ダーク・ブラッド : 特集
没後20年を経て、さらに輝きを増すリバー・フェニックス奇跡の作品が完成!
“リバー・ファン”、そして“新映画ファン”に今捧げられる《魂の遺作》──
23歳で夭逝(ようせい)した伝説的スター、リバー・フェニックスの“幻の遺作”「ダーク・ブラッド」が完成し、4月26日に日本で、世界で最も早い劇場公開を迎える。没後20年を経て、なぜ未完だったフィルムが我々の前に姿を現したのか。二度と見られないと思っていたフェニックスの再来は、ファンならずとも見逃せない。
■リバー・フェニックスに一度でも憧れたなら、
“幻の遺作がついに完成”だけで見るに値する
1993年10月31日、薬物の過剰摂取により23歳の若さでこの世を去ってから約20年。その美しくカリスマ性に満ちた容姿と類いまれなる才能で、今なお映画ファンを魅了し続けているリバー・フェニックス。“ジェームズ・ディーンの再来”と呼ばれ、「スタンド・バイ・ミー」「マイ・プライベート・アイダホ」の名作のほか、若き日のインディを演じた「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」などで鮮烈な魅力を放った彼の姿を、我々はもう二度と目にすることはできないと思っていた。
だが、まさかの朗報が飛び込んできた。クランクアップ目前でのフェニックスの死によって、未完のまま眠っていた「ダーク・ブラッド」が完成したというのだ。
同作は、オランダの名匠ジョルジュ・シュルイツァー監督が手掛け、それまでのフェニックスのイメージを破るダークなキャラクターと深遠なテーマが注目を集めていたが、いくつかの重要なシーンの撮影が残されており、主演俳優不在では完成させることができないと、撮影済みフィルムは保険会社の管理下に置かれてしまっていた。しかし、07年、75歳で大病を患い、余命宣告を受けたシュルイツァー監督が一念発起。自身のキャリア最後の作品として「ダーク・ブラッド」を完成させることを決意し、資金集め、権利問題のクリア、未撮影シーンの再現など、数々の困難を乗り越えることに成功したのだ。
貧しかった家庭を自らの路上パフォーマンスで支え、成功してもどこか寂しげでナイーブな瞳を持っていたフェニックス。映画の中での役柄はもちろん、ハリウッドの商業主義を嫌悪していた彼のストイックなライフタイル自体にも、憧れを持った人は多いだろう。その彼の孤高のカリスマ性がそのまま焼き付けられた“幻の遺作”が、ついにスクリーンによみがえる。それは、“奇跡的な事件”にほかならないのだ。
■没20年の今だからこそ意味を成す、本作のメッセージ──
そして日本のファンに贈られた“天国からのプレゼント”
=もうひとつの遺作「アメリカンレガシー」
アメリカ南西部の砂漠地帯。かつて白人によって奪われ、核実験が繰り返されたこの世の果てのような場所──本作でフェニックスが演じるのは、妻を亡くして以来、その無人の荒野で世界の終えんを待ち続けて孤独に暮らす青年、ボーイだ。ネイティブ・アメリカンの血を引いた彼のもとに、車が立ち往生していたハリー(ジョナサン・プライス)とバフィー(ジュディ・デイビス)のハリウッドの映画人夫婦がたどり着く。ボーイは美しいバフィーにひかれ、理想の愛を追求するあまりに、狂気と正気のはざまへと堕ちていく。そして、3人の関係は次第に緊張感を増していくが……。
93年に撮影された本作だが、荒廃した砂漠が舞台であることから、まったく時代を感じさせないことが驚きだ。そして、核実験場という設定は、“現代”に見るからこそ、改めて大きな意味を成す。タイトルになっている「ダーク・ブラッド」とは、まさに“汚れた血”。その意味は劇中で明かされるが、核、そして放射線というものが身近になってしまった現代だからこそ、強いメッセージを見る者に突きつける。
そして、20年という歳月は、かつてフェニックスに憧れた少年少女を大人にする。成功と挫折、恋と冒険を経て、おそらくはスクリーンで輝き続ける彼よりも年上になってしまった観客は、改めて躍動するフェニックスの姿に、その瞳に、いったい何を読み取るのか。本作を鑑賞することによって、観客が自らを再発見するのも、また確かなのだ。
フェニックスからの大きな贈りものといえば、映画祭のみの公開でビデオ発売となっていた「アメリカンレガシー」が、「『ダーク・ブラッド』公開記念」として、5月3日より日本初劇場公開されることも決定した。撮影は「ダーク・ブラッド」の1年前の92年。「ダーク・ブラッド」を未完の遺作とすると、「アメリカンレガシー」は完結した“もうひとつの遺作”といえる存在だ。
そして、親友キアヌ・リーブスとの共演作「マイ・プライベート・アイダホ」のリバイバル上映(5月17日より)も決定。遺作を中心とした豪華3本の同時期公開──かつてフェニックスも2度の来日を果たし、熱烈なファンが多い日本だからこそ実現したファン待望の企画だ。
■キアヌ、ジョニデ、ディカプリオ──DNAを受け継ぐ者にひかれるなら
リバー・フェニックスの到達点=「ダーク・ブラッド」を推奨したい
リバー・フェニックスという存在がどれほど大きかったのかは、彼と親交の厚かった同年代の俳優たちの現在の活躍を見れば明らかだ。キアヌ・リーブス、ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ──フェニックスの影響を強く受け、いわば“フェニックスのDNA”を受け継いだ者たちの軌跡を見てみよう。
「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」で共演して親友となったキアヌ・リーブス、比較されることも多かったほか、フェニックスが入り浸っていたクラブの経営にも関わっていたジョニー・デップ、そして、フェニックス主演で予定されていたいくつかの作品を引き継ぐことになったレオナルド・ディカプリオ。そんな彼らにひかれる映画ファンなら、そのオリジナルともいうべきリバー・フェニックスの到達点=「ダーク・ブラッド」は見逃せないはずだ。