「あえてご都合主義に」アバウト・タイム 愛おしい時間について CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)
あえてご都合主義に
過去に戻る力を持つ男が、何度も過去へ行ってやり直したり、現在に戻ってみたりを繰り返し、幸せな人生を作っていくファンタジー。
タイムパラドックスを扱っているのでSFかと思いきや、その辺は設定がすごく適当だし、御都合主義で、突っ込みどころは満載なので、ファンタジーとして割り切ってみないと受け付けないだろう。
主人公の、生まれ育った家庭環境も、時間を行き来できる能力も、弁護士としての成功も、どれも恵まれ過ぎていて、多少家族のことで不幸や問題があろうとも、それくらいどうって事ないだろっと思ってしまうのだが、心に余裕を持ってみれば、ご都合主義の展開も楽しめるってもの。
さて、最終的に主人公は、タイムトラベルについて一つの境地に辿り着くのだが、それは、ある意味でタイムトラベルで過去を変えたり人生をやり直すことを頭から否定することでもある。
つまり、この作品は、SFとしてタイムパラドックスの設定をあえて雑に描き、最終的にはタイムトラベルによって描かれるファンタジー作品そのものを否定してしまっているのだ。
それがまさに「時間について」考察した監督の答えだ。そうやってタイムトラベルというSFファンタジーに対してシニカルな視点に立つことで、タイムトラベルによって成功を勝ち取ることよりも、家族と真剣に向き合うことや、交流や絆が大切であるという人間賛歌、人生賛歌を描いている……と解釈するのは、ポジティブに解釈し過ぎだろうか。
最後に、主人公の妻を演じるレイチェル・マクアダムスが可愛いことも特筆しておく。
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