ファーナス 訣別の朝のレビュー・感想・評価
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ザ・変態祭り、にならなかったから、ではない。
この役者陣を見るとわかるが、まあ、揃いも揃って個性派、というかみんなかつて変態を演じている。
一切の情報を仕入れず、鑑賞に臨んでるんだから、変態祭りをこの面子では期待してしまうのは仕方がない。
オープニング早々、ハレルソンのとんでもないくそ野郎ぶりを見せつけられ、こりゃ、すげえ映画になるな、といきなり心、鷲掴みされる。
なんてったって、ベール、アフレック、デフォー、ウィテカー、変態カルテットが控えているのである。期待値はそりゃあ、MAX。
ベール演じる主人公は、これが、まあ、家族思いのよき兄貴なのだ。ある事故を境にこいつの人生が変動する。
まあ、主人公だし、こいつに変態は求めてはだめなんだろう、と次にアフレックの登場を待つ。
アフレック演じる弟は待ってましたの、バカ。こいつが期待通りに、悪いやつではないんだけど、バカ。
こないだの「そこのみにて光輝く」のバカとまったくおんなじ思考回路。模範的なバカ登場で、こいつが主人公を振り回す。
こいつを飼っているのが、高橋和也、じゃなくって、デフォー。
ところが、このデフォー、町の有力者で、アフレックを飼い殺しをしているのだが、自分以上の変態を恐れているのである。
そう、それこそがハレルソン。
全世界注目の変態役者両雄の激突が始まるのである。
とは、実はならないのである。
もう、この時点でこの映画の見所は皆無。
オープニング5分で燃え上がった熱気は、一気に冷めていくばかりなのである。開始5分でOut of the Furnace、とある意味原題を地で行ってしまっている。
この後の主人公の行動は、ほとんどめちゃくちゃ。そもそも、この主人公の背景が実は結構描かれていない。
敵のアジトになぜか乗り込むし、なぜか、おじさん同行だし、最後の対決の舞台も、関係ない人物が巻き添えになってるし、とまあ、そういう意味では支離滅裂な変態っぷりを見せてくれはする。
この映画、「ディア・ハンター」に似ているとあちこちで聞くが、変態役者が多数出ている、という点では似ているかもしれない。
ラストはパールジャムの「リリース」。
ラストの主人公の行動ははっきり言って説得力ゼロ。うーん、間違いなく身柄はその真逆なんだが、なぜかヒーロー然としているのである。
おっとウィテカー。「黒い天使で、悪魔」と呼ばれた男(しんさん調べ)
ウィテカーはここで、バシっと決めてこそ、なんだが、あれー、そうなんですか。そういや「黒い端役」というのもあったな。(しんざん調べ)
やばいな、これ。俺の今年のワーストかも。それは決して、ザ・変態祭り、にならなかったから、ではない。
【貧乏白人がもっと貧乏白人と殺し合いを演じる救いの無さ】
兄、ラッセル・ベイズ(クリスチャン・ベール)はペンシルベニア州北ブラドックの製鉄所で働くプア・ホワイト。飲酒運転→死亡事故→刑務所→父との死別と、トントン拍子に転げ落ちていきます。愛していた黒人の彼女はムショに入っていた間に黒人男に奪われ、白人である彼の立ち位置はもはや黒人以下のようです。
弟、ロドニー・ベイズ(ケイシー・アフレック)は繊細な心を持つイラク帰還兵。兄が止めるのも聞かず、彼は自ら暴力の中に身を置き、身を滅ぼしていきます。悲惨な戦争体験によるPTSDを引きずっていることがセリフで説明されますが、もう少し丁寧かつ繊細に描写して欲しいところでした。ただの乱暴者ではなく、もっと彼の内面にスポットを当てた方が、映画の深みが増したのでは。
この二人の兄弟の暮らしぶりには、なんの希望も見いだせません。中国製の安い鉄鋼のせいでもうすぐ製鉄所も閉鎖されちゃうとのことで、なんとも重苦しい閉塞感が漂います。おそらく現実にこんな貧乏白人はどんどん増え続けているのでしょう。ガソリン車、タトゥー、ケンカ、ギャンブル、アルコール、鹿狩り…。生活全般があまりにも時代遅れ。価値観があまりにも古臭い。過剰な男性性ばかりが目につきます。彼らの貧困は経済ばかりではなく、文化的な貧困も凄まじいものがあります。時代にあった新しい価値、人に喜ばれる価値を生み出すことのできない彼らには何ならできるのか。肉体労働と兵役以外に見当たりません。彼らの柔軟性のない生き方はディア・ハンターの頃から全く変化していないようです。
本作の敵役、ハーラン・デグロート(ウディ・ハレルソン)はヒルビリーのボスです。ヒルビリーとは、アパラチア山脈一帯の山地に住み着いたスコッチ・アイリッシュ系のプア・ホワイトたちのことです。“掟”が支配する前近代的かつ閉鎖的なコミュニティを形成しており、犯罪や麻薬取引に関わる者もいるらしいですが、警察や国家権力の介入もなかなかままならない地域だそうです。ハーランは人を殺すことを全く躊躇しない悪人として描写されます。彼の行動原理は利害や損得勘定よりも暴力衝動に支配されている“狂犬”あるいは“野獣”です。鹿の代わりに狩られてしまいます。
プア・ホワイトの労働者がプア・ホワイトのヒルビリーと殺し合いを演じる構図。それを富裕層のエリートたちが上から眺めて笑っているアメリカ。なんとも救いのない気分にさせられる映画でした。
現実世界ではそんなプア・ホワイトたちが最後の望みを託すトランプ&バンス。特にバンスはヒルビリー出身で初めて副大統領候補まで上り詰めた苦労人ということです。
「ヒルビリー・カルチャーに潜む最大の問題は、自分の不幸の原因は、全て社会と政府の責任だと考えていること」「テレビニュースも、政治家も信じない。よりよい生活に入るための門戸である大学は、ヒルビリーを排除する方法を講じていると信じている。そして、ほとんどのヒルビリーが、自分の人生は自分ではコントロールできないとし、自分が置かれている惨めな状況は自分以外の全ての人間のせいだと非難する」(J.D. バンス著「ヒルビリー哀歌」)
アメリカのプア・ホワイトたちのおかれた救いのない厳しい現実。この映画は観る者にそれを垣間見せてくれます。プア・ホワイトたちの最後の望みが絶たれたとき、おそらくまた血の惨劇が繰り返されることになるのでしょう。
製鉄所おじさん頑張るの巻
製鉄所おじさんが、弟のために復讐する話。
とにかく、主人公がイケメンすぎてそれだけで絵になる。キャストや、演技は申し分ない。設定も
OKだ。山の中は無法地帯というのもワクワクさせる。雰囲気もOK
しかし、すごく長い。いつ復讐はじまるの?というレベル。
結局2時間あるうちの20分程であっさり終わる。
しかも芋芋製鉄所おじさんがハンターライフル一丁で立ち向かい、無関係の人を巻き込んでゆっくりハンティング。いやいや、その近距離でなぜ走って追いかけとるん。。
うーん、なんかもっといい感じにできたんじゃないのかな。。
何もかも失った製鉄所おじさんのあまり共感できないハンティングでした。
あの距離だと、スコープの倍率高すぎるんじゃないかな
やるせなかった
殺伐とした映画が見たいと思って、以前に試写会で見ていたら途中で寝てしまっており、きちんと見返した。全編に遣る瀬無さが漂っており、どん詰まりで殺伐とした雰囲気がすごくよかった。ウディ・ハレルソンのラスボス感が素晴らしかった。あんな山暮らしでなぜ金を持っているのかと思ったらドラッグを自作していた。自宅が凄まじく荒んでいて一歩足を踏み入れたらただでは帰れない感じだった。
それにしてもなぜああいった地下格闘技で八百長する場合「負けろ」と命じるのだろう。「絶対勝て」にすればいいのにといつも思う。
訣別地獄。
タイトルの通り、溶鉱炉内で我慢させられる内容の作品。
このペンシルベニアの町のさびれ方も尋常じゃない。
どこをとっても男臭く、閉塞・重圧・忍耐に満ち溢れた映画。
それで主人公がC・ベイルだもの~。もうたまんないわ^^;
監督たっての希望通り今作の主役を見事にこなしているけど、
この人にはもう普通の役はこないだろうことをお察しします。
さて。冒頭から嫌な雰囲気だらけの鬱屈感。
W・ハレルソンが狂気の暴れん坊であることを暗示してから
ずっとその様子が変わることはない。この人、本当に殺人を
犯しそうな顔でニヤけるから怖いことこの上ない(さすがだ)
私的にはタラハシー(ゾンビランド)の印象が拭えないから、
暴れそうになったらトゥインキーやっとけ!なんて思うけど。
兄貴同様(失礼)ムニャムニャ喋りが堂に入るK・アフレック、
いいのかそんな役で?と思わせるほど脇役のF・ウィテカー、
そりゃ~俺にはこの役だろうよ!と得意満面なW・デフォー、
宇宙人も保育士もやってみせちゃうんだからZ・サルダナ、
ハイハイ、あとは僕が纏めてあげるから役のS・シェパード。
内容が陰気だろうと地味だろうと配役は超豪華、
役者の見事な勢揃いに泣かされますが、何故この作品に?
これまで真面目にギリギリの幸せを生きてきた兄が、自身が
起こした人身事故によって全てを失ってしまう。恋人も弟も
もう何もかも取り戻せなくなった彼が、精神の均衡を保とうと
努力する様子に泣かされるが、しかし一瞬の不注意によって
これだけ不幸に陥っちゃうことも暗示している(交通事故防止)
運命は残酷だ…と思うけど、観客にも重くて救いようがない。
加えて、描き方がこの上なくしつこい^^;
最後の最後まで、ネチネチクドクドと男の追跡劇が続くのは
精神にも宜しくない。早く座席と訣別したい!って思わせる
ところが、主人公が抜け出せない地獄とリンクするのかしら。
疲れている時は、さらに増すのでやめておきましょう。
(今回はアフレックとハレルソンに軍配。視線が怖かったもん)
ザ・シブい男まつり
キービジュアルとかから『ディア・ハンター』みたいだと思ってたら内容も本当に似ていてビックリ。向こうはベトナム戦争だがこっちは…というのがポイント。
出てる役者みんな渋くてイイ顔たっぷり。C・ベールは世界で一、二を争うヒゲ面が似合う役者。
強い女役が多いZ・サルタナが普通の女性を演じてるのがちょっと意外。
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