「いい思い出ができた老父と、それを作った息子にほんのり」ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
いい思い出ができた老父と、それを作った息子にほんのり
当たってもいない当選金の知らせを真に受けた老父に手を焼きながらも旅に付き合う息子が素敵。
何を言っても聞かず、ただただネブラスカを目指そうとする夫を罵る妻の口の悪さが、話に香辛料たっぷりのクセのある味付けを施す。
旅の途中で立ち寄る父親の生まれ故郷での出来事が、話の中心でもあり、ラストへの大いなる伏線でもある。
故郷の人々が大金を手にする父親を賞賛、妬み、たかりで取り巻くのは予想通りだが、父の過去や性格形成に触れることで父への理解を増す息子の心理がうまく描けている。
この作品はモノクロだ。町の人も含めて、心理の動きを表現しようとしたとき、たしかに色は不要かもしれない。不要というより邪魔か。モノクロにしたのは正解だと思えた。
コンプレッサーを取り戻そうとするシーンが笑えるが、モノクロだと昔のドタバタ喜劇を見ているようだ。
ついでだが、字幕が「空気圧縮機」になっていたが、あれは「コンプレッサー」でいいと思う。空気圧縮機? 普段、使わない言葉に、一瞬、何のことかピンとこなかった。
エンドロールを見ていたら、スタッフリストのヘアメイクが目についた。父親のあの無造作にばらけた髪の毛も計算されたものなのだろうなと思うと可笑しくなった。
あの髪と髭、ボケてるのかボケてないのか絶妙なバランスを作り出している。そんな父親のちょっぴり鼻息荒い凱旋と、息子の思いやりがほんのりさせるラストが見もの。
アレクサンダー・ペインの作品は、どれも幸せ気分に浸れるラストが待っている。
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