「心の原色」her 世界でひとつの彼女 S Nさんの映画レビュー(感想・評価)
心の原色
人である主人公は、人間としてのリアルや自分のあるべき姿と、自分のありたい姿の間で揺れ動き
AIであるサマンサは、OSとしての自分のリアルと、サマンサ自身の感情の間で揺れ動いていました。
AIというテーマは上手く利用され、「人間的」な心や愛といった内面の揺れ動きや、心同士が触れ合ったり触れ合わなかったりする機微を、「人間的」なものを超えたそれ自体として浮かび上がらせていたように思います。
AI・近未来という真新しさやサイバーなファンタジーとしてしか描かれないことも少なくないテーマを、このようなシンプルでありつつも既視感や飽きを感じさせないストーリーに落とし込んだのは本作の驚くべきところだと思います。
テーマに頼り切ったファンタジーではなく、少し先のテクノロジーを心や愛といった永遠のテーマに迫る題材として利用したこの作品は哲学的であり、心のありようを落ち着いた視点から描き出しているという意味で、芸術的でもあります。
くすっと笑えるところもあり、画の色遣いも綺麗です。あとルーニー・マーラ最高
コメントする