニー・ロラン)に猛烈に拒否され、自動車同乗中の大事故に繋がってしまう。一方、俳優の妊娠中の妻(サラ・ガドン)は入れ替わりを受け入れてくれた様に思えた。こっちの方が、自分及びお腹の中の子にgoodと冷静にリアルに判断したのだろうか?
最後のシーンの大きなクモは何なのだろうか?少し調べて見ると、ユング心理学では束縛する母親を象徴するとか。主人公の大学職員はブルーベリーを拒否していたことに象徴される様に母親の管理から逃れようとしている様であったが、入れ替わった男の妻、彼女が新たに束縛者になったということなのだろうか?イントロの女性がクモを踏み潰そうとする映像は、そういった女性による束縛を嫌ってる男の心情を反映した幻想?
そう言えば、支配者の様に街の上に大きく佇んでいた巨大な蜘蛛の様のものは、いったい何だったんだろう?誰かの幻想なのか、真実なのか?そして、大学助教授は、独裁者が食と娯楽を与える、或いは情報を制限するといった講義を行っていた。何か映画内容と関係がある様なくどさでもあった。
不気味なトロントの街の佇まいや、それを随分と強調する音楽の存在もあって、蜘蛛様乗り物を操る宇宙人イメージの街の独裁者が、支配強化のために密かに人を夢中にさせる様なヒトの部分的複製を仕掛けてきてるというSF的設定を、「メッセージ」を監督したドゥニ・ビルヌーブ監督ということもあり、自分はイメージしてしまった。あの2人は、1人の人間のある部分をそれぞれ体現した存在であると。
監督ドゥニ・ビルヌーブ、製作ニブ・フィッチマン M・A・ファウラ、製作総指揮フランソワ・イベルネル 、キャメロン・マクラッケン 、マーク・スローン、 ビクター・ロウイ、原作ジョゼ・サラマーゴ、脚本ハビエル・グヨン、撮影ニコラ・ボルデュク、美術パトリス・バーメット、衣装レネー・エイプリル、編集マシュー・ハンナム、音楽ダニー・ベンジー ソーンダー・ジュリアーンズ。
出演
ジェイク・ギレンホールアダム/アンソニー、メラニー・ロランメアリー、サラ・ガドンヘレン、イザベラ・ロッセリーニキャロライン、ジョシュ・ピース学校の先生、ティム・ポスト管理人、ケダー・ブラウン警備員、ダリル・ディンビデオ屋の店員、ミシャ・ハイステッド暗室の女性、メーガン・マン暗室の女性、アレクシス・ウイガ暗室の女性。