劇場公開日 2014年12月12日

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「未知の恐怖感との、新たな出会い」ゴーン・ガール エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0未知の恐怖感との、新たな出会い

2015年1月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

最初のテロップから、もう操作されてしまっていた。二時間強、その支配下から一歩たりとも出られなかった。

映画の客はふだん観ながらも批評しているはずだが、
私はしかしどう捉えたらいいのか分からず、あたふた、
不可解なまま、
どんどん進んで行った。展開、だなんていう観念すら忘れて、どんどんどんどんのめり込んだ。どんどんどんどん。

これぞ、芸術の、いや、映画の醍醐味。
安全ベルトのないジェットコースターに乗って、めくるめく虹色の暗闇の渦を、きりきり舞い、目を閉じることすら許されず、強制的に突っ込んでいく。

「あ、これか」と知っているものが、一切なかった。
知っているものが来たら、避けられるのだ。
知らない、どういう軌道でこちらに来るのか、分からない。避けようがない。避けてみたところで、しかし何もなく、ホッと一息ついたところ、タイミング外されて、一撃を喰らうといった、サスペンドされる悦楽。サスペンドされた私は、滅多打ちを覚悟しつつも、そんな野暮はなく、びしり、びしりと、知らない感覚の箇所を打たれ、官能の権化となった。

と、まあ、興奮した。

しかし、観て一時間後、
ただ恐怖映画の手法に則ったチープな演出があるような気もするし、
何もそこまでしなくても……、というような疑念も出てきた。

すなわち、完璧な映画ではない。
だが、それがどうした。観ている私の興奮は事実だった。

未知の感覚との遭遇をありがたく思う。

エイブル