「多角的な事実とたったひとつの真実、あるいはその逆」物語る私たち だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
多角的な事実とたったひとつの真実、あるいはその逆
サラ・ポーリーは、死ぬまでにしたい10のことという映画の主演女優として知りました。この映画とてもいいと思った記憶があります。
あれから10年。行きつけの映画館のチラシコーナーにてサラ・ポーリーの名を再度目にしました。
今度は監督として。
家族の秘密、とりわけ母と自分の出生についての秘密を自らがドキュメンタリー映画にしたとのこと。
気になったので、観よう!と思ったはよいですが、全国順次公開ってやつでして、
いつまでたっても上演時期が決まらずほぼ半年もじもじと待って、満を持してみてきたわけです。
サラの母ダイアンは女優でしたが、サラが11歳の時に亡くなりました。
ダイアンは楽しくて、にぎやかで、自由な人でした。
サラには4人の兄姉がいますが、家族の中ではサラの父は、
ダイアンの夫マイケルではないんじゃないの?という
ジョーク(これがジョークになるっていうのは理解しがたいが)、
がよくネタになっていたようです。
マイケルも兄姉もテッパンネタとして笑っていたようですが、
多分サラは気分がよくなかったでしょう。
長じたサラは、その噂の真偽を確かめようと、ダイアンと
噂になった人を訪ねます。
映画は、誰が生物学上の父かを知ったサラが、家族や関係者に
ダイアンという人と人生を語らせるという手法を取っています。
冒頭に、人は長い年月を経て、当時はわからなかったことが
思い返せるようになったときに、物語として語りたくなる、
といった内容(だったと思います)の文章を引用しています。
正確にはトレースできていないとおもいますが、印象的な文章でした。
自分の視点で物語る、ある事象について。
主観とともに語られる、その人が信じる、あるいは望む本当のこと。
その語られ方は大変興味深かったです。
事実と真実について、登場人物が語る部分があります。
その部分がとても印象に残りました。
ある人は、事実は人それぞれのものであり、真実はたった一つだといいました。
でもある人は、事実はたった一つだけど、真実は人それぞれのものだといいました。
どっちなんだろうと思います。
どちらでもないのでしょうか。
もう一度見て、再考したいです。
ある種のことには涙腺が異常に弱いので、実は冒頭の引用で
すでに涙ぐんでいました。
わかりやすく誰もが泣けるということではないと思いますが。