ラスト・ベガス : 映画評論・批評
2014年5月13日更新
2014年5月24日よりロードショー
オスカー俳優4人のキャリアで遊ぶ、おやじ版「ハングオーバー!」
これまでも共演のチャンスがありながら、一度も実現しなかったというオスカー俳優4人の初コラボ映画は、各々のキャリアを考慮に入れたおやじ版「ハングオーバー!」。本来は年頃の新郎が仲間を誘って最後に羽目を外すクルージングスポット、LAS VEGASのSとVの間にTを入れただけで、発音はあまり違わないのに俄然漂う哀愁はどうだろう!?
役柄と演じる俳優の微妙なリンクは以下の通り。女にモテ続けた末に、娘みたいな恋人との結婚を決意するパーティの主役、ビリーには、私生活も似たり寄ったりのマイケル・ダグラス。息子夫婦の過剰な介護に耐え続ける辛抱の人、アーチーには、モノローグの達人モーガン・フリーマン。愛妻との楽隠居生活に退屈しているサムには、ハリウッドの喧噪からは距離を置くケビン・クライン。唯一、ロバート・デ・ニーロだけは妻を亡くした悲しみを引き摺るパディ役が一見不向きに思えるが、これも最近は何でもござれのデ・ニーロにはむしろハマリ役だ。
カジノでぼろ儲けしたアーチーにホテルのスタッフがどこからともなく近寄り、最高級ビラに宿泊させて出費を促すカジノホテルならではの収支決算システムを紹介しつつ、話は徐々にビリーVSパディの宿命的な関係を詳らかにして行く。それを要約すると、モテるビリーと純粋すぎるパディの女を巡る誤解と氷解の歴史。付き合ってきた時間が長い分、ベガスで晴らしたい憂さにも苔が生して面倒臭いけれど、それを友情が削り取るという凡庸だが好ましいオチが最後には用意されている。
4人で獲ったオスカーは計6個。もし、ビリー役に予定されていたジャック・ニコルソンか参加していたら1個増えて7個になる。そればかりか、遊び人の表層を掻い撫でるダグラスよりニコルソンの方が内面の孤独を浮き立たせ、変幻自在型コメディリリーフのデ・ニーロと危険な化学反応を起こしていたはず。引退が噂されるニコルソンの含み笑いが、なぜか映像の背後に見え隠れした。
(清藤秀人)