「星の王子ニューヨークみたいなところへ行く。 構成に難ありだが、心温まる名作。」リトルプリンス 星の王子さまと私 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
星の王子ニューヨークみたいなところへ行く。 構成に難ありだが、心温まる名作。
とある街に引っ越してきた女の子が、老飛行士との交流を通して本当に大切なものを見つけてゆくファンタジーアドベンチャー・アニメーション。
主人公の少女の声を演じるのは『トワイライト・サーガ』シリーズや『インターステラー』のマッケンジー・フォイ。
少女の母親の声を演じるのは『きみに読む物語』『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のレイチェル・マクアダムス。
星の王子さまが世話をする美しいバラの声を演じるのは『インセプション』『ミッドナイト・イン・パリ』の、オスカー女優マリオン・コティヤール。
星の王子さまの友人であるキツネの声を演じるのは『スパイダーマン』シリーズや『猿の惑星:創世記』のジェームズ・フランコ。
星の王子さまが出会うヘビの声を演じるのは『ユージュアル・サスペクツ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の、オスカー俳優ベニチオ・デル・トロ。
ビジネスマンの下で用務員として働く男、ミスター・プリンスの声を演じるのは『ナイト ミュージアム』『ウォールフラワー』のポール・ラッド。
キツネの日本語吹き替えを務めるのは『嫌われ松子の一生』や『るろうに剣心』シリーズの伊勢谷友介。
ヘビの日本語吹き替えを務めるのは『冷静と情熱のあいだ』『謝罪の王様』の竹野内豊。
音楽は『ダークナイト』トリロジーや『インターステラー』の、巨匠ハンス・ジマー。
作家にして飛行士、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが1943年に刊行した永遠の名作「星の王子さま」を映像化。
特徴は原作のストーリーだけでなく、老人となった飛行士と少女が繰り広げるその後の物語も描かれているところ。大部分が映画オリジナルのストーリーなので、「星の王子さま」は「原作」というよりも「原案」と言った感じに近いと思う。
前半は少女と老飛行士の交流、後半は少女と大人になった星の王子さまとの冒険が描かれており、合間合間で原作の物語が断片的に挿入される。
面白いのは「星の王子さま」の物語が語られる際にはストップモーションアニメ、少女を中心とした物語が語られる際には3DCGアニメーションが用いられているという点。1粒で2度美味しい、他にはない味わいのアニメ映画となっている。
CGアニメーションも非常に高い水準ではあるのだが、それの印象が薄くなるほど、本作のストップモーションアニメのクオリティは素晴らしい!
温かみと芸術性を併せ持ったファンタジックな世界が見事に生み出されており、観ているだけでギュッと胸が締め付けられる。この映像美で「星の王子さま」が語られるんだから、こんなもん泣かない訳がないだろっ😭
ただ、ストップモーションアニメが素晴らしいだけに、後半になるとそれが無くなってしまうのが残念。王子がかつての心を取り戻すと、表現もまたストップモーションアニメに戻るとか、そういう一押しが欲しかった。
日本のアニメだとアニオリ展開は蛇足になりがちだが、この映画のオリジナルストーリーは悪くない。老人になった飛行士と決められたルートを歩くことを強いられている少女の交流には目頭が熱くなる。
しかし、前半の少女/老飛行士パートと後半の少女/プリンスパートがうまく噛み合っているとは言い難い。繋げ方が雑なので、別々の物語を二つ並べただけのように見えてしまう。
それぞれのパートは楽しかったので、もっと上手く2つの物語が繋がっていればより作品の評価は上がっていただろう。
全てが管理され心の自由を失っている現代社会を皮肉的に描く事で、「大切なものは目に見えない」と言う「星の王子さま」の哲学を肯定するという構成は真っ当だとは思う。ただ現代社会があまりにもカリカチュアライズされすぎており、描き方がフェアではないともちょっとだけ感じてしまう。
あと、これ老飛行士は完全にヤバい人ですよね。もう少し常識を持った人として描いた方が良かったのでは。
現代社会も童心を持った大人も両極端に描かれすぎており、その辺りのバランス感覚の緩さがノイズになってしまった。
いくつかの欠点はありますが、基本的には美しくて優雅なアニメーションであります。さすがフランス製。
明るく楽しいので子供にもおすすめ出来るが、「星の王子さま」に慣れ親しんだ大人にこそ鑑賞してもらいたい1作であります。
※日本語吹き替えは芸能人を多く起用しているが、なかなか悪くない。特に老飛行士を演じた津川雅彦さんの演技は最高です👍