インシディアス 第2章 : 映画評論・批評
2014年1月7日更新
2014年1月10日よりシネマサンシャイン池袋ほかにてロードショー
シュールなパラレル構造を深化させた怪奇迷宮ワールド
ヒットしたホラー映画の続編が作られるのは世の常だ。恐ろしい厄災に見舞われた主人公が生き残ろうとそうでなかろうと、パート2ではいったんストーリーがリセットされ、前作を未見でもお手軽に楽しめる。このジャンルのシリーズものの大半がそうだ。
ところが「インシディアス 第2章」は例外的なケースだ。前作のラストの直後から始まり、ほっと息をつく間もなくランバート家の人々に新たな怪異が忍び寄る。死者や悪魔が棲む“あの世”から帰還した主人公ジョシュは、「シャイニング」のジャック・ニコルソンさながらに狂気を露わにして妻子を襲撃。一方、彼の母親ロレインは、今は亡き霊媒師エリーズの助手たちの協力を得て災いの原因の究明に挑む。このふたつのストーリーラインが同時進行し、なおかつ暗黒の異次元世界と現実を行き来しながら展開していく。前作を観ていないと何が何だかわからないめまぐるしさだ。
そんな筋立てのややこしさと乱闘シーンなどのアクションの慌ただしさが心霊映画の興趣を殺いでいる感は否めず、同じジェームズ・ワンが監督した第1作や「死霊館」ほど濃密な恐怖には浸れない。しかしあの世とこの世のシュールなパラレル構造を深化させ、時間という概念を絡めた作り手のチャレンジ精神には驚かされる。要するに、異次元の扉を過去への入り口に見立てたタイムトラベル・ミステリーになっているのだ。
そもそも筆者には、前作に関してひとつ疑問があった。ジョシュに取り憑いた白塗り顔の老婆の悪霊を、なぜか女優ではなくフィリップ・フリードマンという男優が演じていたのだ。本作にはそのミステリーの答えも用意されている。前作を作った時点で、すでに第2章を構想していたとしか思えない奇怪な真実が!
(高橋諭治)