劇場公開日 2014年9月6日

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フライト・ゲーム : 映画評論・批評

2014年9月2日更新

2014年9月6日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

遥か上空の密室型アクションは抑え難いアドレナリンでいっぱい

リーアム・ニーソンといえば、劇中の役柄で抜群の指導力や統率力を発揮する俳優だ。口数が多い方ではない。どちらかというと背中で語るタイプ。その190センチ近い身体にはピンチになれば必ずなんとかしてくれるという信頼感のオーラがにじみ出ている。

一方、ジャウム・コレット=セラ監督はその定番ともいうべきリーアム像に変化球を加えるのが巧い。初タッグ作「アンノウン」でも全身“説得力”のカタマリとも言うべきニーソンにあえて“揺らぎ”を与え、より強力な旨味を引き出したのが記憶に新しい。

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そんな2人が再度組んだ本作は、ほぼ全編にわたって旅客機内で話が進行する密室アクションに仕上がった。主人公は航空保安官。乗客に紛れて機内の細部に目を光らせるのが仕事だ。そんな彼の携帯端末に「1億5千万ドル用意しろ。さもなくば20分おきに乗客が死ぬ」という脅迫メールが届いたことから、事態は急展開を迎えていく。

異変を察知した途端、ニーソンは眉間にシワを寄せ仕事人の顔つきに変わる。さっそく機内での犯人探しに奮闘する彼。だがセラ監督は今回も彼に完全無欠とは程遠い“揺らぎ”の衣を着せるのを忘れない。冒頭には我慢できずアルコールをあおるシーンを挿入し、時折浮かべる虚ろな表情は何かしらの過去を引きずっている様子さえ伺わせる。そして、この映画のトリッキーなところは、主人公が犯人である可能性を決して否定しない部分にある。

そうしている間にも20分おきに誰かが死ぬ。そのサスペンス性の波が密室空間に言い知れぬ緊張感をみなぎらせ、なおかつ往年の航空アクションが持っていたスペクタクル性をも十二分に踏襲する本作。だが、最終的にはやはりその全てを「リーアム・ニーソン」という要素が遥かに凌駕(りょうが)してかっさらってしまうのが何ともニクい。もはや彼そのものがひとつのジャンル。揺らぎながらも歩を止めないニーソンのあらゆる表情、身のこなし、人間的な魅力が炸裂した、原題どおり“NON-STOP”な107分なのである。

牛津厚信

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