劇場公開日 2015年11月21日

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リトルプリンス 星の王子さまと私 : 映画評論・批評

2015年11月17日更新

2015年11月21日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

アニメ表現の可能性を広げる志が、普遍的主題とピュアな感動をさらなる高みへ導く

大人になって「星の王子さま」を読み返すと、これは子供向けの本なのだろうかと疑問を抱く。飛行機乗りでもあった作家のサン=テグジュペリは、自己を投影した飛行士を作中の語り手とし、不時着したサハラ砂漠で小さな王子と出会う物語を紡いだ。王子が旅してきた星々で会った大人たちの奇妙な言動は現代社会への風刺だし、互いを愛しながら思いが通じず離れ離れになる悲恋のエピソードもあれば、ラストで王子が星へ帰るために選ぶ手段には胸が張り裂けそうになる。とはいえ、子供だけでない幅広い世代に訴える要素があるからこそ、1943年の発表以来世界中で読み継がれてきたのだろう。

作者自身による素朴で味わい深い挿絵を含め広く愛されてきた「星の王子さま」の魅力を保ちながら、21世紀の観客の心に響く新しいアニメ映画を作るため、「カンフー・パンダ」のマーク・オズボーン監督ら製作陣は、原作の物語を忠実に映像化した世界を核とし、その外側に新たなストーリーを創造することにした。具体的には、お受験ママに管理され孤独な9歳の少女が、隣に住む元飛行士の老人と仲良くなる話を3DCGアニメで描き、老人から語られ少女が想像する「星の王子さま」の世界を、紙と粘土の質感を活かしたストップモーション・アニメで表現したのだ。とりわけ後者のパートは、原作の挿絵の純朴なタッチが再現されたキャラクターの造形や、葉の一枚一枚まで細やかに作り込まれた背景、砂漠や草原の雄大な景観などが実に見事で、3D上映で観賞すると作品世界に浸る喜びをより深く味わえる。

物語は後半、「星の王子さま」の世界が外側の世界へ浸食するような格好で転調し、少女はスリルありアクションありの冒険へ飛躍する。この旅が始まる直前には少女に意識の中断があり、そこから先は夢の出来事としても解釈可能だ。このあたりに、「子供向けだから何でもあり」ではなく、大人の観客でも納得できるロジックをさりげなく仕込んだ作り手の配慮がうかがえる。

原作のテーマの一つは、大人になっても子供の心を忘れないこと。サン=テグジュペリのメッセージを新しいアニメ表現で伝える本作は、出会いと別れ、愛と冒険の物語に感動することの喜びを改めて思い出させてくれるという意味で、やはり子供だけでなく大人にも観るべき価値がある。

高森郁哉

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