「キャラクターの数」ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターの数
今日の映画は、アレクサンダー・ペイン監督の作品。今回が初めましての作品でした。なので、どういう特徴なのかということはあまりつかめませんでしたが、今日お話しする内容はボブ・ネルソンが手がけた脚本についてです!
この作品の要約をしてくださいと言われると、なんともそっけない感じになってしまいそう。
それは、ストーリーが雑誌広告のうその懸賞金目当てに、父親がネブラスカを目指す、というなんとも言えない素朴なものだからです。でも、この素朴さが翻って、映画のテーマや伝えたいことを色濃くしたのではないでしょうか。
映画というのは、教科書のような決まり切った形というものがあります。それは、小学校で習う起承転結に終着するようなことで、ほとんどの映画がその形を取って言っていると言っても過言ではありません。
しかし、こんなに十数万本もの映画が作られ、いまだに世界中で楽しまれているのもまた事実です。
そこには、脚本、監督、撮影、編集といった様々な要素を組み合わせていくことで、その作品のオリジナリティを作り上げていく工夫がされています。
本作でいうと、とても印象に残っているのが、脚本。さらにいうと、シーンごとのキャラクターの数。
最初のシーンは、道をトボトボと歩くウディ。
デヴィッドがウディをネブラスカに車で連れていくところから物語はスタート。
その途中には、ウディの兄であるレイの家族がいて故郷を訪れる。
さらに、妻ケイトがしびれを切らしてやってくる。
そこにさらに、デヴィッドの兄のロス、親戚十数人が集まってくる。
一悶着あった後、ウディ、妻のケイト、デヴィッド、兄ロスの家族4人で、ウディの暮らしていた家を訪ねる。
ケイトとロスは実家に戻り、最後はウディとデヴィッドのふたりでネブラスカを目指す。
すこし複雑ですが、キャラクターの数がシーンを追って増え、クライマックスでは減っていくという構成がこの映画の中でも際立っていたように感じました。
キャラクターが増えることによって、ウディの周りの人々を登場させ、ウディの環境を描いています。そこから、家族だけになり、家族というテーマを浮上させ、さらには二人だけにし、父と息子というテーマを最後に仕上げています。
キャラクターが増えることで、必然的に1ショットに移るキャラクターも増え、みんなでテレビを見ているシーン、みんなで食事をしているシーンは、集団としての一つのキャラクターが浮かび上がってました。
そして、車の中での家族のシーンでは、昔から変わらない関係性が家族の強さを感じます。
二人でのシーンは、父へのリスペクトや、息子への愛情というのが、最後の最後に初めてキャラクターの口から感情として現れます。
このように、キャラクターを通してストーリーを描いていくことこそ、映画の真髄で、ストーリープロットというのはただの道具であって、本当に伝えたいことはキャラクターが語るということが、この作品でわかりますよね。
白黒のチョイス、フレーミングのチョイスにもそれをサポートする役割が。とても暖かくもありながら繊細な映画でした。