「おしゃれでっせ」アバウト・タイム 愛おしい時間について 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
おしゃれでっせ
さいしょのやり直し(タイムトラベル)で、かたわらにいたポリー(Jenny Rainsford)に新年キスするばめんがいちばんいい。
かのじょ、すごく嬉しそうにサンキューティムと言って、(それがRachel McAdamsよりMargot RobbieよりVanessa Kirbyより、かわいくて)じわりとあったかかった。
個人的な映画の印象としてその新年キスのやり直しシーンからぜんぜん進まない。あの気まずい空気を、キスで挽回してくれて、ほんとにうれしくて、そこで満足してしまった──わけである。
周知のごとく、アバウトタイムは、みずからのおしゃれ度や、趣味の良さを顕示してくれる、それな人種必携のマストアイテム──になっている。
映画産業にたずさわるなら、これを推しとけば、だいたい大丈夫──なはずである。
この映画が、都会に巣くっている映えな顔アイコンのライターふぜいに、調子こいた文脈で称揚されているのを見るたびに、田舎のお百姓であるわたしは、なんかムカついてしかたがない。──のである。
じょうだんはさておき、プリンセスなbullyが廊下を並列になって闊歩するシーンが学園映画にはつきものであり、ミーンガールズで、それを先頭きってやっていたのがレイチェルマクアダムスだった。リンジーローハンは守ってあげたくなる愛嬌を持っていた。
ところがどうだろう。その後ローハンはトラブル続き。薬・お酒の乱用、心神の疾病で入退院を繰り返し、いじったせいか、昔のおもかげも見えない。
逆に、あんなに憎たらしかったマクアダムズが躍進し、米英でのトップランク女優に伸してしまった。
かのじょが雨のなか破顔で笑っているアバウトタイムのだいひょう的な画を見るたび、わたしはミーンガールズの意地悪なレジーナ(演:レイチェルマクアダムス)を思い出し、やり直しの効かない現実の人生をため息まじりに振り返る──わけである。
おそらくこの映画の高い評価は、旧世代の人たちに、時代の変遷を感じさせるところ──にもある。まさしくアバウトタイムな映画だった。