「愛おしいこのひと時ひと時、愛おしい人生、愛おしい映画」アバウト・タイム 愛おしい時間について 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
愛おしいこのひと時ひと時、愛おしい人生、愛おしい映画
脚本家として『フォー・ウェディング』『ノッティングヒルの恋人』、監督として『ラブ・アクチュアリー』、恋愛映画の名手リチャード・カーティスによる監督作。
お得意の恋愛映画にプラスして、意外やタイムトラベルSF!
イギリス・コーンウォールに住む平凡な青年ティムは、21歳の誕生日、父から驚きの秘密を打ち明けられる。
代々我が家系の男たちには、タイムトラベル能力があるという…!
…ハ? 何言ってんの、父さん?
しかも、方法が雑。暗く狭い部屋にでも入って、目を瞑って拳を握って、戻りたい時を思い浮かべれば戻れるって…。
ハイハイ、試してみるよ。そんな事…
マジかよ! 出来たよ! ワォ!
タイムトラベルと言っても、歴史を変えるとかは出来ない。また、金儲けとか欲に溺れると、ロクな事にならない。
あくまで自分の人生をより良いものにする為。個人的なタイムトラベル。
で、ティムくん、どんな事にタイムトラベル使ったかと言うと、日常の些細なミスや恥ずかしい事のやり直し。
口が滑ったり、躓いたりをやり直して無かった事に。
そんなしょーもない事にタイムトラベル使うなよ…と思うが、誰だって日常生活の中でちょっとしたミスをやり直したいと思う時が何回もある筈。
そこら辺を面白可笑しくくすぐるように描写。
それに、そんなしょーもない事にタイムトラベル使うのならば一応問題ナシ。
彼の一世一代のタイムトラベル使用は、運命の出会いに。
ロンドンに出て、弁護士として働くティム。
ある日、魅力的な女性メアリーと出会い、一目惚れ。
意気投合し、電話番号も交換する。
今まで恋愛に縁が無かった彼にとって、遂に訪れた春!(実は以前、タイムトラベルで初恋を成就させようとした事があったが、結局上手くいかなかった苦い経験があった)
…ところが!
人助けでタイムトラベルしたら、彼女との出会いが無かった事に。
やり直して、やり直して、今度は最高の形で出会い、あっという間にお互い恋に落ちる。
同棲、相手の両親に挨拶(勿論何度もやり直し)、こっちの両親に紹介、プロポーズ、結婚…。
子供が産まれ、全てが幸せ。
もうあまりタイムトラベルを使う事も無くなった。
じゃあ、何の為のタイムトラベル能力…?
こういうタイムトラベル映画あるあると言えば、一方を修正すると、一方に悪影響を及ぼす。
勿論本作にもそれはある。
良かれと思ってやった人助けが、メアリーとの出会いが無かった事に。
また、仲良しの妹の悲しい人生をやり直そうとタイムトラベルし成功するが、我が子に衝撃の影響が…!
とは言え、他のタイムトラベル映画のような歴史を変えてしまったレベルの悪影響や元の時間に戻れないとか、そういった大ピンチはナシ。
タイムトラベル映画としては甘々で理想的過ぎて、不満や物足りなさを感じる人も居るだろう。
でも本作はサスペンス的な作品ではなく、タイムトラベル能力を使って噛み締める、人生の愛おしさ、尊さ。
リチャード・カーティス、さすがの語り口!
洒落っ気とユーモア抜群の台詞、センス、展開…。スッと引き込まれ、終始魅了される。
ドーナル・グリーソンも素朴な青年を好演。
レイチェル・マクアダムスが相変わらず魅力的。
初恋の相手に、ブレイク前のマーゴット・ロビー。
レイチェルにマーゴット…羨まし過ぎるぜ。
紅茶好きの母、天然の伯父、自由奔放な妹、おバカな友達、偏屈な父の友人の脚本家…愛着溢れる周りの人々。
そんな中でもやはり、ビル・ナイ演じる父。
平方でちょっと不器用で、自分そっくりな父とは大の仲良し。
結婚式でのスピーチが息子への愛に満ち溢れていた。
そんな父との別れの時が近付いていた。父が癌に侵されていた…。
決断迫られる。
タイムトラベルでいつでも父と会う事は出来る。
が、その代わり、ある事に影響及ぼす。
そちらを取るか、父を取るか。
それは決まっていた。
親が先に逝くのは自然の摂理だ。
父はタイムトラベルをより良く使う秘訣を教える。
はっきり言ってそれは、タイムトラベル能力者だけの特権。
でもそれは、我々一人一人への普遍的なメッセージでもある。
時は二度と戻らない。
だからこそ、このひと時ひと時がどんなに幸せに満ちているか。
愛おしい人々、愛おしい人生、全てが愛おしい。
見た人の評判良いのは知っていたが、なかなか見れる機会無く、やっと今頃になって鑑賞したが、評判違わぬ良作!
タイムトラベルして、早く見ろと過去の自分に言ってやりたい。
リチャード・カーティスは本作が最後の監督作と公言。
脚本家としての彼も好きだが、監督としてもっともっと愛おしい彼の良作を観たい。