「夜を生き、朝に生きる」夜に生きる 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
夜を生き、朝に生きる
オスカー作品賞に輝いた『アルゴ』以来となる、ベン・アフレック監督作。
と言う事で期待されたが…、今回は興行・批評共に撃沈。
でも、何の何の、今作も面白かったぞ!
監督デビュー作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(傑作!)と同じデニス・ルヘイン原作。
禁酒法時代のボストン。戦争から帰還後、警察幹部の父に反発し、犯罪の道を選んだジョー。
ギャングのボスの愛人と愛し合うが、それがバレて半殺しの目に遭い、女は殺され、自分も警官殺しの濡れ衣で逮捕される。
出所後、復讐を誓うジョーは敵対ギャングの一員となり、新天地フロリダで酒の密売とカジノ建設計画でのし上がっていくが…。
ギャング、禁酒法時代、抗争、クライム・ドラマ…大いに食指をそそる。これらが好きな方は見て損は無い筈。
犯罪の世界を生きる悲しい性、非情な世界…監督2作目『ザ・タウン』(これまた極上作!)とも通じる。
関わったが為に人生が狂わされていく。クリス・クーパー演じる警察本部長とエル・ファニング演じるその娘の運命は沈痛。
銃撃戦は勿論、復讐と野心と裏切り、哀愁やロマン。見応え充分。
正直、何故アメリカでは不発だったのか、不思議。
自分に見る目が無いのか…?
確かに、エピソード詰め込み過ぎ。前半部分だけで一本の作品に出来る。
骨太のクライム・ストーリー一本で話が進むと思いきや、ラブ要素やちょい宗教要素、着地は意表を突く感動的な終幕。
要は、てんこ盛りのエンターテイメント。
再び賞向けかと思いきや、エンタメに徹し過ぎたのが期待にそぐわなかったのか…?
でも、ベンアフだって賞狙いじゃなく、往年の同ジャンルを彷彿させる娯楽クライム・ムービーとして作った筈。
それに、一人の男の生きざまとしても余韻残る。
“夜に生きる”という邦題がいい。
この“夜”とは朝昼晩の事ではなく、犯罪の世界の事であろう。
犯罪の世界でしか生きられない。
しかし、犯罪者ではあるが、決して悪人ではない。
自分の生き方に葛藤しながら、女を愛し、のし上がり、ケジメを付け…
そんな男が欲したのは…
“朝”を生きたかったのだ。