劇場公開日 2015年7月18日

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「「思い出」の扱いが素晴らしい」インサイド・ヘッド えのきちさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「思い出」の扱いが素晴らしい

2015年7月19日
iPhoneアプリから投稿

『インサイド・ヘッド』を鑑賞。
ピクサー・アニメーションスタジオの最新作。

ミネソタで育った少女ライリーは父親の仕事の都合でサンフランシスコに引っ越す事に。友達との別れや環境の変化に対する不安など、頭の中では「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ヒビリ」の5つの感情が奮闘していた。

設定を聞くと、先日公開されたばかりの「脳内ポイズンベリー」を思い浮かべる方も多いだろう。ストーリーは全く異なるものの、肝心の設定というか根本的なアイデアが酷似しているのだ。偶然なのだろうがピクサーからしても大きな痛手である。

しかし物語は別物なので私は気にしない。

やはりライリーの脳内を描く手法が良くできている。
感情の変化はもちろんだが、記憶の表現が素晴らしい。蓄積されていく思い出、その中でも性格を形成に直結する大切な思い出、そして忘れられていく思い出。ビジュアルを通して描かれる映像は実に論理的。終始「なるほど」と納得しながら鑑賞する事になるだろう。

少女の成長と共に、それぞれの感情の活躍度に差が出てくるあたりも実にリアルである。

ただ、気になる点は2点。

1点目は一見ファンタジー要素が強いが内容は実に現実的なので、子供向けとはいい難い事。
そしてもう1点は今までのピクサー作品らしさがほとんど感じられない事。

題材やテーマ、表現方法は抜群に良いのだが、登場するキャラクターやテンポ、ストーリー展開などといったピクサー作品が得意とする最大の強みがあまり感じられなかった。そういう意味ではいつものピクサー作品を期待すると満足度が低いかも知れない。
しかし「頭の中」の構造に興味深く、感心しながら観る事ができれば一転かなり満足度が高い作品となる。
要は好き嫌いがハッキリする作品なのだ。

そして鑑賞後には自分の行動と頭の中身を想像してみるのもちょっと楽しい。もっとも私の場合は「ヨロコビ」の活躍が不足しているので、きっと迷子にでもなっているのだろうが。

えのきち