「松田優作は「用心棒」の三船敏朗」家族ゲーム 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
松田優作は「用心棒」の三船敏朗
家族が互いに向き合わないで食事をする光景。
それが息子たちと向き合わない父親の姿と重なる。
1983年。森田芳光監督作品。キネマ旬報ベストテン第一位。
作品賞・監督賞総なめ。
呆気にとられる存在感の松田優作は、ほぼ無冠。
父親役の伊丹十三は助演男優賞を総なめ。
この映画の題名と評価に惹かれて鑑賞しました。
東京湾岸の今から37年前の景色が、あ〜昔は高層タワーの億ションが立ち並ぶ
ベイエリアが、こんなだったんだと感慨深い。
沼田家は湾岸の勝どき6丁目にある高層アパートに住む4人家族。
東京湾岸が見晴らせて素晴らしいロケーションだ。
高校受験を控える次男坊(宮川一郎太)は勉強嫌いで、頭は良いのに成績最悪。
解決策として家庭教師を付ける。
その家庭教師が2流大学7年生の松田優作。
不穏な空気を漂わせて登場。
只者ならぬ空気感は、おぬしやるな!!
もしくはこいつに、家族皆殺しにされるな!!
的、予感と期待を抱かせる。(根っからのアウトローだ)
三船敏朗の用心棒のようにフラリと現れて、家族を根底から変えて、
またフラリと消えて行く・・・
かと思うと、設定は似ているが、
《家族は何も変わっていない、元のままなのだ》
父親は「俺が下手に口を出すと、なぁ、バット殺人みたいなことになるんだ・・・」
と、2、3回言う。(息子が金属バットで両親を撲殺した事件が、世を震撼させた頃らしい)
家庭教師の松田優作は金のためとはいえ、次男の不成績と向き合う。
イジめる生徒とも対決する。
担任とも掛け合う。
顔面パンチを喰らわして、暴力でねじ伏せ、結果次男坊はランクを大きく上げて、
一流高校に合格する。
《合格祝いの祝膳の場》
事なかれ主義の父親は、家庭教師を労い、息子を祝いつつも、長男の不登校と不勉強をあげつらい、
くどくどと説教を始める。
ここで食卓を残飯の山にしていた松田優作は、《ちゃぶ台かえし》を敢行・・・
(アレアレ、ちゃぶ台かえしは父親の専売特許の筈だ・・・)
そして、黙って去って行く。
高校入学して不勉強が再発してる次男。
長男はなんとか高校に登校してる。
家庭教師(松田優作)が変えたようで、何も変わってなんかいない!!
次男は一流高校の受験に合格はしなかったかも知れない。
しかし、二流高校だろうと一流高校だろうと勉強しなければ、どちらも同じこと。
家族なんて《向き合わないこと》で成り立っている部分が大きいのではないか?
お互いの傷に触れないことが、居心地良く暮らす知恵なのだ。
改めて松田優作。
「ブラックレイン」しか観た事がない。生きていれば72歳だ。
松田龍平と松田翔太の父親・・・くらいしか認識がないが、抜群の逸材なのを実感。
そして伊丹十三。
俳優より監督として有名。
映画監督デビューがこの映画の翌年1984年の51歳だとは!!
「家族ゲーム」が俳優としての最高評価なのも不思議な縁。
松田優作(1989年49歳)も伊丹十三(1997年64歳)で、亡くなった事が惜しまれる。そして肝心の森田芳光監督はこの作品当時33歳の若さでした。
2011年61歳で亡くなられました。惜しまれます。
こんばんは。
今回同じタイミングでレビューをあげた作品は3作とも原作が諸星大二郎です。ちなみに「壁男」の主演は堺雅人です。一番のお勧めは「奇談」です。
森田芳光監督って改めて見ると色々なジャンルの作品撮ってますよね。
特に監督意識しないで見ていた作品が森田芳光監督作品だったって事よくあります😅
琥珀糖さんのレビューよんで(ハル)と39は知らなかったので見てみようと思っています。
家族ゲームはもうだいぶ前に見たきりですが、それでも覚えているシーン多いです。
個人的に好きなのは伊丹十三が松田優作と二人っきりで話したいけど自宅にはそんな落ち着ける部屋が無いので車の中で会話するシーンです。
日本の住宅事情や父親の家庭内での存在感や影響力の薄さを感じさせて変な悲哀があるんですよね…。
「家族が互いに向き合わないで食事をする光景。
それが息子たちと向き合わない父親の姿と重なる。」
この一文にハッとしました!あの印象的な食事シーンってそういう見方があるんですね、勉強になります。
個人的に松田優作って本人のカリスマ性の割に出演作にあまり恵まれなかったなぁと感じています。
そのなかでも良かったなぁ~って思うのが向田邦子ドラマの「春が来た」(82年)です。
すんごく、しみったれた一家の長女である桃井かおりに恋人ができて、その恋人が家に来ると家族までが活気づくというお話なのですが、その恋人役が松田優作なんです。アウトローな役柄が多かった松田優作が普通の会社員の役やっていて新鮮ですよ!