「あなたは心配しなくていい」ゴーン・ガール しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
あなたは心配しなくていい
この映画を見て、「男は震える」とか「女のこわさ」とかのたまう御仁がいらっしゃるようだが、全く心配しなくていい。
本作は
「あなたの人生にはまず起こりようがないファンタジー」
だからだ。
あなたはベン・アフレックではないし、あなたの隣にいやいや寝ている生き物や空想の嫁は、ロザムンド・パイクではないからだ。
本作は、「惚れたモン負け」を描いた作品。
ニックに惚れてしまったエイミーのもがきあがいたお話。主人公はニックでなく、エイミー。
ニックを演じたベン・アフレックの説得力がすさまじい。
華々しい脚本家としてスタートし、華やかな役者人生、セクスイーアクターとしての地位を確立したかと思えば、公私混合のデレデレから一気に転落、そこからの監督としての奮起、今では、ケツ顎とは呼ぶに呼べない映画人でもある。
本作でもケツ顎を隠してエセ誠意を見せる男前を演じる。
ニックは売れっ子美人ライターをたらしこんで妻にし、もともと才能のなかったライター職から退き、妻の名義で田舎に家を持ち、20代前半の学生を愛人にし、妹とも怪しい関係を見せる。女刑事にも、本当にぎりぎりまで心情的に味方になってもらえている。
世の中、惚れたモン負け、だから、周りの女は結局ニックの言うとおりに動く。
君にできるかい?無理だろう?だから君の話ではないし、震えるだけ無駄なのだよ。勘違いもはなはだしい。
そんなニックにエイミーは全身全霊でニックに対抗するしかないのだ。しかしその時点でエイミーはエイミーたるアイデンティティを失っていることに気付かないといけない。
それを象徴しているのが、エイミーのニックへの復讐計画。
謎解きや根回し、下ごしらえなど、冷静に考えれば、実に「くだらない」、「ガール」なイタズラ。
潜伏ライフもみるも無残だ。自分で顔を傷つけ、顔を隠すことに無心するが、バレバレで、金もぶんどられる。負の精神を引きずっているのだ。当たり前の話だ。
しかし、エイミーは高校時代のストーカーに再会することで、「惚れ「られたもん」勝ち」のポジションを得る。
その取り戻した美しさを見よ。ここの経緯に本作の魅力が凝縮されている。
ところが、エイミーはニックのTVインタビューの達者な演技をみて。。。
血みどろの再会がなんとも妖艶だが、ニックの第一声は耳元で
「F**k you,Bitch」
どこまでもニックは強い。
「どうにかしてえへ、きみのなか、ああ、はいいっていいてえ」
とはB’zの名曲だが、本作はめんどくせえから、脳みそ見せろや、という。
ここで終わってればいいものを、後半の蛇足感がはなはだしく、そこは大きくマイナス。
追記
「gone girl」
「gone」
失踪した、死んだ、逝っちまった、そして、「自己を見失った」。
「girl」
「自己を見失った、恋まっしぐらお嬢ちゃん」といったところだろうか
猫まっしぐらなカリカリも出るよ!