「良い映画です、お薦めします。」夜に生きる A.Camelotさんの映画レビュー(感想・評価)
良い映画です、お薦めします。
善と悪の境界があいまいになっていく映画。まず、冒頭の語りがとても重要。戦争を経て国や世間にも裏切られて夜の道に入ったと。これが頭の隅にあるべき。
主人公は決して善良ではないが、極悪というわけでもない。アウトローの道に自ら自覚して入ったという点で、この主人公に相対する2つの団体とは異なる。1つはKKK。もう1つは盲目的な教会信者たち。
KKKは人種差別主義の秘密結社であり、そのメンバーはどんな仕事に就いていようが表向きは善良な顔をしている。そして、自分たちの主義に反することに対してはどんな手を使っても潰しにかかる。中には、主義などどうでもよく欲望の満足のために動く者もいる。悪のレベルとしては極悪に近い。
一方、教会の盲目的な信者たちは、穏やかで決して悪ではないが、神のお考えや御業という言葉にただただ従う。ひとりひとりの影響力は小さいが、カリスマ性のある指導者に容易に誘導されてしまい、指導者が非常に硬直した頑なな意思を貫こうとすればその方向への大きな影響力を持つに至る。こちらもKKKと同様に妥協点を見いだそうとはしない。KKKと異なるのは、隠れることもなく、清廉潔白な考えであるとしか自覚していない点。これはこれで厄介。
主人公は、人種にかかわりなく恋愛し結婚する。KKKのようではないことを明確に表している。カリスマ性のある教会指導者的な女性は、主人公に勝利するが、その頑なな考え方は、実は精神的な問題に起因していて親子共々悲劇的な最後に至る。こうして見ると、主人公は悪の側にいるけれども、極端に走らずバランスの取れた行動をしており、ピンチを大勝利に変えるスマートさも持っていて非常に魅力的(大勝利の箇所は観客もだまされるどんでん返しで最大の見せ場)。とはいえ、悪事の代償は軽くはなく深い悲しみも訪れる。その辺りのバランスもうまく描かれていたと思う。
お薦めします。