ドラッグ・ウォー 毒戦 : 映画評論・批評
2013年12月24日更新
2014年1月11日より新宿シネマカリテほかにてロードショー
中国本土でも容赦なく炸裂したジョニー・トーの破壊的アクション
建物から爆発の煙……、それを背景にすでに表情がイってしまっているテンミン(ルイス・クー)運転の車がジグザグ走行を続け、ビルのショップ内にそのまま突っ込む。店の内部はメチャクチャだ。初めての中国本土での撮影、さまざまな規制が存在したであろうというこちらの危惧をこのオープニング・ショットが象徴的に破壊する。ユーモアと泣かせをアクション自体に組み込むトー節はこれまでと変わらず、いやそれ以上に「ドラッグ・ワォー 毒戦」で炸裂するといっていい。少なくとも死体の数、飛ぶ銃弾の量はこれまでの最多に近く、さらに出演者に対して、ことごとくに容赦がない、どこに規制が? 申請のときはこれの10倍ぐらいの死体の山をふっかけたにちがいない。さすが、本土相手のトー的交渉力。
道路の料金所で麻薬捜査の網を張るのが、女性のベイ刑事(クリスタル・ホアン)、怪しいトラックがくる、追うように赤い車がすぎて、次に囮捜査で罠にかけた運び屋集団が乗ったバスがやってくる。このバスには警部(スン・ホンレイ)が同乗……、こうして、メイン・キャラクターを冒頭、車に絡ませて一気に紹介する手際がみごと。50グラム以上の覚醒剤製造者は即死刑というのが中国の刑法347条、これに怯えて、テンミンは自己保身に走り、ドラマを凄絶な闘争の場に引っ張り込むことになる。ラム・ガートン、ラム・シューといった連中が黒幕=香港7人衆として、ラストの銃撃戦を飾るために参集するが、これがトー組の絆か。
「名探偵ゴッド・アイ」に続いて本作の公開と、以前よりも公開までの期間が短縮された。喜ばしい。
(滝本誠)