「名作『サイコ』が霞んだよ…。」ゴーン・ガール 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)
名作『サイコ』が霞んだよ…。
前半、見てて眠くなって、期待外れだって思ってたのに、完走した後そんな印象、チリもないほど粉々にされた…。ヒッチコックの名作『サイコ』が見終わった後脳裏をよぎって、それを越える戦慄が頭を上書きしていったし…。
最早サイコパスどころじゃ括れない、エイミーがとにかく恐ろしかった…。ただあれって社会病質的な人物ってことじゃないんだろうね…。「完璧なエイミー」があるように、エイミーの目的は理想の生活で、ニックは彼女が探し求めてた、ディズニーで言うなら「白馬の王子様」。それを実体にするために、周辺状況をコントロール、挙げ句警察は利用されて、判明したときの敗北感。警察のコンビがしてやられる展開を見ていたときは求めてたのに、終わった後に現れたのは憐れになるほど無様な姿で、同情すらしていたほど…。爽快な流れは全くなかった…。
『007』のボンドガールで初めて見た以来のロザムンド・パイクは、もう表現不能だった…。どんな演技プランがあれば、エイミーをここまで実体に出来たのか、それすら想像できなかった…。しかも悪役のカテゴリーじゃなくて、どっち側か分からない役…。前評判に偽りが、一つも最後まで見つけられなかった…。
でもそれと同じくらい驚いたのが、作品がエイミーの独壇場じゃなかったこと。その大きな理由の一つは、ニックが持ってる数パターンの「顔」を、最後まで出し続けたベン・アフレック。この間見た『ランナー、ランナー』もかなり強烈な演技だったけど、今回演じてる男性ニックはその何倍も上いってた。人当たりの良い顔、被害者の顔、浮気をしている時の顔、過ちを認める時の顔と、エイミーのインパクトが大きすぎるけど、それを真っ向から受け止めて、さらけ出してる演技見てて、結構戦慄込みだけど、共感すら感じてたよ。最初はディカプリオの『レボリューショナリー・ロード』みたいな役なのかなって思ったら、全然違うから驚いた…。でもホッとする役だったよ。表現不能は一人で良いから…。
あと今回タイラー・ペリーの演技、初めて見たけどホッとした。それは前述のニックと同じで、表現不能じゃない側だから。しかもキリキリくるような展開の中で、貴重すぎる笑いの成分。コメディアンのこの人が、本当いなかったらグッタリだった…。それにしても女刑事が『インビジブル』の人だったとは。
もうとにかく疲れたけど、フィンチャー監督恐るべしだね…。『ゾディアック』と『ベンジャミン・バトン』から外れを聞かなくなったけど、これ見て余計にそう思ったよ。監督、ここでも外れナシだから。
昨日ナルトの映画見て、余韻に浸ってた数時間が、この映画を見たおかげであっという間にぶち壊された(苦笑)でも凄い映画を見たっていうのは、書いてる今でもそう感じるよ。結婚生活は甘くないって、教訓も得られたわけだしね(苦笑)これ見たら、したくなくなる気が…。