「幸福な人の為の生老病死冠婚葬祭映画」アバウト・タイム 愛おしい時間について 寝落ち中尉さんの映画レビュー(感想・評価)
幸福な人の為の生老病死冠婚葬祭映画
ジューンブライド特集とかでなんかやってたので観てみました。
おお・・・ほぼほぼ満席(しかも若いカップルが意外と多い?)
なるほど、よくできたラブストーリー映画でした。
この作品の設定だけを読んでSF作品かと勘違いして観てしまった方にとっては確かにSF的な要素はかなり薄く(設定も結構雑ですね)肩すかしになるかと。あくまでラブストーリーだったり人生観にまつわる作品ですので。
絶賛や肯定的な評価が多いので敢えて別の視点で書いてみます。
この作品を素直に観れてしまう方って、おそらく「既に幸福」な方なんだろうな、と思われます。
既に幸福の渦中にある人が、自身が幸福である事を噛みしめたり確認する為の作品、と云えるでしょう。
大衆エンタメ作品というのは多かれ少なかれポルノ的要素があるもので、それは性的表現という意味合いではなく、「人の心の弱さに寄り添う」というニュアンスでのポルノ的要素です。
そしてこの作品も、既に幸福な人のためのポルノであると云えるでしょう。
主人公の青年はイギリスの片田舎の裕福な家庭に育ち、異性にはあまり積極的ではないところがあるものの、「能力」を駆使してどんどん突き進んでゆくわけですが、金銭面での問題はまるで描かれずサラッと弁護士の卵だったり周囲には多少癖がありつつも重篤な問題のある人間は居ないわけですね。異性を奪われたら能力を使って奪い返せばいいわけで、敵が存在しない(存在しなかったことにできる)。
唯一、妹だけが愛着障害だったり発達障害的な要素でもって問題を抱えている描写がありますけども。できるだけ助けようとはするものの妹は二の次、主人公にとっては自分第一。
子供も1人、2人、3人、と経済面については何の心配もする描写無くつくってしまう。そのあたりのストレスを描写するとこの作品のテーマがブレてしまうのもわかりますけども、そういう側面においてストレスフリーなのがこの作品のポルノ的ファンタジー的側面でしょうね。ポルノ的だからわるいのではないのです。ポルノ的な側面をそうだという認識を把持したまま愉しむことが大事だと私は思います。
主演の女優さん、とても魅力的だと思いました。