花咲くころ
劇場公開日 2018年2月3日
解説
ソビエト連邦からの独立を果たした翌年、1992年のジョージア(グルジア)の首都トビリシを舞台に、2人の少女の成長と友情をみずみずしく描き、2013年・第14回東京フィルメックスの最優秀作品賞など、各国の映画祭で評価されたドラマ。91年に独立を果たしたものの、内戦によって人々の心に大きな傷跡を残したジョージア。境遇は異なるが幼なじみの14歳の少女エカとナティアは、不足する生活物資を補う配給の長い列に並びながら、おしゃべりするのがささやかな楽しみだった。そんなある時、ナティアに思いを寄せている不良少年のコテがナティアを強引にさらい、結婚を強要。結婚したナティアは学校にも行かせてもらえず単調な日々を送るが、ある日、ナティアに思いを寄せていたもうひとりの少年ラドの身に悲劇が起こり……。エカ役のリカ・バブルアニとナティア役のマリアム・ボケリアは、ともに演技未経験だったが、本作でそろってサラエボ国際映画祭の主演女優賞を受賞した。
2013年製作/102分/ジョージア・ドイツ・フランス合作
原題:Grzeli nateli dgeebi
配給:パンドラ
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2018年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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一瞬たりとも目を離してはもったいない。素晴らしいショットと色彩。
少女の中の男性中心の社会へ対する反感と、彼女を取り巻く人間関係の緊張が、交互に高まっていくスリリングな展開。
一級の映画である。
主人公の少女エカとナティアの瑞々しさについて、いまここで言及することなどもはや陳腐ではないかと思うほどに、誰もが二人の素晴らしさに脱帽するだろう。
特に、ナティアの結婚を祝う席で踊るエカに恐ろしいほどにひきこまれた。誘拐婚にもかかわらず幸せそうな親友や、男たちが歌う女性賛美の歌に、寒々しさや空々しさを感じている観客の思いが乗り移ったかのような、周囲への反発と侮蔑に満ちた表情は映画のハイライトである。
ナティアの夫が、かつてナティアが想いをよせていた男を、嫉妬のあまり殺す。ナティアにとってはどちらも人生にかけがえのない男であったのだが、一方は命を失い、片方はその罪を背負うことになる。
ここには迫り来る内戦の不穏な空気があらわれている。二人の少女は内戦が弾ける前に、それが人びとにもたらすであろう不条理を身をもって経験している。
ここで観客は、映画冒頭のバスのシーンで、ラジオから流れていた勇ましい言葉を思い起こすことになる。
男たちは武器を手にし、女を拐かす。それこそがグルジアの男なのだと誇らしげですらある。少女たちはそのような男社会に反感を抱きながらも、自分の運命を受け入れ、二人は武器を手放すことにする。
現実の社会では、多くの男たちがこれを、少女は男社会に屈服したと捉えるだろう。だが、観客は見ているのだ。真に勇気を持っているのは、誰なのかということを。
そうした経験をしたエカが、収監中の父親に面会しに行くところで映画が終わるところもまたいい。
父と何を話すのか。父をどういう人間だと思うのか。幻滅というよりも絶望的なまでの社会への不信は、同時に男性への不信である。その男性/社会の象徴でもある父に会って、エカが確認したいことは何なのだろうか。自分の父親も、社会を闊歩する男たちと何ら変わることがない人間なのか。それとも。
エカと世界がこのあとどのようにとり結ばれていくのか。大きな不安に立ち向かおうとしているエカの勇気が強く光る。
2018年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
出てくる女性と
映像がとてもきれいでした。
そして、思春期独特の
優しさと自己本位などの相反するさまざまな内面も同居している。
社会も家庭も混乱していて
矛盾も、諦めも、哀しいこともいっぱいだけれど
花咲く頃の少女はとても美しい。
2018年7月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
その国その時代、一部を極端に誇張することなくありのままを映し出し描いている。二人の主役は演技初挑戦というのが驚愕、素晴らしい。またクリアでナチュラルな映像が良い、雨の場面のカメラワークなど圧巻でした。
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大好きなグルジア(ジョージア)映画、女性監督の視点で描かれるグルジアはどうだろうと楽しみにしてたのですが、とても良かった。
1992年の内戦状態のグルジアの地で、2人の少女エカとナティアの友情が、戦争の不安定な社会情勢と呼応するような少女達の危うい綱渡りのような日々が繊細に描かれている。
不安定な経済と治安で大人達は苛立ち、殺伐としている中での2人の瑞々しい姿や、女の子達が集まって酒を飲み煙草を吸い歌を歌ってるシーンとかいかにもグルジア映画って感じで最高。
画面のトーンはずっと薄暗いのにエカ達の姿だけが色彩豊かに色鮮やかに見えてくる錯覚すら感じた。
でもいつこの日常に暗い影が落ちるのか、つきまとう不安と不穏さにドキドキしながら見てしまった。
結婚式のときに、抵抗の意思を見せる為にエカが踊った踊りは、本来グルジアの男性が踊るものらしく、
エカの大人達の様にはならない、悪意や暴力の連鎖はもう起こさない、とゆう意思のこもった静かな眼差しは、監督の意思そのものだったんだろう。
自分がもう生まれてる時代に、誘拐婚とゆう行為がグルジアでおこっていたのがすごくショッキングだったし
社会的メッセージ性と芸術性、映画の魅力もとても高い大好きな映画。
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