家族ゲームのレビュー・感想・評価
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まともに向き合わない家族に一石を投じた家庭教師
仮病を使って休もうとする問題児中三生、宮川一朗太扮する沼田茂之の家庭教師として松田優作扮する7年生の吉本勝がやって来た。吉本は茂之にお前は可愛いけど馬鹿だなと言った。茂之は、ひたすら夕暮れと書き続けたので吉本はふざけるなと怒って殴ったから鼻血が出た。世話焼き母親役に由紀さおり。確かこれで3回目だが、吉本のお陰で茂之の成績が上がったのは良いが、変わった父親だし、いじめもあったし、クラス担任も変だし、食卓くちゃくちゃだし、何回観ても分かった様な分からない様な不思議な映画だ。飄々とした吉本が熱っぽくて、家族の愛が足らなかったと言う事なのかな。
シュールさの中にあるリアル
横並びのテーブルに、おかしな家庭教師が出てくるぶっ飛んだストーリーなのに、端々に登場する高校受験や兄弟関係、親子関係や男女関係の要素が異様に生々しくリアルだった。 前々から思っていたが、森田監督の映画は、沈黙や雑音なども含めたモザイク画のような作りになっている。ストーリーでは語られきれないニュアンスが胸に残るので、感想を文字化するのが難しいのでもう諦める。
森田監督のセンスに脱帽
森田監督に憧れてこんな風に映画を撮ったら凄い駄作しかできないだろうなあ・・もうこの作品は脚本、カメラワーク、俳優、編集・・全て森田監督の緻密な設計図によって成り立っている。食事シーンはまるで素晴らしいクラッシックの音楽を目で聴いているかのよう。 登場人物の不安定さが心をゆる〜く揺さぶり続けて、笑いも起こるのだがそれがより一層深いところへひっぱられていく。 この年になるまでこの映画を観なかった後悔。でもあんまり若い時に観たらよくわからなかったかも。
松田優作主演の異色作
ハードボイルド以外のジャンルで松田優作が主演した異色作。皆が真面目に演じている中での笑いが、とても心地良い。この映画独特の一直線に並んで食べる食事シーンが、強く印象に残る。映画史に残る名作、必見の作品。
家族という役を演じるロールプレイング・ゲーム
みんな人として向かい合わない家族の姿 もちろんそれをあのテーブルが映像で表現している 半熟の目玉焼きを吸う父親、それは未だに母乳を吸う代償行為をする幼児性の表現だ これも冒頭で見せる しかも吸えなければそれを妻に非難するのだ バット殺人事件を恐れ息子の反抗という通過儀礼から逃げ、それを正面から受け止める父親の役割を家庭教師を雇い金で解決を得ようとする その家庭教師を自分の代わりに学校に行かせる母親 彼女は子供にも近隣の主婦にも優しいようで実は自分のことだけが大事なのだ 車の中でもっと遅く産めば良かったと、二人だけの新婚生活を楽しみかったといい子供のことは実は邪魔だと思っているのだ この母親は戸川純が演じる同じ団地の精神不安定な主婦から、もっと人に共感できる心を持つべきだとなじられる そして椅子を動かして向かい合わせで座りこの家のテーブルの異常さを暴露する この夫婦は、夫婦の会話を家庭ではしない 外の車の中で済まそうとするのだ 団地の家が狭いからだけではない ラストシーンに映る二人の寝室を持つにもかかわらずそうする 家庭を拒否しているのだ 父親と母親では有るが、まだその自覚がないのだ 子供が実は邪魔なのだ それでも仕方なく家族を演じるロールプレイング・ゲームをしているのだ それがタイトルの意味だ それでも母親の愛情を取り合う子供達 兄はレコードのやり取りで愛情を確かめようとするが弟が帰宅するとそれを共有しようとせずに席を立つ 弟は成績が良くなると気分を悪くするやつがいるというが、それは実はクラスメートではなく兄のことだ 兄は弟が両親の関心を集めればやる気を失う 親を心配させて関心を集めたいのだ 冒頭で弟がやる気を出せないのは同じ理由だ 兄弟で助け合うとか励ますとかの発想がそもそも欠落している 兄弟もまた両親と同じく兄弟というロールプレイング・ゲームを演じているのだ 弟は母が来客中であっても、そこに急に電話が鳴り出しても、自分の話を聞いてくれと駄々をこねる その上、来客の前で着替えて裸になって追い返そうとする幼児性をみせる 鉄球のジェットコースターのおもちゃもその幼児性を表現している これで中学三年なのだ 舞台はまだ工場や倉庫あとは空き地だらけの頃の晴海の埋め立て地 この土地は生活実態を感じさせない そこに家庭教師は水上バスで竹芝桟橋から通う つまり普通の家庭が住むところとは別世界だという映像表現だ 家庭教師の住む部屋には花もあり、恋人がいて彼とイチャつく安らぎがある 背景には水槽の泡の水音がしており無言であっても潤いのある生活があることを示す これも沼田家との対比をなすものなのだ 松田優作が演じる家庭教師 彼は結局父親と母親の両方の役割を果たす 弟は成長し成績は上がり、クラスメートから告白され、土屋にはケンカで勝ち、ついには志望校合格という奇跡を起こす 彼はこのゲームを演じている家族を救いに降臨したキリストということなのだ だから頬を打たれるシーンが有るわけだ そうして合格祝勝会は最後の晩餐を模すわけだ 最後の晩餐の席でキリストはこの場に裏切り者がいると言う それは誰か? 本作では家族全員なのだ それで神である彼は家族を罰し、その象徴であるテーブルをひっくり返すのだ 彼が去ったあとに残された偽りの家族は初めてバケツを中心に片付けを協同して行うのだ ではラストシーンのヘリコプターは何か 救世主は去り戻らない 天空に舞うのは雷鳴でも神の子の降臨を伝える天使でもない 救世主に去られたこの家族は結局家族の意味がないことを知ってしまったのだ 眠っているのも死んでいるのも変わりはしないのだ 父の姿はない はじめからいないのと同じなのだ この家族は私達の写し鏡だ 戦後の核家族は大なり小なり似たようなものだ 本当に家族一人一人に向き合っているのだろうか それを問うているのだ 自分は本当に親であったのだろうか? 汗がでる思いだ この兄弟は団塊ジュニアの走りになる 21世紀の今日、この兄弟は本作の両親の年代よりも年配になっている 今では単身赴任も当たり前の世の中になっている 彼らは、私達は、あなたは、本作のような家族ゲームをまた再演してはいないだろうか? というよりこの家族の異常性すら、どこが異常なのか感じとれもしなくなってはいないだろうか 遂にはさらにバラバラになって個となり、結婚すらせずに家族をもたないものも、この世代になると多いのだ いやひょっとすると、いまだにあの子供部屋にいるのかも知れない エンドレスで家族ゲームを演じ続けている人すらいるかもしれないのだ 本作は戦後の核家族の実相を描いただけでなく、予言にまでなっているのかも知れない この森田芳光監督の見事な演出 松田優作の怪演 数々の映画賞を総なめにするはずだ 奇しくも同じ1983年初夏に公開された映画に、市川崑監督の細雪がある その作品は反発しあいながらも互いに気遣う本当の家族の物語だ 戦前と戦後の二つの家族の姿 偶然にしても見事な対称をなしている 映画の神の見えざる手による必然なのだろうか
松田優作がすべて
城南大学なんだから・・・最後はそこに落ち着くのか。とにかく最後の晩餐のシーンは凄かった。松田優作ってのはこういった長回しのパートが得意なんだろうなぁ。 教育問題的には校内暴力が目立っていた頃で、バット殺人など家族の絆が取り沙汰されるバブル前夜の時期だ。スパルタ教育も戸塚ヨットスクールのニュースが毎日流れていたように記憶している。家庭教師の松田優作は、植物図鑑をいつも携えていて、勉強なんて教えない。なにしろ「奥の細道」さえロクに読めない大学生で、ビンタをかまし、恐怖で生徒を押さえつけるタイプなのだ。 ストーリーよりも、淡々とした家族生活をシュールに描き、いつ何が起こってもおかしくない家族。ATGだということもあり、低予算を逆手にとったイメージ。最近の森田監督映画はひどいもんだけど、初心に帰って良作を作ってもらいたいものです。
当時としては・・・。
当時の日本映画としては珍しく、映画として見せる映画でした。 かなり音に重きを置いているのがいいですね、アーティスティックで。 シニカルな雰囲気とラストシーンが衝撃的な映画でした!!
30年ぶりに観た。カメラワークとか間の取り方なんかそれまでにない新...
30年ぶりに観た。カメラワークとか間の取り方なんかそれまでにない新感覚の映画だったし、その年の日本アカデミー賞を総ナメにしたのが懐かしい。松田優作としても新境地だったんじゃないかなぁ。 それにしても舞台になったのは東京都中央区ですよ。こんな殺伐とした東京の景色を見るのも楽しめる。 今度近くに行ってみよう。
なんじゃこりゃー 何をどう見ればいいのか、何がいいたいのか、さっぱ...
なんじゃこりゃー 何をどう見ればいいのか、何がいいたいのか、さっぱり分からない。ラストも全く分からない。斬新過ぎます(笑) 何と言っても家族が一列に並んだ食事風景。この異様さが妙な期待感へと繋がっていく。 そして衝撃の合格祝いの食卓。今なら、「食べ物を粗末にするとは」とか、綺麗事ばかり唱える御仁たちの大批判を浴びかねない、このシーン。 笑いました。大笑いしました。無表情のまま事をなしとげてしまう。これが似合うのは松田優作しかいない。改めて感じました。松田優作という俳優の存在感を。 今からもう一度このシーンだけ見て笑います。
やっと見つけた。ここまで大好きだと思える映画。
やっと見つけた。ここまで大好きだと思える映画。 場外ホームラン級に好きです。 ブラックジョークが散りばめられていて、 くすりくすりと笑ってしまう。 最後のカオスな食卓のシーンとか、笑いっぱなし。がははって笑いではないけど。 みんな少しずつズレてる沼田家。そこに、これまた少しズレてる家庭教師がやって来る。 みんなとても自然な演技で、学校の先生なんてセリフかんでたけど、そこがまたリアルで大変良い。 最近の映画は意味のないシーンを雰囲気つくりのために挿入したりしているけど、この映画にはそういった無駄なシーンが一切ない。早送りするタイミングが全くない。退屈することのない、ちょうどいいスピード具合もまた良い。 2011/1/19 @メディラボ
なんだこの異様感…
昭和の邦画を初めて見た気がする この独特の世界観、普通じゃない。というか普通なら敬遠してるくらいの気持ちわるさが描かれている。静と動の差の付け方も、食べ物のアップも視聴者をそういう世界に引き込んでいる。
日本映画史に残る傑作
映画館では観てないものの、翌年TVで見たのが最初。 その後も、何回も観たが飽きない。 そして年齢とともに理解度が深まり 最近ようやく横テーブルの意味が解けた。 また現在五十路になったが、自分も生きて過ごした83年当時が どんな時代だったかを、思い起こせる映画でもある。 当時を知らない若い世代だと、ネタのような場面もあるが 今ほど成熟していない日本の一時代を、そのまま映し出している。 例えば 当時ああいう教師は確かに存在し、既に教師は聖職では無かった。 また学生が今よりずっと多く、受験競争という時代である。 お金はあっても、行きたくても誰しもが大学に行けない時代。 大学の数が今みたいに多く無かった。 お金さえあり大学ブランドに拘らなければ誰でも大学に行ける 今とは違う。 映画に話を戻すと、脚本、キャスティング、演出、カメラワーク どれをとっても完璧で、ひじょうに完成度の高い作品である。 今思えば森田、松田、伊丹、揃って既に居ない。 日本は優れた才能を失ったものだという思いが 私の中で益々作品の魅力を引き上げてる。 由紀さおりは、当時の一般的な日本の母親を見事に演じきっている。
やっぱり優作は素晴らしい
『失楽園』以来の森田芳光作品鑑賞。内容は、簡単に言えば、松田優作演じる家庭教師がある家庭に入り、掻き乱し、変化をもたらすというものだ。想像していたトーンとは多少異なり、全体的に淡々としていた。監督のメッセージを明確に読み取ることはできないが、「クラスでの順位が一つ上がったら一万円というのはどうだ」という家庭教師に対する父親の言葉から、人間の本質を無視して"生産ロボット"を製造する世の中の親たちを皮肉っていることは理解できる。 それにしても、言うまでもないが、松田優作が素晴らしい。あの独特な話し方には自然と引き込まれてしまう。この役ができる他の俳優を想像するのは相当難しいだろう。
冷めた時代の人間関係
総合:65点 ストーリー: 60 キャスト: 75 演出: 70 ビジュアル: 65 音楽: 0 初めて見たときはわけがわからない映画だと思った。最後のほうの横一列で食べ物を投げたり暴力が出るあり得ない食事の場面、全く理解出来なかった。社会という中、家族という中で生活していくうえで、実際には表面上だけの関係性などを皮肉っているのかと今は解釈している。一緒に生活していてもお互いを本当に理解することもない。物質的には豊かになり先進国として世界に肩を並べた、でも人々の人間関係は希薄で家族はばらばらで、家族同士でバットで殴りあいの殺人事件が起きる時代。そんな虚無感を抱えながらの何か冷めた生き方の描写が、この時代を反映しているのだろう。 物語はあまり意味がない。音楽も全くなく、出てくる場面は団地や学校や工場地帯ばかり。ただひたすらに人々の冷めた人間関係の齟齬が生じていく場面を繋ぎ合わせる。そのような人々の描き方を皮肉をこめて滑稽に映し出す。この独特の雰囲気が醸し出す面白さがこの映画の本質だろうか。
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