家族ゲーム

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

松田優作扮する三流大学の7年生という風変わりな家庭教師が、高校受験生を鍛え上げる様をコミカルに描く。音楽なしの誇張された効果音、テーブルに横一列に並び食事をするという演劇的な画面設計など、新しい表現が評判となった森田演出が冴えるホーム・コメディの傑作。

1983年製作/106分/G/日本
劇場公開日:1983年6月4日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第7回 日本アカデミー賞(1984年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 森田芳光
脚本賞 森田芳光
主演男優賞 松田優作
助演男優賞 伊丹十三
助演女優賞 由紀さおり
新人俳優賞 宮川一朗太
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(C)1983 日活/東宝

映画レビュー

5.080年代初頭の時代の空気感を実にシュールにシニカル描いており、まさに80年代の代表的な1本ですね。

2024年12月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

新文芸坐さんにて「森田芳光70祭2024 in 新文芸坐」(12月14日~15日)開催。
久々に監督代表作『家族ゲーム』(1983)を鑑賞。
上映後には宮川一朗太氏、ライムスター宇多丸氏、三沢和子氏のトークショーも実施。

『家族ゲーム』(1983)
型破りな家庭教師・吉本勝(演:松田優作氏)と高校受験を控えた問題児・沼田茂之(演:宮川一朗太氏)の関係を中心に沼田家を取り巻く騒動を描いた作品。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のように家族が横一列に並ぶ食事シーンが従来のホームドラマの円卓と違い、家族間の不協和音、各々バラバラな関係性を見事に描いた斬新な演出でしたね。
決して教育熱心ではない吉本と沼田とのヒリヒリした距離が徐々に縮まっていく緊迫感は、松田優作氏の圧倒的存在感のなせる業、家庭教師・吉本の素性や内面も最後まで最小限しか明かさず、沼田家にとっては「謎の闖入者」になっている点も良いですね。
また劇伴も最小限で、食事の咀嚼や食器の当たる音が緊迫感を助長させていましたね。
公開当時はいじめや受験戦争、バット殺人などが社会問題になって、新藤兼人監督『絞殺』(1979)などの作品がありましたが、80年代初頭の時代の空気感を実にシュールにシニカル描いており、まさに80年代の代表的な1本ですね。

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矢萩久登

3.5価値相対主義や個人主義社会の危うさに焦点を当てたブラックコメディ

2024年10月28日
PCから投稿

時代的に、「核家族化」、「少子化」、「偏差値教育」、「校内暴力」、「いじめ」等の社会問題が一般化してきた時期を象徴する、ある意味、非常に分かりやすい社会風刺映画。

食卓に一列に並んで食事をするシーンや、まるで噛み合っていない会話等、家族同士ですらお互いの心が向き合っていない事を端的に表している。そんな個人主義や相対主義が誇張されたような家族の中に、ひとりの家庭教師が入り込み、その家庭をめちゃくちゃにして去って行く。しかし、その一見、理不尽で暴力的な行為は、オヤジの「鉄拳制裁」よろしく、むしろ異常なまでの個人主義に対する「常識の鉄槌」としての効果を狙ったものなのかも知れない。

早くから価値相対主義や個人主義社会の持つ危うさと問題点に気付きながら、変に説教臭いドラマではなく、あえてドラスティックにブラックコメディとして仕上げた監督の先進性を評価。

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Fate number.9

2.5優作の新境地。伊丹十三は印象的な演技。

2024年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

少年時代の宮川一朗太が、受験生役、アクションヒーローの松田優作が家庭教師役と、かなり型破りな配役です。
伊丹十三の「チュルチュルできない…」由紀さおりの「お好きだったんですか…」は、印象的で、そのまま夫婦の関係が透けて見える秀逸な演出。

それ以外に見るもののない、退屈で平板なストーリーだと思いました。

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うそつきかもめ

4.0予言的中!ギャップを感じなくなった沼田一家。

2024年4月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

森田芳光の監督2作目。1983年公開。

沼田家の面々と家庭教師のものがたり。

・子供の進学先しか関心がない父(伊丹十三)
・優しいがまるで主張のない母(由紀さおり)
・進学校に合格したが無気力な長男(辻田順一)
・勉強も学校生活も冴えない次男(宮川一朗太)
・次男のために雇われた家庭教師(松田優作)

一家4人+家庭教師が、横1列に並んで食事するシーンが本作を特徴づけている。
BGMがなく(当然、本作にはサントラもない)、咀嚼音や食器の音がかなり強めに耳に入ってくる。

さて、肝心のレビューだが、
最初に見たときと、今とではかなり受け止めが異なる。
(当たり前か笑)

例えば、
伊丹十三演じる父が、朝食の目玉焼が固すぎると真顔で不満を訴える。
「なんだ、この黄身は。こんな固くちゃチュウチュウできないじゃないか…」

最初に見たときは、
「そんな甘えたオッサンおるわけないやろ」
と、笑えたものだが、最近だとスルーだ。

繰り返し見たから鮮度が落ちた?
いや、そうじゃない。

何が言いたいかというと、
昭和の時代に笑えたギャップが、令和の今では「多様性のひとつ」程度の受け止めになる。
時代が変わったのだ。

次男がノートに「夕暮れ」をひたすら書き続けるシーンもそうだ。家庭教師に対する小さな反抗だ。
「夕暮れを完全に把握しました」
令和では、ドスの効いた声で
「おい、なめてんのか?」
なんて対応はしないだろう。

森田芳光監督がデフォルメして表現し、松田優作を使って壊してみせた「昭和のニュー家族像」は、40年経ったいま、違和感を生じないほどにその通りになった。
予言的中だ。

みんなで食事するのが大切だ、なんて言いながら、
会話は子どもの成績だけ。
なんて不毛な一家団欒は、令和のスタンダードだ。

残されたレガシーは、
◆日本を代表するアクションスター松田優作が出演した稀少なホームコメディ作品という事実。
◆自宅・学校・登下校路という限定された場面設定。
◆体罰ok、個人情報の扱いの緩さ、スマホのない世界を味わえる。

公開当時のオトナたちが、本作の何に衝撃を受けたのか
すでに分からなくなりつつある。
エポックメイキングであり、レトロな作品だ。

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Haihai