「予言的中!ギャップを感じなくなった沼田一家。」家族ゲーム Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
予言的中!ギャップを感じなくなった沼田一家。
森田芳光の監督2作目。1983年公開。
沼田家の面々と家庭教師のものがたり。
・子供の進学先しか関心がない父(伊丹十三)
・優しいがまるで主張のない母(由紀さおり)
・進学校に合格したが無気力な長男(辻田順一)
・勉強も学校生活も冴えない次男(宮川一朗太)
・次男のために雇われた家庭教師(松田優作)
一家4人+家庭教師が、横1列に並んで食事するシーンが本作を特徴づけている。
BGMがなく(当然、本作にはサントラもない)、咀嚼音や食器の音がかなり強めに耳に入ってくる。
さて、肝心のレビューだが、
最初に見たときと、今とではかなり受け止めが異なる。
(当たり前か笑)
例えば、
伊丹十三演じる父が、朝食の目玉焼が固すぎると真顔で不満を訴える。
「なんだ、この黄身は。こんな固くちゃチュウチュウできないじゃないか…」
最初に見たときは、
「そんな甘えたオッサンおるわけないやろ」
と、笑えたものだが、最近だとスルーだ。
繰り返し見たから鮮度が落ちた?
いや、そうじゃない。
何が言いたいかというと、
昭和の時代に笑えたギャップが、令和の今では「多様性のひとつ」程度の受け止めになる。
時代が変わったのだ。
次男がノートに「夕暮れ」をひたすら書き続けるシーンもそうだ。家庭教師に対する小さな反抗だ。
「夕暮れを完全に把握しました」
令和では、ドスの効いた声で
「おい、なめてんのか?」
なんて対応はしないだろう。
森田芳光監督がデフォルメして表現し、松田優作を使って壊してみせた「昭和のニュー家族像」は、40年経ったいま、違和感を生じないほどにその通りになった。
予言的中だ。
みんなで食事するのが大切だ、なんて言いながら、
会話は子どもの成績だけ。
なんて不毛な一家団欒は、令和のスタンダードだ。
残されたレガシーは、
◆日本を代表するアクションスター松田優作が出演した稀少なホームコメディ作品という事実。
◆自宅・学校・登下校路という限定された場面設定。
◆体罰ok、個人情報の扱いの緩さ、スマホのない世界を味わえる。
公開当時のオトナたちが、本作の何に衝撃を受けたのか
すでに分からなくなりつつある。
エポックメイキングであり、レトロな作品だ。