「構成に難ありだが、心温まる名作。」リトルプリンス 星の王子さまと私 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
構成に難ありだが、心温まる名作。
サン=テグジュペリの永遠の名作をアニメーションとして映像化。
原作の物語をなぞりながら、その後の物語を描いている。
とある街に引っ越してきた女の子が、かつて「星の王子さま」と出会ったことのある老飛行士との交流を通して本当に大切なことを見つけていくファンタジー・3DCGアニメーション。
主人公の女の子を演じたのは『トワイライト・サーガ ブレイキング・ドーン』『インターステラー』のマッケンジー・フォイ。
女の子の母親を演じたのは『きみに読む物語』『アバウト・タイム』のレイチェル・マクアダムス。
バラの声優に『インセプション』『ミッドナイト・イン・パリ』のオスカー女優マリオン・コティヤール。
キツネの声優に『スパイダーマン』シリーズや『猿の惑星:創世記』のジェームズ・フランコ。
ヘビの声優に『ユージュアル・サスペクツ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のオスカー俳優ベニチオ・デル・トロ。
ミスター・プリンスを演じたのは『ナイト ミュージアム』『ウォールフラワー』のポール・ラッド。
日本語吹き替えでは、キツネの声を『嫌われ松子の一生』『るろうに剣心』シリーズの伊勢谷友介。
ヘビの声を『冷静と情熱のあいだ』『謝罪の王様』の竹野内豊。
老飛行士を演じた津川雅彦さんの演技が最高でした。
「星の王子さま」が原作となっているが、大部分はオリジナルストーリー。原作というよりも、原案と言った方が良いかも。
老人になった飛行士と、決められたルートを歩くことを強いられている少女の交流には目頭が熱くなった。
まぁ、この映画に限らず老人と子供の物語は大体泣けるんですが。
前半は少女と老飛行士の交流、後半は少女と大人になった星の王子との冒険が描かれる。
正直、前半のパートと後半のパートがうまく噛み合っておらず、別々の物語を二つ並べただけのようになってしまっている。
それぞれの物語は楽しかったので、もっと上手く二つの物語が繋がっていれば素晴らしかったと思う。そこは残念。
現代の時間軸ではCGアニメーション、「星の王子さま」の物語を語る時にはストップモーション・アニメで描かれている。
CGアニメーションも非常に高い水準で描かれていたが、やはりストップモーション・アニメのクオリティの高さが素晴らしい!この映像美で「星の王子さま」の物語を展開すれば、それはもう泣くしかないでしょう!
それだけに、後半になるとストップモーション・アニメが無くなるのが残念。
王子がかつての心を取り戻してからはストップモーション・アニメに変わるとか、そういう演出が欲しかった。
全てが管理され、心の自由を失っている現代社会を皮肉的に描き、目に見えないものにこそ大切なものがあると言う「星の王子さま」の哲学を肯定するという構成は真っ当だとは思うが、現代社会があまりにも暗いものとして強調されており、少し描き方がフェアではないと感じることもあり。
あと、老飛行士は完全にヤバい人ですよね。もう少し常識を持った人として描いた方が良かったのでは。
現代社会も童心を持った大人も両極端に描かれすぎているので、その辺りのバランスがもっと上手く取れていれば良かったのに…
いくつかの欠点はありますが、基本的には美しく楽しい、フランスらしい優雅さを持ったアニメーションであります。
子供だけでなく、大人にこそ観賞してもらいたい一作です。