「泣けた。」太秦ライムライト U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
泣けた。
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おそらく、俺にその経験があるからだろう。
感動とは違う。切なかったり悔しかったり、応援してみたり色んな涙を流した。
日本一の斬られ役って事は、世界一って事だろ?
俺の先輩が福本さんを表した言葉だ。
事実、ラストサムライでの福本清三は世界一であった。
其れ程までに、この職種は狭い世界なのである。
日本の芸能界の時代劇という限定された世界で育まれてきた。
いや…更には、京都・太秦で。
時代殺陣を哲学し、美術は勿論、カメラや照明まで使って斬られ方を表現する職人がいる。
このスペシャリスト達がいたからこそ、世界はサムライを受け入れたといっても過言ではない。
彼らの背中には目があるのだ。
主役に相対しカメラを背負う時、絵の構図を最後に決めるのは斬られ役の人間だ。
主役もカメラも手出し出来ない。
2センチズレたら撮り直しだ。
そんな状況の中、そんな条件下の中、彼らは毎日のようにカットを成立させていく。
勿論、カメラの位置なんか確認しない。
振り向いたら即座にNGだ。
そんなとてつもない職人技を毎回求められ、いとも容易く量産していく。
観客は主役しかみない。
監督もプロデューサーも。
喝采を受けるのは、いつも真ん中の人間だ。
だがしかし、周りで斬られる人間がいなければ、その絵に臨場感と緊張感を与える斬られ役がいなければ、その喝采が生まれるはずもない。
その事を忘れてはいけない。
その斬られ役としての色んな葛藤や充実感が一杯詰まった映画だった。
「旦那…怖じ気づいたんでっか?」
普段の撮影でこんな台詞など聞くはずもない。
だが…胸がスッとした。
僕らはいつでも、その殺意をもって刀を握りしめていたのだから。
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