夜に生きるのレビュー・感想・評価
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「ザ・タウン」の別バージョンのようにも感じられる一作
『アルゴ』で映画界の高みに立った後、ベン・アフレックがもう一度、ホームグラウンドであるボストンへと舞い戻り、そこを起点とした抗争劇を描き尽くした一作。本作にはアフレックの弱みと強みが同居している。強みはその土地の濃厚な空気を描き出すことができる点。俳優同士の互いにジリジリと視線を絡ませるような緊張感も随所に介在する。その一方で、これまで彼の監督作では封印してきた、甘い演技が復活しているのが難点か。禁酒法時代に特有の、煙草の煙がゆらりと立ち昇るゆったりした物語運びと、彼の曖昧な笑みは、そのテンポに不慣れな観客にとってダルさを感じさせるかもしれない。だが、本作が救われるのはクリス・クーパーとエル・ファニング演じる父娘が現れるあたりからだ。彼らの堕ち方はリアルで、不気味で、この映画の凄みとなって突き刺さる。そしてラストの余韻は、筆者の目にはどこか『ザ・タウン』の別バージョンのようにも感じられた。
映像美も楽しめるギャング映画
禁酒法時代のギャングを描く映画というと、古色然とした映像タッチになることが多いが、このベン・アフレック最新作はクリアで高精細な映像美を追求した印象。マイケル・マン監督の「パブリック・エネミーズ」も似た傾向があったが、あちらはデジタルカメラ特有の冷たさが気になったと記憶している。本作はクールだが味わい深い絶妙な映像に仕上げてきたように思う。
中盤まではアクションを比較的抑えめに進めるぶん、終盤のホテルでの銃撃戦シーンが大いに盛り上がる。アフレックの仏頂面も、感情を押し殺すこのキャラクターにプラスにはたらいたようだ。アクションといえば、屋上から人を突き落とすシーンなど、VFXをさりげなく使ってインパクト大の効果を生んでいる点でも楽しませてくれる。
【”悔い改めよ。”警察幹部の息子が父の生き方に反発しギャングとなり、出会った三人との女性との関係を絡ませながら、夜の世界で成り上がって行く様を激烈な銃撃シーンを交えて描いたビターな作品。】
■禁酒法時代のボストン。厳格な家庭に育ったジョー・コフリン(ベン・アフレック)は、警視正である父トーマス・コフリン(ブレンダン・グリーソン)に反発し、ギャングの世界に足を踏み入れる。
やがて、ジョーは3人の女性、敵対するギャング、ホワイトの娼婦エマ・グールド(シエナ・ミラー)と恋仲に落ちるが彼女を”殺され”、アーヴィン・フィギス警察本部長(クリス・クーパー)の娘で且つて騙されて薬中だった、ロレッタ・フィギス(エル・ファニング)を助け出すも彼女は説教師となりそして自殺。アーヴィン・フィギス警察本部長は精神がオカシクなる。
ジョーは、グラシエラ(ゾーイ・サルダナ)とも恋仲であり、彼女の身を守るために一時的にボストンから非難させ、因縁の相手であるマソと彼と結託したホワイトとの壮絶な銃撃戦を制し、安楽な日を迎えるが、ある日狂ったアーヴィン・フィギス警察本部長に自宅を襲撃され、グラシエラを失う。
だが、彼はグラシエラとの間に設けた息子と映画を観に行くことを楽しみとし、息子は映画を観て”保安官になりたい”と言う夢を持つのだった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・物語の展開が、やや粗いギャング物語である。登場人物も多く、時間経過も早い為ナカナカ付いて行くのが大変である。
・だが、作品が醸し出す時代感や、ベンアフレックが演じるジョー・コフリンがのし上がっていく中で身につける衣装や、意匠などはキチンと作られており、見応えがある。
・ジョー・コフリンとディオン・バルトロ(クリス・メッシーナ)コンビが、騙し合いの中、因縁の相手であるマソと彼と結託したホワイト一味との銃撃シーンは激烈であり、コレマタ見応えがある。
又、死んだと思っていたホワイトの娼婦エマ・グールドが生きて居て、落ちぶれた娼婦として生きて居たというシーンも、何ともシニカルである。
<再後半の、漸くジョー・コフリンが手に入れた安住の家を、”悔い改めよ”と叫ぶ狂ったアーヴィン・フィギス警察本部長に襲われるシーンは、何とも苦い。
今作は、ラストのジョー・コフリンが息子と映画を観に行くシーンのみが、救いとも言える作品である。>
禁酒法時代のギャング映画です 映像は美しいです ですがこの作品の結...
禁酒法時代のギャング映画です
映像は美しいです
ですがこの作品の結末には違和感を感じて
しまいました
ギャング映画らしくない結末
これはこれで良かったのかなぁ
不完全さが味わいのもと
原作はデニス・ルへインの同名小説。
チーム「We love Boston!」による映画制作、という趣なのかもしれない。
観る前は気にもとめていなかったのだが、彼が原作の映画を全て観ていたことにちょっと衝撃を受けた。
私もボストンマニアなのだろうか…。
ボストンでケチな強盗稼業を営んでいたジョーがマフィアとしてのしあがっていく話であると同時に、険しくも厳しい愛に翻弄される話でもある。
「夜に生きる」のジョーは戦地で心に傷を負ったことにより、自分の生きる指針を決めている。
「誰かの決定に従って、望んでもいないことをやって、それで苦しむのはゴメンだ。自分は自分のルールで決める」
その決定は一見ハードボイルドでアウトローな男の生きざまなのだが、もうこれ以上傷つきたくない、という弱さでもある。
その辺が、なんかこう、女心にグッとくるのか、危ない男なのに女性たちはみんなジョーに甘い。「悪い男だけど、好い人」みたいな評価であっという間にラブラブ。
禁酒法時代のアメリカで、宗教や人種の対立も色濃い中、世間のしがらみや常識にとらわれず、自分のルールだけを胸に生きているジョー。
夜に生きるからこそ自由で、夜に生きるからこそ非常な対価を支払う。
日のあたる世界で地道に結果を出した兄との対比が、ジョーの人生の影を際立たせ、そこがとても味わい深い。
私はアウトローな男はあんまり好みじゃないが、ジョーなりにベストを尽くそうという姿勢はなんだか愛しい。
多分、今回制作に名を連ねてるレオ様とかも含め、お気楽ハッピーエンドとはほど遠い「デニスワールド」には映画関係者を魅了する「ひと味違う」感があるんだろう。
何だかんだで全作品観ているあたり、私もその「ひと味違う」感を求めているのだと思う。
昼に生きる者も、夜に生きる者も、痛みとともにある。
どちらを選んでも不完全、だがそこが良い。
ロストジェネレーションって事でしょ。
『あなたの世界では暴力は終わらない』
『今、ここが天国』
つまり、天国は今も暴力は終わらない。そんな世界にみんな住んている。
自由と民主主義の国アメリカは、色々な搾取で大きくなったって事か。ヨーロッパでは、このあと自由は奪われ、ナチスが台頭する。つまり、本当の暴力は、ここから始まり、ナチスは無くなったようだが、暴力は今でも続く。
生きぬく事は天国にいる事だが、同時に地獄の悪夢は続くって事か。
ヘミングウェイ等の『失われた世代』とつながる怠惰な考え方なので、面白いが評価出来ない。大変に残念だ。
タイトルなし
ラスト、ギャングを引退して妻子と幸せに暮らすベン・アフレックだが、クリス・クーパー演じる元警察官に乱射され、妻が死ぬ。夜に生きるのタイトルの意味がわからないけど、ギャングはギャングということ。
ブレンダン・グリーソン祭りー
ここでは厳格な警察官の父ちゃん役。好感の持てない人物だが、この父親との関係がメインの筋かと思ったら…。
役の上でもアイリッシュだと明言されている役が多い気がするが、アイリッシュとはっきりわかるような特徴があるのだろうか。
ルヘインの原作は未読。正直なところ、出所するまでの父親との関係をもっとじっくり描いて欲しかったが。
ベン・アフレックによる語りで進むハードボイルド風作品でもあり、一味違ったギャング映画だった。
簡単には説明できないくらい、人種問題、政治問題が絡んでいて、最初はアイルランド系とイタリア系マフィアの対立というお馴染みの構図から始まり、ベン・アフレック演ずる主人公のジョー・コフリンが父親(ブレンダン・グリーソン)が警察幹部であることから、なんとかマフィアの傘下ではない少人数の強盗グループで生きてこられた。しかも、アイルランド系ギャングのボス・ホワイト(ロバート・グレニスター)の情婦エマ(シエナ・ミラー)と愛し合っているという、一歩間違えれば即暗殺という立場にあった。やがて、ジョー自身はアイルランド系であるものの、愛人関係を嗅ぎつけたイタリア系マフィアのマッソ・ペスカトーレ(レモ・ジローネ)に誘われることになる。そして、情婦エマは自動車事故で死亡・・・
失意のもと、ホワイトに対する復讐心のみでペスカトーレの部下となり、中西部に逃げたホワイトを追うように、フロリダ州タンパを任されることになったジョー。禁酒法時代、密造酒で瞬く間にのし上がっていったジョーだったが、そこでは警察署のフィギス本部長(クリス・クーパー)との密約があったからだ。ボストンでは父親の庇護のもとで刑も軽くなったし、今度は汚職警官かよ・・・といった感じで、とにかく悪はこうして蔓延っていく光景を見せつけられる。
タンパでは仕事仲間であったグラシエラ(ゾーイ・サルダナ)と恋愛関係になったジョー。アイリッシュと黒人という組み合わせも人種問題を打ち破る自由人ぶりだったが、ここでは対立するマフィアもいなくなり、KKKが彼らの行く手を阻むのだった。KKKの白人至上主義はマフィアよりも怖いことを見せつける。ジョーたちが経営するレストランでも平気で銃を乱射し、爆破もする。仕切っているRDという男と交渉しようにも埒が明かない。何しろRDはフィギスの義理の弟だったのだから・・・
そんな困難を打破できたのはフィギスの娘ロレッタ(エル・ファニング)がカリフォルニアで薬物中毒になっていた写真を入手したからだ。なんとかカジノを建設できるようKKKに一撃を与えたのだが、彼女が更生してキリスト教に盲信して聖母のような存在となり、カジノ建設をも思いとどまらせることになる。彼女を殺せば上手くことが運んだだろうにと、やがてボスのペスカトーレが乗り込んでくる・・・
ギャング映画というより、人種問題をテーマにしたジョーの半生といった作品(ただし、ジョー自身は人種のことに無頓着)。タンパの地下通路や脚本家であるジョーの兄なんて伏線もしっかり回収し、冷酷な裏社会の中にあっても愛を貫く男が描かれていた。汚いことは相棒のディオン(クリス・メッシーナ)に任せきりで、人殺しが嫌いだという設定も面白い。最後の映画館ではヒトラーも登場してくるが、第二次大戦までは予測できてなかったんだなぁ。そして、今や日本もギャングが絡んでるカジノを建設できる国になったんだという嘆かわしさ・・・
親と子と、悪と善と
デニス・ルヘインの「運命の日」に続くコグリン家の話。
「運命の日」の映画化をずっと希求するも大作過ぎるからなのか映像化はされず、息子の話の方が映画化された。こちらの原作は積読なのだが、映画はしっかりと楽しめた。
相変わらず登場人物が多く、さらに「皆まで言うな的」な場面転換が続くためで頭の中を整理しながら観ることに。
自由は誰にでもあるが、皆が自由を目指すと悪に、自らの自由を他者のために制約する時は善に、という相反する理不尽さが根底に流れ、それを象徴するような形で物語が進んでいく。
おそらく原作には映画の尺で描ききれない重厚な設定や語り口が満ち満ちていると思われるので本棚から探し出してみよう。
ベンアフレック、昔はスリムだったけど、体型はすっかりオッサンになってしまって、それが気になってやや集中を欠くかな…
淡々と話が進むギャング映画
主人公のギャング半生物語。
前半は「内容薄いのかな〜」と心配してましたが、主人公がボストンに渡って活動する位から面白くなりました。
ギャングものですが、凄い銃撃戦がある訳ではありません。人間ドラマに重点を置いてます。
アメリカの時代(移民者、禁酒法、KKK)も楽しませてくれるので歴史勉強にもなります。
(ボリュームある題材の割には扱いはあっさりしてますが)
普通に面白かったですよ。
奇をてらわずクラシカルで美しい
原作を読んでみたくなった。地味ではあるものの画になるし格式を感じる禁酒法時代のギャングモノ。すぐぶっ放さずでもクライマックスでトンプソン撃ちまくる爽快感。
エンディングテーマもあってる。
タンパ、マイアミの川、海、橋の景色が美しい。
最後のシエナミラーのクズっぷりが見もの。イギリスのドーチェスターってそんなに底辺の街なのか。
ゾーイサルダナは相変わらず細い、細過ぎ。
ブレンダングリーソンの親父っぷりがいい。
エル・ファニングも魅せる。
ポスターのシーンがクライマックスとは。
母を失う男家族三代記。
第一次世界大戦に行って誰の命令にも従うのをやめたアウトローの物語。
なるべく人は殺さず正直に夜に生きる。
夜への憧憬
愛国心、正義、平等、公正、常識、モラル等は、反する事は許されず、守る事が義務となる。また、組織に所属していれば、これらの義務は自分では決められず、指図に従うが、その指図が必ず正しいとも限らない。これらの義務を無視して自分のルールを決める、反社会的サイコパスは願い下げだ。だが、自己都合を優先して夜に生きる。男にはそんな願望がある。
現実味のあるギャング映画
アクションが比較的に抑えられていて、人間ドラマに重点が当てられていることがとても良かった。父親との確執、マフィアの愛人との別れと再会、KKKやロリッタの宗教色、細部までいろんな現代にも通じるアメリカの社会批判が込められていて、なおかつ成功と代償、筋書きが良くできている。
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