「大人向け『アナと雪の女王』」ゴーン・ガール ko_itiさんの映画レビュー(感想・評価)
大人向け『アナと雪の女王』
原作は未読です。
むかし、ネットで見た、あるゲームソフトのヒロインが想像どおりではなかったためにソフトを粉々にしてメーカーに送り返した男がいたが、映画でのエイミーも同じメンタリティだ。「理想でなかったから破壊して捨てる」離婚や殺人ではなく、まさしく“破壊して捨てる!”
さらにエイミーの性格をややこしくしているのは表向きは他人から良く見られたいという強い欲求である。(おそらくは厳格な母親の影響)この二つをふまえないと終盤の展開は理解しがたいかもしれない。
理想的だったものが長い間に付き合うようになって理想がただのメッキであると気づかされることは現実でもよくあることだ「なんで、こんなものに夢中になっていたんだろうかと」
ようするに今作はサイコロジカルスリラーと銘打ってはいるが本質は倦怠期の夫婦の物語である。
また視点を変えれば「浮気した夫にしっぺ返しで狂言をしたけど、思いのほか大事になってさぁ大変、どうしよう?」というドタバタコメディによくありがちな展開なのだ。
つまり、過去のドラマで数多くつくられたテーマである。ただ、今作ではっきりしているのは今まではそういった解決という苦い味を飲むのは女性か、または男女で半々だったのに対して飲まされるのは男性だけ。しかも、いやおうもなしにゴクゴクと飲まされる。と、いったところか。
窮地に陥ったエイミーが逃げ込んだ元恋人も“理想”を抱き続いている男性である。その逃げ込んだ先でテレビでのニックの姿を観たとき表向きの立場を守ったままで「ありのまま」いられる場所をみつけだした。ニックの前ではエイミーは手袋を脱いだエルサでいられる訳だ。元恋人を殺してでも……
結局はこれはハッピーエンドなのだ。女性にとっては。男性は不満だろうけど。やはりめでたしめでたし。