「.」プリズナーズ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。木乃伊取りが木乃伊と云えばそれ迄だが、タイトルが誰を指すのかと考えると感慨深く、二人の行方不明事件を発端に斯くも沢山の失踪・監禁が発生するのかと三思してしまう。序盤のゆったりしたペースとは裏腹に、真相に迫る後半以降が駆け足気味でややちぐはぐな印象を持ったが、然程多くない登場人物乍ら、ツイストも利いている。演者達も上手な人が集められており、演技も申し分無い。事件のきっかけになる笛がラストにも繋がり、活かされているのが小気味良く、153分と云う長めの尺も気にならず、後味もすっきりサッパり。70/100点。
・曇り空が多く登場するが、真冬の感謝祭と云う季節に片田舎の地方都市と云う舞台設定が、D.フィンチャーの鬱然とした空気感とは違ったドライな心象風景を映している。会話が成立し辛いミステリーとしては禁じ手で卑怯にさえ思える容疑者達とぶっきらぼうな田舎町の住人達と云う登場人物達の巧妙な設定も心憎い。
・脚本のA.グジコウスキーによると、オリジナル版は三時間を越えていたと云う。劇中、登場する新聞記事の一つはこの脚本家の署名が見てとれる。
・本作で謎を追い掛け解決する捜査官は“ロキ”だが、スクリミルと云う名の巨人の子を守ろうとするが、オーディンとヘーニル同様、諦め断念してしまうロキと云う神が、ノルウェー神話『ロキ・タトゥール』に登場する。
・M.レオが演じた“ホリー・ジョーンズ”と云う名は、カナダのトロントで'03年に発生した誘拐後、殺害された10歳の少女の名と同じである。
・本作は'09年から製作が続けられていたが、当初はB.シンガーがメガホンを取り、“ケラー・ドーヴァー”にM.ウォールバーグ、“ロキ”にC.ベイルを据えて製作が進行していたが、M.ウォールバーグが(共同)製作総指揮に留まるのみで降板した。C.ベイルとM.ウォールバーグは降板後、『ザ・ファイター('10)』にて共演した。その後、“ロキ”役は監督の推薦でオーディション無しでJ.ギレンホールに決まったが、R.ゴスリングもこの役の候補に挙がっていた。尚、L.ディカプリオも本作に長らく関係していたが、降板した。
・H.ジャックマンは『ラブリーボーン('09)』の“ジャック・サーモン”役に決まっていたが、降板し本作に参加した。その後、“ジャック・サーモン”役を継いだのはM.ウォールバーグで、丁度この二人が役を交換した形となった。
・終盤、M.レオの“ホリー・ジョーンズ”がH.ジャックマンの“ケラー・ドーヴァー”にもう少し呑みなさいと迫るが、このシーンは呑む量が少ないと判断したM.レオのアドリブで、H.ジャックマンがこれに応じた。
・鑑賞日:2017年6月3日(土)