劇場公開日 2015年4月25日

  • 予告編を見る

寄生獣 完結編 : インタビュー

2015年4月25日更新
画像1

“ミギー”阿部サダヲ、山崎貴監督に直訴する実写への切なる思い

岩明均氏の伝説的漫画を映画化した、2部作の後編「寄生獣 完結編」が、4月25日に公開される。染谷将太が扮した主人公・泉新一とともに、パラサイトのミギーとして今作を支えた阿部サダヲと、メガホンをとった“ヒットメイカー”山崎貴監督に話を聞いた。(取材・文・写真/編集部)

画像2

阿部は、同2部作でミギー役のオファーを受け、本編がクランクインするよりも早い2013年11月に単独で撮入した。主人公・新一の右腕に寄生してしまったミギーに息吹を注ぎ込むべく、劇中ではCGで描かれるミギーの声にとどまらず、全身にモーションキャプチャースーツ、頭部にヘッドマウントカメラを装着するパフォーマンスキャプチャー撮影に挑んだ。

山崎監督とは、「フレンズ もののけ島のナキ」(11)でゴーヤンの声を務めて以来のタッグ。前作「寄生獣」公開前にインタビューした際、阿部は「やっぱりね、実写でも出たいですよ。実写としては出さないっていうこだわりもあるかもしれませんが(笑)。映像を見て、『いいなあ』って、役者に嫉妬しましたもん」と筆者に語っている。

このインタビューは2人の周囲に大きな反響を呼んだようで、山崎監督が「そうそう、ネットで見て衝撃を受けましたよ」と口火を切る。阿部が「いや、こんなに大きな話になるとは」と恐縮すると、山崎監督は「かみさん(佐藤嗣麻子監督)からも怒られましたよ。『出してあげなよ!』って(笑)。意地悪しているわけじゃないんだから」と爆笑する。

画像3

2人に話を聞いたのは、「寄生獣 完結編」のアフレコ収録時。約半年ぶりにミギーと“同化”した阿部は、「最初にやったときから、約1年が経つんですね」と懐かしむ。そして、「前編は新一の右手に間違って寄生しちゃったというかわいらしさがありましたけれど、後編では戦い方も変わってくる。ミギーは人間を食べず、新一の養分から摂取しているじゃないですか。だから人間っぽくなっていって、新一の感情に乗せていった方がいいのかなと思ってみたり。一方で、感情が乗らない方がミギーっぽいという人もいる。その部分は終わってみても難しいなと思いましたし、やっぱり声だけというのは難しかった」と振り返る。

昨年11月29日に封切られてから、阿部は劇場へ足を運んだという。「映画館で見ていたんですが、エンドクレジットが出てきたところで、後ろのお客さんが『阿部サダヲってどこに出ていた?』って言ったんですよ。すごくいいところにたくさん出てくるのに、『出てたっけ?』って……、ひどい(笑)。トイレに付いて行って、いろいろ聞いたりもしましたよ。『阿部サダヲ、うるせえなあ』と言っている若い人もいたんですが、これは一応、ミギーというものを気にしてくれているから嬉しかったなあ」。さらに、阿部の出演作を見ても普段は連絡してこない友人たちからは「『ミギー、良かったよ』とか、なぜか『大丈夫だよ』ってなぐさめられたり(笑)」と、メールが届いたことを明かした。

山崎監督にとっても、「寄生獣」2部作を製作するにあたって、誰がミギー役を担うかは生命線のひとつだったに違いない。「ミギーの声はいろんな解釈がありますよね。もっとドライな方がいいという人もいれば、もっと感情的な方がいいんじゃないかという人もいる。もうこれは、自分の信じた道を進むしかないですよ」。根強い人気を誇る原作の映画化だけに、ファンの思い入れもひとしお。それだけに、「『原作と声が違う』って言われたことがあって。原作には声がありませんから(笑)。その人の心の中の声とは違ったということなのでしょうね」と笑みを浮かべる。

画像4

「寄生獣」は、観客動員150万人突破のヒットを記録。人間の脳に寄生する謎の寄生生物(パラサイト)が出現した世界を舞台に、高校生の泉新一が右手に寄生したミギーとともに、パラサイトと人類の戦いに巻き込まれていく姿を描いている。完結編では人類による寄生生物殲滅作戦が開始されるなか、パラサイトの内面、思いにも焦点が当てられている。今作が伝えたいことを端的に言い表しているのが、深津絵里扮する田宮良子の「私たちをいじめるな」であり、阿部が心血を注いだミギーの「出会った時に君の脳を奪わなくて良かった」というセリフにある。

前編にはない見どころ、作り手たちのこだわりが今作にはちりばめられている。山崎監督は、「本来ならば2部作といえど、前編と後編は独立したものであるべき。ただ、『寄生獣』の場合は最初から壮大な4時間ちょっとの映画のつもりで作っているので、前編ではクライマックスにはいたっていないんですね。後編を見ていただくと、前編からの流れの中で“大クライマックス”がつるべ打ちのようにやってきます。いわゆる泣けるシーンもあるし、考えさせられるシーンもあります」と説明。さらに、「前編を見た人の反応が興味深いんですよ。ほめてくれる人もいるのですが、『山崎映画のくせに、そんなに泣けないじゃないか』という指摘もあって(笑)。ただ、後編は泣ける要素も盛り込まれた映画にはなっていると思いますよ」と真摯な眼差(まなざ)しで話した。

それでも、全幅の信頼を寄せ合う2人が顔をそろえて後編の見どころを語り合うなかで、飛び出てくるコメントは、やはり一筋縄ではいかない。今作には新一とミギーが共同で味噌汁を作るシーンがある。緊張感あふれる本編内で、ほのかに心が和むシーンだが、作り手たちはこれでもかと遊び心を結集させたという。

画像5

山崎監督「味噌汁シークエンスは素晴らしいですよ。かなり上位に食い込む見せ場のひとつです(笑)。ミギーが、しゃべりながら超高速でネギを切りますから。撮影が大変そうだったからイヤだったんですが、スタッフみんながミギーの味噌汁のくだりが大好きで、どうしても残せっていうんですよ。ただ、出来上がったものを見て、残して良かったと思いました」
阿部「まさか、あんなことになっているとは思わずに僕はやっていましたからね。すごく面白かったですよ。味噌チューブをギューってやっていますから(笑)」

また、ジャーナリスト・倉森役の大森南朋、異様なパラサイト・三木役のピエール瀧、パラサイトを見分けることができる殺人鬼・浦上役の新井浩文といった完結編から新たに登場するキャラクターについて触れることも忘れていない。

山崎監督「ピエールさんは“おかしさ”が爆発していますよ。『凶悪』でもすごい役をやっておられましたけど、本当に幅広い芸域をお持ち。基本的に深みのある、一筋縄ではいかない役者さんばかりが集まってくれました。撮っていても、何が出てくるのか分からない部分がありましたしね」
 阿部「新井さんには、キャスト発表前に『このあいだ共演させてもらいました』って言われたことがあるんです。何のことだろう? と思ったら、『ミギーですよ! 僕は知っていますよ、ミギーだって』ってね(笑)」
 山崎監督「新井くんは、共演という意味では何も絡んでいないはずなんだけどなあ。あのメンバーの中では、『共演した』って最も言っちゃいけない人かもしれない(笑)」
 阿部「見ていて楽しい役者ばかり出てきますよね。撮影現場では会うこともかないませんでしたし。共演したことないんですが、本編では浅野忠信さんともお芝居したことになっているんですよね。やっぱり、実写がいいなあ……」

インタビュー2 ~染谷将太&橋本愛からのラブレター 「寄生獣」山崎貴監督&ミギーへ捧ぐ
「寄生獣 完結編」の作品トップへ