「語りつくせる人生など」ある過去の行方 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
語りつくせる人生など
クリックして本文を読む
新しいパートナーとの、新しい人生を始めようとするが、一方の妻の自殺未遂の原因を巡って、二つの家族の中で交わされる会話からは思いもよらない過去や本心をあぶり出していく。
面白いのは、登場人物たちが皆、移民やその子供たちなのに、フランス語を話しているということ。母国語ではないからぎこちない会話なのか、それともお互いの本心を語ることを避けているからそうなのか。
主人公の新しいパートナーには、自殺未遂で植物状態になってしまった妻がいる。物語が進むにつれ、彼のその妻に対する思いは明らかになっていく。
これとは対照的に、腕をけがした理由や、元夫を家に泊める真意が最後まではっきりしない主人公。
このコントラスを強調するラスト。
それは、家族の再生とか、人生の再出発といった甘ったるい家族の希望を描いているのではない。人は、語るべきものを失ってしまってもなお、または、本当に語るべきものにはついぞ言及することがなくても、残りの人生を生きていかなければならないという、苦い事実を描いている。
コメントする