インヒアレント・ヴァイスのレビュー・感想・評価
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スキヤキ
70年代が舞台というより、70年代の映画のような雰囲気を持った映画だった。
話のわかりにくさとか、狙ってるのかわからないコミカルなシーン、終盤繰り広げられるバイオレンスシーン、無駄なおっぱいなど、70年代探偵映画リスペクトの映画だった。
それにしても、グッドナイトムーンのジェナマローンちゃん、初めは彼女だと気づかなかったよ。
奥行きのある作品
なんせ情報量の多いことで有名なピンチョン。
マンソン・ファミリーによるポランスキー邸での無差別殺人事件。その裁判が世間を賑わせ、ヒッピーカルチャーが失速しはじめていた1970年代初頭のロサンゼルス。
マリファナ、土地開発業者、警察、サーフィン、ロックンロール、ハリウッド。そんなディテールを、原作を未読な私に、PTAは色と音楽でたっぷり観せてくれた。
どこまで現実でどこから妄想なのか、煙にまかれたようでわからない。
考えてみれば、今の情報社会そのまま。
国家の陰謀や謎は、現実なのか妄想なのか、疑心暗鬼になるだけ。
水と熱湯を混ぜたらぬるま湯になるけれど、ぬるま湯を水と熱湯には戻せない。
この世界の秩序も、一度崩壊したら元には戻せない。
では無秩序が突然現れたのかというと、そうではなくて、原題の「内在する欠陥」が言う通り、秩序が保たれている頃から内在されているのだ。
ぜんぜんわからん!
探偵のところに元カノがやってきて依頼して、それでなんか解決したようなしないような。ストーリーのほんとの大枠は解るんだけど、ちょっと細かなところは全然解かんない。
でもフィリップ・マーロウやスペンサー・シリーズってこんな感じだったなあと思って、楽しく観れたよ。
主人公のヒッピー探偵の俳優さんすごく魅力的だった。元カノも顔と身体がもうパーフェクト。
細かなエピソードは「どういうことなの?」と解らないんだけど、二時間半楽しめるしいいかな。
期待したほどではなかったかな
アンダーソン監督だから期待して見にいきましたが、それほどおもしろくなかったです。ジョシュ・ブローニンが日本料理屋でパンケーキ頼むシーンが一番よかったくらい。またストーリーには全く関係なかったけど。
ただピンチョンの原作を読んでみたいなあ、とは思いました。
ピンチョンは難しい
製作発表の時にはとんでもなくワクワクしたPTA×ピンチョンだったが、やはりピンチョンを映画化というのは難しい。アイテムが多いから。せっかくの映画なので、もっとワンダーとグルーヴが観たかった。PTAの若き日にチャレンジしてたらまた違っただろうな。若き日のクストリッツァみたいな人がやってもよかったかな。
とは言え、パーツは面白いが。
タマゴは壊れやすい
探偵の物語。
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探偵で真っ先に浮かんでくるのが、チャンドラーのフィリップ・マーロウ。
この映画、冒頭の「暗闇から現れる女」や、「洋上に浮かぶ船」、そして何より「死んだはずの男」が出てくるあたりが、完全にマーロウの世界で、ファンとしては、グハっとなる。うわ、タマランと悶えっぱなし。最後のケツの持ち方もマーロウ。この映画が「第3のマーロウ」と言われているのも分かる気がする。
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壊れた街を壊れた男が彷徨うのがノワール。
壊れた街を壊れない男が彷徨うのがハードボイルド。
(by滝本誠氏)
だとすると、マーロウは、壊れそうで決して壊れない探偵。
そんなイメージを私は勝手だが持ち続つけてきた。
何度も映画化されているが、
ハンフリー・ボガート版は、シュっとしすぎていて「壊れそう」な感じがしない。めっちゃカッコいいしハードボイルドに違いないんだけど、私の思うマーロウではない気がする。(ボギーファンの方、こんなこと書いてほんと申し訳ありません。)
アルトマン版は「壊れそう」な危うさがイメージ通り。だけども肝心の主役のオーラが無さすぎて、個人的には残念な気もする。
一番好きなロバート・ミッチャム版は、LOVE & HATEのどちらに転ぶかわからないミッチャムの幅がまさにマーロウなんだが、その他の演出がどうにもこうにも古臭い気がする。
マーロウ映画に対し千々に乱れる思いを抱いてきたわけだが、いやはや今回の『インヒアレント・ヴァイス』、「壊れそうで決して壊れない男」に、ホアキンがぴったりとマッチしており、これぞ、マーロウと思ったりもする。(個人的な妄想で盛りあがった上での感想なので、こんなのマーロウじゃないと思うファンの方もいるかと思う。すみません。冷静に観ればちょっとダラダラしすぎとも思う。)
原作ピンチョンがどこまでマーロウを意識したかは謎(他の要素も入れてある)。PTA監督はアルトマン版の雰囲気を結構意識したのではないかと思う。
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ストーリー自体は、起承転結もあり意外に普通の探偵ものになっていたような気がする。人種間の攻防、土地を巡るエスタブリッシュVS新興の対立、警察司法の陰謀めいた動きなど、チャンドラーというよりもエルロイのLA4部作、アメリカ3部作のパロディっぽい気もするが。
ストーリー自体は普通だがそこに象徴されるもの。
古き良きアメリカの番犬的な刑事(アメリカ50年代の象徴)。
LOVE & PEACEな雰囲気の元彼女(60〜70年代の象徴)。
流され続けて今自分がどこに居るかわからない「死んだはずの男」(戦後アメリカそのもの)。
彼らが壊れた様を、映画は描いている。
彼らを壊したのは誰なのか。
ニクソン&レーガンな保守(80年代)なのか。
いや、そうではなく、そもそもが壊れやすい性質だったのだ。
誰のせいでもなく、自ら壊れていったのだ。
60〜70年代の、LOVE & PEACE、フリーダム、ヒッピー。
それらは、誰かが需要と供給をコントロールして生み出したものに過ぎず、ほんとのフリーダムなんて無かった。最初から壊れていた。
70年代へのノスタルジーがこの映画の主眼ではなく、憧れるべき70年代は最初から壊れていたのだという冷静な見解。
インヒアレント・ヴァイス…固有の瑕疵(タマゴが壊れやすいという性質は誰にも変えられないし保証補填できない)。
この映画は、アメリカの「固有の瑕疵」の物語なんだろうと思う。
壊れゆく刑事も元彼女も、探偵は助けられない。
この映画の探偵は、壊れない「強さ」よりも、周りが壊れゆく様を見届けなければならない「悲しさ」が勝っている。そこがマーロウとの共通点なのかなと思う。
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ラスト、探偵は「死んだはずの男」を、全てを引き換えに助ける。
なぜか。「男は死んでない」と頑なに信じる妻(名前はホープ)がいたからだ。探偵は「希望」を壊したくなかった。
明るいラストなのかもしれない。
でも、探偵が助けたことで、より壊れてしまったジャンキーの家出娘も映画に出てきており、一筋縄ではいかないなあとも思う。
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追記:
雰囲気やストーリーは全く違うが、この映画と『グランド・ブダペスト・ホテル』の主題は同じだと思う。
『グランド〜』は戦前の古き良き時代へのノスタルジーだけではなく、それらが壊れていく「終りのはじまり」を描いていた。
この映画も同じで、70年代の「終りのはじまり」を描いているんだろうなと思う。
この「終りのはじまり」路線は、『ジャッキー・コーガン』(リーマンショックなどの問題は今に始まったことではなく、1810年代から始まっているんだ云々)など、他にもいっぱいあって、アメリカの文化人の人はこういうのが好きなんだなあと思う。
雰囲気素晴らしい
ピンチョンらしく人物相関が込み入っていて途中から脱落したが、音楽、衣装、演出などなど雰囲気は素晴らしかった。小説は未読だけど、ピンチョン小説に頻出する分かる人には分かるネタみたいなものも所々含まれていた気がする。ストーリー的には探偵なり何なりが事件を追っていくうちに自分が巻き込まれていくという競売ナンバー49の叫び(これは読んだ)に近くピンチョンとしては読みやすい部類に入るものだと思う。エンドロールで知った、音楽はまさかのジョニー・グリーンウッドであった。ニール・ヤングの曲もHarvestに加えJourney Through the Pastという激レア音源が使われていてこれだけでもかなりすごい。ピンチョンがカメオ出演しているらしいが、そもそも今のピンチョンの顔を知らないので分かるはずもなかった。全体感としてはアメリカン・ハッスル思い出したので、スティーリー・ダンのダーティー・ワーク聴きながら帰った。
ついていけず。
アタマと中盤睡魔に勝てず、ガッツリ寝てしまいました。
人物の関係性をつかめないまま、ポカーン、という感想以外述べることができません。
やりとりにクスッとはしましたが。
原作者の本自体読んだことないけれど、難解らしい、という噂だけは聞いたような。
今回はご縁がなかったようですが、著書は読んでみようかな、と思いました。
…って観た人は、皆理解できているのでしょうか?レビューまだ読んでいないのでドキドキだなー。
探偵物語といいロンググッドバイといい探偵ってなんか良いよね。分から...
探偵物語といいロンググッドバイといい探偵ってなんか良いよね。分からないなりに進むと何かしら道が開けるのも観ていて気持ちいいし。
監督で観るなら最高!作品で観るならもう一歩!涙
さすがPTアンダーソン!と唸らずにはいられないさすがの一本。
演出も、ホアキンの演技も、そして何より音楽がキレッキレ!
時代の空気感とかも非常に心地よかったし、いきなりぶっ込まれる笑いも意地悪で素晴らしかった!
然し乍ら…
監督、貴方が凄いのは十二分に分かってるから…
「探偵モノ」としての文法はキッチリ押さえて欲しかった!涙
関係人物が多すぎるのに、交通整理がとにかく少なく。
「ん?!誰だお前さん?」なんて思うことしばしば…
頼りになる映画通の友人は、「コレは考えたらいけない部類の映画です!」とオトナな意見だったけど…
やっぱり「探偵モノ」に関して譲れないのは、自分のチャイルディッシュさが克服出来ないからだろうか。
凄い監督だからこそ、定石のパターンを真っ向からどう料理するかが楽しみだし…
「側面を突く!」で、それだけでラストまで行かれると淋しくなるんだよね。
ともあれ。
2度観は必須、出来れば映画偏差値の高い同性の友人と観るべき一筋縄ならぬ作品。
70年代ってこんな感じ?
70年代のアメリカってこんな感じだったんだ。と映画を見て率直な感想。
ストーリーがよく分からず、探偵ものですがいろんな案件がどんどん出てくる感じで話が進むにつれ理解されました。でも、十分消化されてませんが。(笑)
ラリーとビッグフットのコンビは上手いコンビではないですが、魅力があります。
昔のアメリカってドラッグがこんなに日常的にあるんだと驚きです。
よくわからない
登場人物の関係性が後からわかってくるので、よくわからないままストーリーが進み疲れます。
隠語や時代背景を知らないと、ストーリーも理解できませんでした。
ヒッピーっぽい独特の空気感は好きです。
下ネタや女性の全裸も出てくるので、一緒に観る人は選んだほうがいいかな。
なんと言っても奇妙な登場人物と舞台、軽妙な会話の魅力ですよね。ギッ...
なんと言っても奇妙な登場人物と舞台、軽妙な会話の魅力ですよね。ギッチリ作り込まれた映画ですが、グランド・ブダペスト・ホテルなどとはまるで逆の方向性。私はこちらの方がずっと好みです。まさに"wierd"としか言いようのない魅力ですね。
ホアキン・フェニックスも、ジョシュ・ブローリンも最高!苦手なリース・ウィザースプーンもこの役は良かった。
ただ、分かりづらいストーリーはまだ消化できません…
まどろみ
ドラッグにどっぷりハマった人達の中でドラッグにどっぷりハマッた探偵がだまされる話し。
大した展開もなく長々とたらたらと…半分以上がワンショットアップで長い能書きorツーショットアップで長いやり取り。
「間」は嫌いじゃないけど、ワンパターンでどんどん眠くなる。ところどころ差し込まれる小笑いで何とか最後まで耐えられたけど、何とも中途半端で退屈な2時間半だった
70年代のアメリカ感?こんな世界な訳ない。
探偵もの。
ポール・トーマス・アンダーソンは好きな映画作家のひとりだ。
「ブギーナイツ」や「マグノリア」には心底うなったし、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の骨太なドラマにも感心した。
一方、「パンチドランク・ラブ」や「ザ・マスター」は巷間言われるほど響かなかった。
そして、本作。
探偵が依頼を受けていろいろ調べて、時には冒険めいたこともして、真相にたどり着く。
もちろん、こういうステレオタイプな展開を期待していたわけではないが、あまりにも外しすぎではないか。
探偵ドック(ホアキン・フェニックス)と警察官ビックフット(ジョシュ・ブローリン)のコンビは映画史に残る名コンビだったとは思うが、彼らがどれだけストーリーに貢献していたというのだろうか。
トマス・ピンチョンという作家についてはまったく知らない。だから、本作が原作に対してどういうスタンスになっているのかまるでわからない。
もし、原作のテイストがうまく映像に移し変えられていれば、高い評価が得られるだろう。
1970年のアメリカを肌で知っていないと、実のところ楽しめないのではないか。そんな気がする。
さすがの表現力
トマス・ピンチョンの原作小説(邦題は『LAヴァイス』)を少し読んで、ピンとこなくて止めてた。僕が活字から読み取ることのできなかったものの正体、70年代のLA社会の空気感がカメラからビシビシ入ってきた。これこそ映画の醍醐味だな。
チャールズ・マンソン事件の爪痕をヒリヒリと感じる。麻薬を中心に不動産王、麻薬カルテル、弁護士、医者、大病院、警察、FBI、アウトロー、ネオナチ、ヒッピーが絡み合い、争い、もたれ合う。どうしようもない閉塞感と、滑稽で切ない人間ドラマ。PTAに感謝して、本の続きを読んでみよう。
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